富田愛子 Dr Aiko Tiarni Tomita
B.Med, B.Appl.Sc., FRACGP, PhD (Medicine)
General Practitioner, Healthcare on Collins (Melbourne)
Visiting Associate Professor, Tokai University School of Medicine
www.doctoraiko.com.au


男性の心の健康を守ること

メルボルンで総合診療医・GPをしている富田愛子です。

前回は女性の健康とホルモンバランスについてお話ししました。今回は、なかなか忘れられがちのメンズヘルス、「男性の心の健康を守ること」について考えてみたいと思います。


「最近、自分らしくない」かも。そう感じたら、それは心と体からのサインかもしれません

• 「以前のように集中できない。」
• 「仕事への意欲が湧かない。」
• 「休日も疲れが抜けず、何をしても楽しめない。」

海外で働く男性、とくに駐在員や管理職の方々は、大きな責任を担う一方で、自分自身の健康は後回しになりがちです。
異文化での仕事、日本本社との時差を伴う会議、慣れない生活環境、家族への気遣いなど、海外生活には日本では経験しないストレスが積み重なります。
そのような状況が続くと、知らないうちに心と体のバランスが崩れてしまうことがあります。

それは「疲れ」ではなく、バーンアウトかもしれません
「あと、もう少し頑張れば大丈夫。」
そう思って走り続けているうちに、仕事への意欲や達成感を失い、慢性的な疲労感や集中力の低下を感じるようになることがあります。
これが、近年よく耳にする「バーンアウト(燃え尽き症候群)」です。

最初は疲労感だけでも、
• ミスが増える
• 判断力が落ちる
• 人との関わりを避けたくなる
• イライラしやすくなる
• 家族との会話が減る
など、仕事だけでなく家庭生活にも影響が及ぶことがあります。

40~50代では「男性更年期」が隠れていることも
同じような症状が、40~50代では男性ホルモン(テストステロン)の低下によって起こることもあります。

男性更年期(LOH症候群)では、
• 疲れやすい
• やる気が出ない
• 気分が落ち込む
• イライラする
• 集中力が続かない
• 睡眠の質が悪い
• 性欲や性機能の低下

など、うつ病やバーンアウトとよく似た症状がみられることがあります。
もちろん、これらの症状がすべて男性更年期というわけではありません。
睡眠障害、甲状腺疾患、貧血、糖尿病、薬の影響など、他の病気が隠れていることもあります。
だからこそ、「年齢のせい」「気合いが足りない」で片づけず、一度医療機関で相談することが大切です。

心の健康は、体の健康と切り離せません
診療をしていると、「特に悩み事、心配事はありません」と話される方がほとんどです。しかし、詳しくお話を伺うと、仕事のプレッシャーや家族への責任、将来への不安を一人で抱え込んでいることが少なくありません。
心のストレスは、睡眠、血圧、免疫機能、食欲、さらには慢性疾患のコントロールにも影響を及ぼします。
逆に、体調が整うことで気持ちが前向きになることもあります。
心と体は別々ではなく、お互いに影響し合っているのです。

「相談すること」は、自分だけでなく家族を守ること
男性は、「自分で何とかしなければ」と考え、一人で抱え込む傾向があります。
しかし、心身の不調を放置すると、仕事のパフォーマンスだけでなく、家族との時間や人間関係にも影響が及ぶことがあります。

「最近、自分らしくない。」

そんな小さな変化に気づいたら、信頼できる家族や友人に話してみること、そして必要であればGPなどの医療機関に相談することも大切な選択肢です。
自分の健康を守ることは、家族を守ることにもつながります。
働き続けるためにも、人生を楽しむためにも、心と体の両方に目を向ける習慣を大切にしていただきたいと思います。

健康とは、病気がないことだけではありません。
仕事も家庭も大切だからこそ、自分自身の心と体を労わる時間を持つことが、結果として周囲の人を守ることにもつながります。ぜひ、頑張りすぎないように頑張ってください。


【次回予告】
次回は、まり子先生が親のストレス、子どものストレスについてご執筆くださいます。ぜひお楽しみに!

↓本記事が参考になりましたら、ぜひ👍をお願いいたします。↓

Share This