富田愛子 Dr Aiko Tiarni Tomita
B.Med, B.Appl.Sc., FRACGP, PhD (Medicine)
General Practitioner, Healthcare on Collins (Melbourne)
Visiting Associate Professor, Tokai University School of Medicine
www.doctoraiko.com.au
心が疲れたとき、身体が先に教えてくれるサイン
― 胃痛・肩こり・動悸…それは心身からのメッセージ ―

こんにちは。メルボルンでGPをしている富田愛子です。
これまでのコラムでは、海外生活におけるストレスや孤独感、そして生活習慣を整えることの大切さについてお伝えしてきました。
今月は、「心の疲れが、身体にどのように現れるか」 をテーマにお話ししたいと思います。
身体の不調は、心と無関係ではありません
外来で患者さんとお話ししていると、
• 胃が痛い
• 頭痛や肩こりが続いている
• 胸が痛い感じがする、動悸がする
• 眠りが浅い
• 朝起きたときに疲れが取れていない
といった症状を訴える方が少なくありません。
検査をしても大きな異常は見つからない。
それでも、不調は確かに存在している。
こうしたとき、身体と心を切り離して考えるのではなく、
「最近、何かがオーバーキャパシティになっていないか?負担が重なっていないか」 という視点が大切になります。
心身は、いつも双方向でつながっている
ストレスを感じると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
交感神経が優位な状態が続くと、
• 胃腸の動きが乱れる
• 筋肉が緊張しやすくなる
• 呼吸が浅くなる
• 心拍数が上がる
といった変化が起こります。
つまり、心の緊張が、身体の症状として現れることは自然な反応なのです。
海外生活では、言語や文化の違い、人間関係の調整など、目に見えない緊張が続きやすい環境にあります。
自分では「大丈夫」と思っていても、身体が先にサインを出していることがあります。
よくある“心身サイン”の例
1.胃痛や腹部不快感
強い不安や緊張は、胃腸に影響を与えます。
食欲不振や下痢・便秘の変化も、ストレスと関連することがあります。
2.肩こり・頭痛
無意識の緊張が続くと、首や肩の筋肉がこわばります。
「力が抜けない状態」が慢性化しているサインかもしれません。
3.動悸・息苦しさ
急に心拍が速くなる、息が浅くなる。
パニック症状だけでなく、慢性的な緊張でも起こり得ます。
4.眠りの質の低下
寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める。
これは身体からの「休息が足りていない」というメッセージです。
まずは「症状を否定しない」
「気のせいだろう」
「これくらいで受診するのは大げさかも」
そう思って我慢してしまう方も多いのですが、症状が出ているということは、身体が確かに反応しているということです。
まずは、
• 最近の生活リズム
• 睡眠や食事の乱れ
• 気になっている出来事
を振り返ってみてください。
身体の不調は、無理を重ねていることを教えてくれるサイン かもしれません。
とはいえ、まずは、しっかり医学的評価をすることが必要です。そのため、特に下記のような症状がある場合は、我慢せずに早めな診察をお勧めします。
• 強い胸痛
• 繰り返す嘔吐や激しい腹痛
• 意識が遠のくような症状
• 2週間以上続く明らかな機能低下
心身相関を考えることと、体の病気(器質的疾患)を見逃さないことは、どちらも大切です。
おわりに
心と身体は、常に影響し合っています。
「気持ちの問題」と切り捨てるのではなく、
「身体が教えてくれているのかもしれない」と立ち止まること。
それが早期の回復につながります。
新しい環境の中で頑張っている皆さまが、
自分の身体の声にもやさしく耳を傾けられますように。
【次回予告】
次号は、首藤まり子先生が「不安や焦りが止まらないとき」をテーマにお届けします。
どうぞお楽しみに。