情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

オーストラリア:VISA申請の前にすること-役員IDの申請

概要
オーストラリアでは、2021年度から役員ID(Director Identification Number:DIN)を登録する義務が発生しました。役員IDが登録されていないかぎり、豪州企業の役員に指名されることはできません。外国企業として登記する場合は、本社の役員全員が役員IDを取得する必要があります。すなわち、VISAの申請をする前に役員IDの登録が必須となりました。

取締役識別番号
DIN(取締役識別番号:以下、「役員ID」)は、取締役の身元を確認するために使用される固有の15桁の識別子であり、取締役個人に恒久的に割り当てられるものです。役員IDは、違法な活動を撲滅するための広範な取り組みの一環として導入され、規制当局、管財人、清算人が取締役の会社履歴をより容易に追跡し、架空の身元の使用を防止することを可能にします。
この制度は、オーストラリア税務局(Australian Taxation Office:ATO)が監督するオーストラリア企業登録サービス(Australian Business Registry Services:ABRS)によって管理されています。役員IDは現在、一般には検索できません。
会社、登録されたオーストラリアの団体、および登録された外国会社のすべての取締役は、役員IDが必要です。いつ取締役になったかによって、いつ役員IDを申請しなければならないかが決まります。以下の日付は重要です。
・2022年10月31日以前に任命された取締役は、2023年11月30日までに申請する必要があります。
・2022年11月1日以降、新たに取締役になろうとする人は、任命される前に申請しなければなりません。
12カ月以内に取締役になる予定の人は、今すぐ役員IDを申請することができます。

役員IDに関する罰則
2001年会社法(Corporations Act 2001)では、新たに4つの役員ID違反が設けられました。
<個人に対する罰則>
・役員IDの申請義務違反:最高16,500ドルの刑事罰、最高1,375,000ドルの民事罰
・登録官の指示を受けたにも関わらず、役員IDの申請を怠った場合:最高16,500ドルの刑事罰、最高1,375,000ドルの民事罰
・複数の役員IDの申請:最高33,000ドルまたは禁固1年、またはその両方の刑事罰、最高1,375,000ドルの民事罰
・役員IDの詐称:最高33,000ドルまたは禁固1年、またはその両方の刑事罰、最高1,375,000ドルの民事罰

オーストラリア国内からの役員ID申請
オーストラリア法人の取締役は、各自で役員IDを申請する必要があります。これを行う最速の方法は、ABRSオンライン(https://www.abrs.gov.au/director-identification-number)にログインできるmyGovIDアプリを使用し、オンライン申請フォームに記入することです。
<myGovIDの設定>
myGovIDを設定するには、身元を確認できる以下のオーストラリア本人証明書のうち、少なくとも2つが必要です。
・オーストラリアの運転免許証または仮運転許可証(learner’s permit)
・パスポート
・オーストラリアの出生証明書
・オーストラリア国籍証明書(Australian citizenship certificate)
・メディケアカード(Medicare card)
・VISA(外国のパスポートを使用)
・イミカード(ImmiCard)
上記の本人証明書のうち少なくとも2つを持っていれば、myGovIDの設定方法からmyGovIDアプリがダウンロードできます。持っていない場合は、「myGovIDを取得できない場合の申請方法」に進みます。
<myGovIDを取得できない場合の申請方法>
StandardまたはStrongのID強度でmyGovIDを設定できない場合、またはオンライン申請に必要なオーストラリアのID書類を持っていない場合、申請方法は現在居住している場所によって異なります。
詳細は、Australian Business Registry Services (ABRS)>Apply for your director ID(https://www.abrs.gov.au/director-identification-number/apply-director-identification-number)を参照してください。

オーストラリア国外からの役員IDの申請・登録
現在、取締役がオーストラリア国外に居住している場合は、紙の申請用紙(Application for a director identification number(NAT 75329))を使用して申請することができます。申請用紙への記入に加え、一次および二次本人証明書1通、または一次本人証明書2通の認証済みコピーを提出する必要があります(原本は、返却されないので、送付しないでください)。
<一次本人証明書類>
・外国の出生証明書
・外国のパスポート
・オーストラリアの出生証明書
・オーストラリアのパスポート
<二次本人証明書類>
・オーストラリアの写真付き本人証明書
・外国政府の本人証明書
・運転免許証
・結婚証明書
オーストラリア国外での本人証明書の認証は、公証人または最寄りのオーストラリア大使館、高等弁務官事務所、領事館(オーストラリア貿易促進庁の名誉領事が率いる領事館を含む)の職員が権限を持っています。さらに、取締役が「外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)」締約国にいる場合は、その国の管轄当局がアポスティーユを使用して証明することができます。
英語以外の本人証明書は、公認翻訳サービスによって英語に翻訳され、真正かつ正確な写しであることを認証されなければなりません。公認翻訳サービスの詳細は、外国の管轄区域にあるオーストラリア大使館、高等弁務官事務所または領事館が提供しています。
オーストラリア国外からは、紙の申請書に記入して役員IDを申請することしかできません。
<紙による申請の手順>
ステップ1:一次本人証明書1通と二次本人証明書1通、または一次本人証明書2通と、翻訳書類の認証済みコピーを含む添付資料を集める。
ステップ2:申請用紙に必要事項を記入する。
ステップ3:申請書および添付書類を印刷し、ABRSに提出する。

注意事項:
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
Liability limited by a scheme approved under Professional Standards Legislation

Share This