情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)


国際商事仲裁解説 Q&A形式

9話

裁定とは何か? 
A 裁定は判決と異なり詳しい法の説明が省かれます。又、仲裁廷は裁判所と異なり必ずしも法曹の者が裁定するとは限りません。
Q 法律を知らない者が判決を下す事が出来るのでしょうか?
A 建設関連の仲裁にはエンジニア出身の方が仲裁人になる事が多いですが、法曹では無いにしろ、彼らも基本的な国際法や商法の教育は受けております。例えば、小職の場合法曹の資格以外に定期運送用操縦士と言う、旅客機の機長の資格を所持しております。(https://president.jp/articles/-/40289参照)
Q つまり、仲裁とは一般の裁判所とは異なり専門裁判所と言う事ですね?

国際商事仲裁の流れ
Q 仲裁合意を結んでいる場合、裁判では無く紛争解決は国際仲裁でする事は理解致しました。仲裁の流れを教えて頂ければ幸いです。
A 仲裁機関等を通して仲裁人が選定されます。仲裁人は最初に予備会議の招集を行います。予備会議の中で今後の予定や審議の規約を話し合って決めます。両当事者は予備会議での決定に基づき、各種書類の提出や証拠の提出を行います。次に、事前聴聞会が開催されます。事前聴聞会で証言者や鑑定人の選定がなされます。その後聴聞会が開催されます。聴聞会後に通常裁定がなされます。但し、事前聴聞会と聴聞会の間に当事者同士で和解する場合も多くあります。
Q どうして事前聴聞会と聴聞会の間に当事者同士で和解される事が多いのでしょうか?
A. この時点まで到達致しますと、双方共に各自の弁護士等を通してお互いの利点や弱点を理解しているからです。

立証責任
Q 立証責任は誰に有るのでしょうか?
A 裁判と同様、請求をする者(権利を主張する側)にあります。通常申し立人側にあります。反訴は答弁人側にあります。
Q 事実の認定はどの様になるのでしょうか?
A 民事裁判同様、証明責任は50%以上あり得る事(Balance Of Probability)を証明する必要があります。
Q 書類や証拠の扱いは国際仲裁ではどうするのでしょうか?
A 事実を証明する証拠能力が問われます。つまり、書類又証言が証明しようとしている事実に関連しているのか否かが問われます。その次に書類や証言の信憑性が問われます。
Q つまり、立証する為には、証拠能力及びBalance Of Probabilityをクリアーしなければならないのですね? 

信憑性
Q 証拠能力の中での信憑性ですが、どの様な証言は信憑性が無いと仲裁廷は見做すのでしょうか?
A Hearsay (噂や又聞き)は仲裁廷では証言として取り扱われない場合が多くあります。英国では以前Hearsayは裁判や仲裁では証拠能力無しと看做されました。しかし、最近の法改正により一部Hearsayが認められる様になりました。
Q 仲裁廷で立証出来る事が許された場合、相手側の反対尋問が待ち受けているののでしょうか?
A 相手側の弁護士団が必ずしも反対諮問するとは限りません。事実を認めるのであれば反対諮問は有りません。但し、仲裁人が質問を投げかける場合があります。

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