富田愛子 Dr Aiko Tiarni Tomita
B.Med, B.Appl.Sc., FRACGP, PhD (Medicine)
General Practitioner, Healthcare on Collins (Melbourne)
Visiting Associate Professor, Tokai University School of Medicine
www.doctoraiko.com.au
見えないストレスが身体に出るとき
〜オーストラリア生活で気をつけたいサイン〜

こんにちは。メルボルンで総合診療(GP)を行っている富田愛子です。実は、もう10年以上前になりますが、私の総合診療医としてのトレーニングはシドニーで始まりました。当時は病院勤務医として働きながら、邦人向けのクリニックでも診療に携わっていました。その中で、オーストラリアに来られた日本の方々が、日本とは異なる医療システムや生活環境の中で、健康を維持することの難しさに戸惑われる姿を多く目にし、強く印象に残っています。
海外での生活を続けていると、「気づかないうちにストレスがたまっていた」という方が少なくありません。
日本の生活リズムとは異なる環境、言語、気候、そして人間関係の変化は、想像以上に心と身体に負担をかけています。
私のクリニックにも、「最近よく眠れない」「動悸がする」「肩がずっと張っている」「検査では異常がないけれど体がだるい」といった訴えで来院される方が多くいます。こうした症状の多くは、自律神経のバランスが乱れているサインです。
自律神経は、心拍、血圧、消化、ホルモンなどを自動で調整している“身体の司令塔”のような存在です。ストレスが続くと交感神経(緊張モード)が優位になり、身体がずっと戦闘態勢のままになってしまいます。その結果、眠れない、息苦しい、胃の調子が悪い、涙もろくなる…といった形でSOSが出てくるのです。
まず大切なのは、「気のせい」と片づけないこと。オーストラリアでは、心身の不調を感じたときにGP(かかりつけ医)に相談するのが一般的です。必要に応じて検査やカウンセラーへの紹介も受けられます。少しの違和感を放っておかないことが、自分と家族を守る第一歩です。時間的な目安は2週間。異変が2週間以上続くときは要注意です。
海外生活では、周囲に頼れる家族や友人が限られることもあります。だからこそ、「疲れた」と感じた時点で、休む・話す・相談する勇気を持つことが大切です。
次回はカウンセラーの首藤まり子先生(Mariko’s Wellness)が、「心のセルフケアと日常でできるリセット方法」についてお話しされます。ぜひお楽しみに。