鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


 

胆嚢の中にできる石で、無症状の場合からひどい腹痛をおこし、急性胆嚢炎、胆管炎、
それに急性膵炎までおこすこともあります。最近では腹腔鏡による摘出術が発達し、以前の開腹手術に比べ、体への負担が軽く治療ができるようになっています。
胆石の種類
*コレステロール石:西洋社会では80%がこのタイプの石です。
*色素石:胆汁色素が多く含まれる石
*混合石:上記の二種類が混ざっている石

男性対女性比は1:2で、女性のほうに多く発生します。石の大きさは砂利のように小さなものから直径2-3cmのものまで様々です。

 

 

胆石ができる危険因子
*女性:これは、女性ホルモンと関連していると思われ、妊娠歴の多い人(妊娠中は女性ホルモンの
レベルが上昇)、避妊ピルや更年期のホルモン療法を受けている人は特に胆石ができやすいようです。
*家族歴:近親者で胆石の人が比較的多い場合もあります。まだ胆石のリスクを高める遺伝子は確認されていません。
*肥満:太り気味の人には胆石ができやすいようです。胆汁の中のコレステロール濃度が高くなるようです。
*食事:脂肪分やコレステロールの多い食べ物を多く摂る人には胆石がおこりやすくなります。
*急激な体重の減少:胆汁の中のコレステロール濃度が高まり、胆石ができやすくなります。
*年齢:60歳以上の人は若い人と比べ、胆石がおこりやすくなります。
*糖尿病:糖尿病の患者さんは血中の中性脂肪が高めで、このため胆石ができやすくなると考えられています。
*民族背景:南アメリカの原住民は胆石の発生率が高いようですが、遺伝子的要因はまだはっきりとしていません。

症状
健康診断などで超音波の検査をしてたまたま発見されることもあり、無症状であることもあります。
*胆石疝痛(Biliary colic):何も合併症がおこっていないときの胆石からくる痛みです。本当は疝痛様の波がある痛みではなく、絶え間ない、一定の痛みです。右から中央上腹部にかけておこり、夜間の朝早い時間帯におこりがちです。これは、前夜の食事を消化するために胆嚢の働きが活発になっているからだと思われています。特に脂肪分の多い子羊や豚肉を食べた後におこることが多いようです。
吐き気、嘔吐を伴うこともあります。痛みは数時間続くこともあります。非典型的な場合は、痛みがほとんどなく、食欲不振、吐き気、膨満感、あるいは嘔吐だけのこともあります。
*急性胆嚢炎(Acute cholecystitis):石はまだ胆嚢の中ですが、胆嚢壁におそらく傷がおこり、そこから感染症が発生するのではと考えられています。この合併症は大きめの石の方がおこりやすく、上腹部の痛みとともに発熱し、血液検査では白血球の上昇が見られます。痛みは胆石疝痛のときよりも長く続きます。

*胆管炎(Cholangitis):胆石が総胆管に入ってしまい、胆汁の流れを止めてしまうと胆管内の圧力が高まり、
二次感染をおこします。右上腹部の痛み、発熱、黄疸がおこります。血液検査をすれば、白血球数が上がり、肝機能の上昇も見られます。
*急性膵炎(Acute pancreatitis):胆石が総胆管と膵管の合流するところで引っかかってしまうとおこります。
膵管内の圧力があがるためか、胆汁が膵管に逆流することによっておこる痛みがおこるのかはわかっていません。
上腹部の激痛で脱水状態になっていることもあります。血液検査では 脂肪分解酵素(lipase,リパーゼ)の数値が上がります。

検査
腹部超音波検査で胆石が見られれば診断を確認できます。腹部CTスキャンやMRIが必要となることもあります。
胆石の位置(胆嚢内か胆管)の確認やもし胆嚢壁が腫れていれば胆嚢炎がおこっていることも確認できます。
胆管に石が詰まっていれば内視鏡的逆行性胆道膵管造影(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography, ERCP)を行い、同時に内視鏡を通して石を胆管から取り除くこともできます。手術前には肝機能検査、白血球数、リパーゼなども調べておきます。診断がはっきりとしない場合は胃カメラや心臓の検査が必要となるかもしれません。

治療法
最も効果的な治療法は胆嚢摘出です。もし、胆嚢を残して胆石だけを取り除いても胆嚢の機能に問題があるのでまた胆石は再発します。もし、何かの理由で手術ができなかった場合や総胆管に石が詰まっていて胆管炎や膵炎を起こしている場合、ERCP で胆石だけを取り除きます。しかし、胆嚢にまだ胆石が残っている場合は後ほど時期をみて胆嚢を取り除かなければなりません。
胆嚢摘出は最近ではほとんどが腹腔鏡を通して行われますが、胆嚢炎や胆管炎が併発していてあまりにも胆嚢の周りの炎症がひどく、癒着がおこっている場合、開腹手術に切り替えなければならないこともあります。
無症状の胆石の場合、胆嚢摘出をするかしないかで意見は多少別れます。将来症状がおこったり合併症を併発したりするリスクは比較的低いようですので経過観察だけで終わることもあります。もし、症状が現れた場合はやはり胆嚢摘出が薦められます。合併症がおこる前に、胆嚢や胆管にひどい炎症がおこっていないときに手術をするのが理想です。
胆嚢摘出後は数ヶ月間、排便の回数が増えたり軟便になったりすることはあります。特に脂っこいものを食べた後には下痢をすることが多くなります。これは、食事(特に脂肪分)を消化するための胆汁を溜めておく胆嚢がなくなったので胆汁の分泌が能率よくできなくなるからですが、徐々に体はこの状況に対応していきます。
胆石を溶かす薬もありますが、高価な薬で数ヶ月服用しないと効果は出ません。石灰化がおこっていない、直径5mm以下の石にしか使えません。もしこの方法で胆石が溶かされたとしても、石はまた再発します。
腎臓結石の場合、レーザーや超音波で石を砕く方法がありますが、胆石の場合、この方法は適していません。

Share This