ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

 

私が子供のころ株式といえば、証券所で証券マンがワイシャツを腕まくり、つりズボンで、片手でいくつもの電話の受話器を持ち、もう一方の手を開いたり、チョキを出したりして、たくみにいろんなサインを出して銘柄が書かれているプレートにチョークで値段を書き込んでいた。私はその意味がわからないまま、スポーツ中継のような迫力と証券マンによって繰り出されるサインがとてもかっこよかったので、テレビの前で同じように真似をした覚えがある。

それからしばらくして、株もIT化された。今では証券所でグー・チョキ・パーはなく、電光掲示板とコンピュータの大型モニターがずらりと並んでいる。株の値動きはみんながどこにいても同時に見ることができるのだが、IT化されていなかったときは間違いなくラグ(時間差)があって値動きがあった瞬間を共有できなかったと思う。このことは株だけではなく、競馬などのギャンブルを例にとるともっとよく理解できる。誰かが大量にある馬券を買うと掛け率が変わってしまうが、コンピュータのない時代はどう考えても瞬時にその情報が反映されるとは思えない。今は瞬時に変更されるので、競馬運営会社が損をするということは考えられないが、過去はどうしたのだろう?

ニュースの記事で「アルゴリズム取引」というのを読んだ。アルゴリズム取引とはITを使った取引で、株価の上限、下限、出来高や他の要素を条件としてコンピュータ・プロラムを作り、コンピュータでそれを自動実行して売り買いができる仕組みだ。つまりその都度自分で株の状況を判断せずともコンピュータが自動的に判断して実行してくれる仕組みである。元々は、誰かが大きな注文を出したときに株価が大きく変動するのを防ぐため、小刻みに注文するシステムを作ったことが発端らしい。

アルゴリズムというのを簡単に言えば条件文の積み重ねである。「ああしたら、こうする、ああしなければ、こうする、ああしなければ、こうしない」というようなQ&Aによくあるような条件を羅列したフローである。アルゴリズムは、自分でアルゴリズムを書く人もいるがほとんどの人は証券会社が提供しているアルゴリズムのパッケージから自分に合ったものを選んでいる。まあA定食、B定食のような感じだ。また証券会社のアルゴリズムに満足しない投資家もいて、競馬の予想屋のように自分でアルゴリズム考えて、さらにそれを商売にして売っている人もいるらしい。

最近はアルゴリズム取引に加えて、超高速取引というのが話題になっている。最速で1000分の1秒という速さで運用ができるという。スピードが速いといったいどんなメリットがあるのだろう。聞くところによると、1つの銘柄の株価は他の複数の銘柄の株価と連動していることがよくあるので、ある株価が上がったときに、他の株価も上がるということが予想されるときに、他の株価が上がる前に注文を出せるというメリットがあるらしい。それ以外にもこの超高速取引を利用すれば、証券会社のコンピュータの判断よりも速く手を打つことができるというのだが、多くは秘密らしい。どこからともなく、超高速取引をしているヘッジファンドは無敵で大儲けしているという噂がある。

さらに進んで、株取引にAI(人工知能)を利用するヘッジファインドがあるという記事を読んだことがある。AIはアルゴリズムと違って出てきた結果は分かるが、その結果を導いた頭脳のプロセスは、作った人でも分からない。これと関連して最近話題になったこととして、日本のプロの将棋師が、休憩時に密かにスマートフォンを使って次の一手をカンニングしていたのではないかと言われた。将棋でもチェスでももう機械の方が人間に勝つ時代になった。今後は、人間対機械ではもはや勝負にならないので、機械対機械の将棋大会が行われるだろう。実際に人知を超えたAIの力で株を予測し運用しているヘッジファンドがすでにあるという。そこに人間は必要ない。グー・チョキ・パーの時代が懐かしい。

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