ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

10月5日マイクロソフト社(以降MS社)から新OSである「Windows 11」が発売された。過去とは異なり今回の発売は大きな話題にならず、過去にあったような店での行列もなく、それどころかまだ発売されたのを知らない人が多いのではないか? 今年の6月25日にMS社はWindows 11を発表した。発表と同時にソフト開発者や技術者向けのベータ版をネットからダウンロードできるようにした。それを受けて、私は本誌に記事を書いた。それから4か月も経たない内に販売開始という大急ぎの状況。何か急ぐ事情があるのではないかといろいろ疑いたくなるくらいだ。

Windows 11を作った理由
前回にも書いたが、MS社は6年前のWindows 10発売時に、10は最後のバージョンと銘打っていた。しかし、これを覆すいきなりの11の発表。主な理由はデバイスのシステム要件がWindows 10のものから変わったからと言われている。別の言葉で言うと、Windows 10が動いていたPCの中で、Windows 11にアップグレードできないものがあるということだ。六年前のWindows 10発売当時言われた設計思想は、あらゆるデバイス(デスクトップ、ラップトップ、タブレット、スマートフォン)に対し同じOSで動作可能。さらにWindows 7など古いOSが入っていたPCでも動作可能。今後はメジャー・アップグレードなしにWindows 10の範囲内でマイナー・アップグレードを重ねるだけで済む、という触れ込みであった。
それだけ大風呂敷を広げたのに、結局Windows 10で動作していたデバイスの全てをアップグレードするのには限界が来たということだ。それでWindows 10のマイナー・アップグレードを諦め、Windows 11へのメジャー・アップグレードに踏み切った訳だ。以下はMS社が公式サイトで発表しているWindows 11のシステム要件だ。

Windows 10から11へアップグレードするべきか?
「すぐにアップグレードするべきですか?」という質問に対して、簡単にお答えする。ビジネスとしてPCを使っておられるなら答えはNoである。特に会社でアクティブ・ダイレクトリ(Windowsサーバーによるドメイン管理)が入ったサーバーを使用されている場合は、すぐにアップグレードしない方がよいと考える。理由はビジネス仕様に関してまだバグが出し尽くされていないと思うからである。今回のアップグレードは、個人ユーザーに対するメリットは多いが、ビジネス・ユーザーにとっては、メリットどころか逆に問題が発生しそうな機能がいくつかある。
例えば、「マイクロソフト・ストア」の機能が強化され「アップル・ストア」のようにユーザーが簡単にアプリをダウンロードしたり購入したりできるようになった。システム管理者(アドミン)にとってユーザーが勝手にアプリをダウンロードできるようになるシステムは問題である。管理者がグループ・ポリシーによってユーザーが勝手にダウンロードしないように制限を掛けるということは可能である。しかし小規模の会社では、技術者でない一般の社員が管理者を任されている場合が多く、グループ・ポリシーを操作してクライアント・ユーザーが勝手なことをしないように管理するのはかなり難しいことだと考える。また、スタート・メニューがなくなり、見慣れたメニューが変更されてアップルのような画面になることをビジネス・ユーザーは望んでいるのだろうか? 私が管理者の方にお勧めするのは、取り敢えずご自分のPC一台をWindows 11にアップグレードして様子を見てみてはどうだろう。
では、ビジネス・ユーザーではなく個人ユーザーはどうか? タッチパネルで使用している人にとっては便利な機能が増えるかも知れない。リモート通信にマイクロソフトTeamsを使用している人にとってはより便利になるかも知れない。ただ、それにしても新しいソフトにはバグが付きものなので、しばらく様子を見てみてはどうかというのが、私の見解である。

アップグレードに苦戦
Windows 11の新しい機能に関しては前回少しご紹介したので、詳しい機能紹介は自分のPCをWindows 11にアップグレードして試した上でご紹介しようと思っていた。適当なPCを選んで11にアップグレードしようと思ったのであるが、色々問題が起こって今のところ試した二台共アップグレードが成功していない。
最初家にあった古いPCを使ってアップグレードしてみようと思ったところ、以下のようなエラーメッセージが出てアップグレードできなかった。3つのエラーがあった。次に比較的新しい、インテル社の高速CPU i7 7700が入ったPCでアップグレードを試みた。だがこの場合でもCPU(プロセッサー)が対応されていないというエラーメッセージが1つだけ出た。i7 CPUは現在最も早いCPUの一つで、このCPUが対応できないとは到底思えなかった。調べていくと、どうもi7 CPUの中でもいくつか世代によって対応していないものがあるらしい。今回解ったのは、システム要件に書かれていた内容にはかなり例外があること。Windows 10で動いている多くのデバイスがWindows 11にアップグレードできないことだ。みなさんのPCがアップグレード可能かどうかは、”WindowsPCHealthCheckSetup.msi”をダウンロード、チェックしてみればわかるのでお試しあれ。つづきは次回へ。

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