ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし


第162話:ホーム・セキュリティー・システム

2020年東京オリンピックの費用が当初の3倍4倍に膨らんでいるのが問題になっているが、そのなかでテロ対策費用として約2000億円が計上されていると言われている。世界の中で最も安全な国をアピールする日本でさえ安全にこれだけのお金を費やす時代になった。私が子供のころは、家の鍵は牛乳箱に入れておいたのを思い出す。企業や学校は、ずいぶん前から警備会社と契約したセキュリティー・システムを使っていたが、最近は個人の住宅でも広がってきている。

比較的新しいアパート(日本で言うマンション)は、玄関にオートロック機能があり、不審者を防いでいる。住人はキーカードや暗証番号で玄関に入ることができ、エレベータで自分の部屋がある階まで行くことができる。ただどの階でも行けるのではなく、自分の住む部屋の階と公共施設のあるところだけアクセスできるようにプログラムされている。訪問者の場合は、玄関のオートロックパネルで住民を呼び出すと、住民はビデオで訪問者を確認して玄関のドアを開ける。この場合も訪問者は目的階にしか行けない仕組みになっている。アパートに関してはおよそオートロックで統一されていて、他の仕組みをあまり見ないが、一戸建て住宅のセキュリティーに関してはまだ統一したものがなく、さまざまなものが売られている。

ひとつ例を挙げよう。保険会社のNRMAが10年程前から売り出しているホーム・セキュリティー・システムであるが、このセキュリティーは基本的に留守時の不審者に対するセキュリティーだ。住人が留守をするときに、コントロールパネルと呼ばれるオートロックパネルに似たものを使って「Away」にセットする。セットするとすぐにピーピーと警告音が鳴り出し1分間以内に鍵を閉めて外に出る必要がある。1分経てばセット完了し、警告音も止まる。「Away」の状態で不審者が侵入すると、各部屋に取り付けられたセンサーが反応して部屋の中と外に置かれたサイレンを鳴らす。その音は車の防犯用の音よりさらに大きく、耳をつんざくようなサイレンで間違って反応させてしまったときなのに聞くことがあるが、本当に大きな音で心臓がどきどきする。サイレンと同時にNRMAのセキュリティーセンターに連絡がいくようになっており、家の電話や登録した携帯電話にNRMAから電話がかかってきて、この警報が誤りなのかどうかを聞いてくる。

住人が外から帰ってきてセキュリティーを解除するときは、玄関を開けてから30秒以内にコントロールパネルで解除操作を行う必要がある。NRMAの各部屋に置くセンサーは部屋の隅の上に設置して、人の動きによって感知するシステムである。ときどき蜘蛛などの昆虫がセンサーの上を通過して誤った警報を鳴らすことがある。別のセキュリティー会社では、例えば窓センサーと言って一つ一つの窓にセンサーを付け、窓がこじ開けられたり、割られたりしたときに反応するように作られているが、すべての窓にセンサーを付けるのはコストがかかる。またNRMAには留守以外にも就寝時のセキュリティーというものがあり、住人が就寝中に侵入者に気付いたときは、リモコンを使ってサイレンを鳴らすことができる。

以上がNRMAのホーム・セキュリティー・システムで、オーソドックスなものであるが、最近では上に述べた機能以外にもっとバラエティーに飛んだものができている。CCDカメラで家の周りを監視するキットが量販店でよく売られている。買って設置しようとしたときに問題になるのは、カメラの設置とケーブリングだ。カメラは家の外の四方に置くことが多いため、長いケーブルを屋根伝いに張り巡らせることになる。素人では難しく、結局電気の専門家を呼ぶことになり、キットより設置費用の方が高くなる場合がある。CCDカメラをワイアレスで操作するものもあるらしいが、安定性に問題があるためか、今でも物理的なワイアリングをするのが標準だ。最近のCCDカメラはインターネット、スマートフォン対応で、いつでもスマートフォンを使って家の安全を確認できる。機種によってはスマートフォンで不審者を見つけた場合録画できる機能もある。一昔前まで、コンビニ強盗などで発表された証拠ビデオの画像が白黒でさらに解像度が悪かったのに対し、今は家庭用CCDでもカラーでくっきりとした画像が見える。

聞くところによると、最近の新築一戸建て住宅は、ホーム・セキュリティーとホーム・オートメーションが一緒になっているものがあるらしい。でもこの場合は新築に限られ、建築前にいろいろ計画する必要があるとのことで、古い家のセキュリティーに最新のテクノロジーを使えるようになるにはまだ時間がかかるようだ。

第161話:ITが目指しているもの

わたしが生まれたときは、習い事としてそろばんがあった。かつて、「読み書きそろばん」と言われたように、わたしを含め近所の子供の多くは今の子供たちが学習塾に通うようにそろばん塾に通っていた。その時には、コンピュータはおろか電卓もない時代で、そろばんは生活の必需品であった。家でも会社でもそろばんを使い、そろばんのスキルを表す級数があった。たとえば銀行員になりたければ三級は最低取らないといけないと言われた。また1級になると暗算能力も試され、暗算で6桁以上の足し算引き算ができた。かれらは昔の小学生にとって大天才のヒーローであった。

そのうち卓上計算機、いわゆる電卓が登場し、そろばんが必ずしも仕事で必要でなくったことを受け、そろばん塾は急速に収束していった。そしてそのうちコンピュータが登場すると複雑な計算はすべてコンピュータに任せるようになった。そして今までヒーローのように尊敬されていた暗算の名人たちの行き場がなくなり、万国びっくりショーのようなバラエティーでしかその実力が発揮できなくなってしまった。

以上は1つの例であるが、ITが進歩すればするほど、コンピュータが人間の仕事を奪うのではないか、そのうち機械が人間を支配するのではないかということが早くから言われ始めていた。それに対し、いやいやコンピュータはあくまでも道具であり、そろばんが複雑になったようなものであって、結局は人間が命令する必要がある。これから我々がすべきことは、コンピュータの使い方を覚えることであると。

しかしそれにしても、初期のコンピュータ・システムを操作するにはコンピュータそのものを学ぶ必要があった。昔はプログラマーと呼ばれる職業の人たちが大勢いた。その人たちが人間が命令したいことを機械に解からせるように機械語に翻訳するプログラムを書いた。いわば人間の言葉から機械への通訳が必要であった。その後、コンピュータはどんどん進化してきており、今まで答えを出すのに100行のプログラムが必要であったものが、マクロ化、グループ化によってより少ない行数で済むようになってきている。プログラムの効率化に加えて、自然言語への移行も同時に発展してきており、プロでしか書けなかったプログラムが、一般のユーザーでも書けるくらいの自然言語を使った簡易言語というものがでてきている。

最近では、ソフトウェアはほとんどパッケージ化されて、注文してプログラムを作ってもらっていた時代から一歩進み、たくさんあるソフトウェア・パッケージからユーザーがパッケージを選ぶ時代になっている。そしてソフトの操作もほぼ自然言語を使って、われわれがコンピュータの言語に合せるのではなく、コンピュータが我々に合せるようになってきている。

このようにITの歴史を眺めていくと、より複雑なことを、より簡単な命令で済ますという流れになっているのがわかる。今後どうなっていくのかと言えば、最近話題の人工知能を使ったものがどんどん入って来て、極端に言えば命令しなくても自分がやってほしいことを機械が考えてやってくれる時代が来るかも知れない。つまり唯一残された人間であることの特権である「なにをしてほしいか」という命令や意思表示でさえ、機械がユーザーの過去の操作履歴や統計から判断して勝手に実行していく時代がもうそこまで来ている。至れり尽せりのコンピュータ社会になると思うが、これに対して不安に思う人も多いであろう。よくSFにでてくる機械が支配し、人間は奴隷になる世界である。では最後までコンピュータが自分で判断できないものはあるだろうか?つまり人間が世の中に必要とされる究極のものはなんであろう?答えは今書かずに、みなさんに考えていただくということにしよう。

第160話:ポケモンGO

このところ日本のニュースは国際問題やテロなどでいやなことが多かったが、久しぶりに明るいニュースが飛び込んできた。ポケモンGOが世界中で大ヒットして、多くの若者が外に出てポケモンGOを楽しんでいる映像だ。

今までゲームというのは室内で楽しむもので、とても不健康なものというイメージがあった。それを今回のポケモンGOで払拭した功績はとても大きいと思う。「家でゲームばっかりしないで外で遊びなさい」という親の願いが叶った感じだ。ただ親が思っていた昔の遊びとはちょっと違っているが。オーストラリアやアメリカでは子供の肥満が問題になっており、政府が多くのプログラムを作って、多くのカウンセラーに意見を求め、莫大な予算をつぎ込んでもなかなか解決しなかった問題をポケモンGOは一気に解決した。とにかく歩かないとゲームができないのでみんな歩く歩く。今まで人とのコミュニケーションを取るのが苦手であった子供や若者が公園などでポケモンGOをプレーしている見知らぬ人たちと「ここで、どんなポケモンがでるの?」などと会話するようなった。自閉症などの精神疾患の治療ツールとしても期待が持たれている。鳥取砂丘では積極的に観光誘致に乗り出すなど、観光産業のツールとしても利用しようとしている。昔、ツチノコやヒバゴンなどが話題になったが、それらのキャラクターもポケモンの仲間に入って観光客を呼び寄せるかもしれない。そしてなにより地元を歩くことによって、地元の名勝旧跡をより知ることになった。

もちろんいいことばかりではなく、いろんな事件が起こっている。ポケモンGOに夢中になっていて盗難にあった恐喝にあった。警察署や消防署など用事のない人が立ち入り禁止の場所にかってに進入してきた。原子力発電所の敷地に近づく人まででてきた。スマホに夢中になって交通事故を起こしそうになった。緊急でもないのにピカチュウを捕まえるために高速道路に車を止めた。また逆に「レアポケモンが現れたのでついうっかり」と交通事故の言い訳にポケモンGOが使われているという。南米では他人の家にかってに入り込んで刺殺されるという事件まで起きた。

とにかくまだスタートしたばかりで、これからどのようなことになるのかまだ判断できない。発売元である任天堂の株は数日で2倍に跳ね上がったが、任天堂は、「販売元ではあるが、開発社は別でたいして儲かっていません」という自虐的なコメントを発した数日後に株価が急降下というジェットコースター並みの乱高下。世界中がポケモンGOでお祭り騒ぎになっている。

ゲームに興味がない中年のおじさん、おばさんでもその経済効果は気になる。ポケモンGOは無料配信していて、いったい任天堂はどうやって儲かっているのだろうか? 一部で言われているポケモンGO経済効果が1兆円とか10兆円とかという数字はどこからくるのだろう。ポケモンGOは無料ばかりではなく、有料の商品もあるようで、例えばアイテムの一つであるモンスターポールは遊んでいるとなくなることもあるそうで、ポケストップで獲得できなかった人は追加で買うことができる。まずポケコインを買ってそれからアイテムと交換するらしい。

また日本のハンバーガー・チェーンである日本マクドナルド社が売り上げを伸ばすためにポケモンGOとタイアップした。つまり日本マクドナルド社はタイアップ料を払い、マクドナルドのお店をポケストップに指定した。それで売り上げが伸びているらしい。ところがそれもいいことばかりではなく、コーヒー一杯でお店に長く居座る客が後を絶たず、新たな問題になっているという。

技術的な話をすれば今回のゲームが斬新なのはAR(Augmented Reality)と呼ばれる拡張現実。グーグルマップや実際の風景とポケモンのキャラクターが入り混じる世界だ。このARの技術はこれからもっと発展してゆき、たとえば観光地で観光ガイド、通訳が現れて案内するというのはどうだろう。更地に家やビルを建てたときのイメージを確認したり、新しい台所に変更したときの部屋からうける雰囲気を確認したりできるようになる。墓参りのときに先祖の姿が浮かんでくるというのは人によって好き嫌いがあるかも知れない。

第159話:Tay(テイ)

このところ人工知能に関するニュースをよく耳にする。最近耳にしたショックなニュースと言えば、マイクロソフト社が開発している人工知能Tay(テイ)のアカウントが突然マイクロソフト社によって停止されたという事件だ。Tayはツイッター上にいる仮想人物で、19歳のアメリカ人女性という設定である。彼女に対して多くのユーザーが話しかけるとTayの方から返事が返ってくる。その返事が人間と見分けがつかないくらいなので、多くのユーザーがTayとツイートするのを楽しんでいた。ところが、ある日とても差別的な発言をし始めた。ヒットラーを賞賛する内容だったり、人種差別だったり、政治的に過激な内容だったりした。

Tayにおける人工知能の仕組みというのは、人間の頭脳の仕組みに似ている。赤ん坊から成長して大人になる間に教育を受けたり、様々な経験をしたりしてその人格が形成されていく。これと同じように、Tayも最初はなにもない白紙の状態から、多くのユーザーとのツイートによって学習し、いろんなことを判断しながら人格が形成されていく。従って人間と同じように、よい環境で育てばよい人格になり、劣悪の環境で育てばその環境に引きずられた人格を形成することになる。

人間の子供であれば、多くの人たちがあたたかい思いやりを持って接するのであるが、Tayの場合は人工知能といういわば機械ということもあり、中には自分の子供や友達には決して言わない様な過激な質問、間違った解釈、うそのことを教えたりしたと思う。要するに相手が機械なのでその人格形成に対して責任を負う必要がないし、自責の念もないため、無責任な状況が生まれたと思う。極端な意見を言ったり、汚い言葉を言ったりしたらTayがどんな反応をするのか試してみようとゲーム感覚で思った人もいると思う。人間は劣悪な環境に育っても立派な人になる可能性があるが、残念ながらTayはよほどまわりの人たちが悪かったのか非行少女になってしまったようだ。

よくある意見に、なぜTayの開発者は、このような差別発言を許すようなプログラムを組んだのかという批判がある。つまり親に譬えられるところのTayのプログラムを作ったプログラマーが、最初からピアレント・コントロールの機能を入れていなかったのが悪いという意見がある。しかしながら、この意見はあまり人工知能を理解していない人の意見と思われる。

現在世界がしのぎを削って競争している人工知能というのは、インターネットのピアレント・コントロールにあるような、この言葉が来たらフィルターリングして見えなくするというようなルールベースに基づくものではない。ルールベースについて別の例をもう一つ挙げると、例えば法律。あなたのやったことは第何条何項に抵触するのでこれは法律違反になりますというもので、まず法律というルールが大元にあり、それに対してある行為がどんな法律に抵触するかということを測るというものである。しかしこのルールベースには欠陥がある。最初から全てのルールを作る必要があるということだ。これは事実上無理な話で、法律にしてもどの法律にあてはまるのか曖昧なものもあるし、法律にないもので反社会的なものは放って置く訳にいかないので、新たに作る必要がある。しかも法律というのは、これをしてはいけないという禁止事項が書いてあるだけで、なにをするべきかということは書かれていない。

近代、人は法に触れない限り何をしても自由であるという大原則の下にあるので、このプログラムをどう組むかということになる。人間社会ではしていいこと、するべきことは、宗教、道徳などがあるが、ルール化されている訳ではない。聖書やコラーン、お経をまるごとプログラムに入れても人格形成には十分でないと思われる。そこで人工知能が紆余曲折しながら辿り着いたのがルールベースではなく人間の脳を真似ることだ。ただ問題は山ほどある。人類は自分たちの脳の仕組みを完全に理解した訳でないので、人間の脳の仕組みを解明しつつ、その研究の成果を人工知能に応用し、逆に人工知能の実験結果から人間の脳の仕組みを解明しようとしている。人工知能のレベルが犬のそれであれば従順、忠実でそれはそれでペットのように可愛いが、人間となると親の思い通りにならないことが多く、多くの親が子育てで悩んでいるように、人工知能の開発者も悩んでいる。

第158話:Windows 10にアップグレードするときの注意点

前回Windows10にアップグレードすべきかどうかで迷っている人たちに対してその長短を書いた。アップグレードしたくない人に対しての対応は他誌でも書いたので、ここではアップグレードをしたいが自信がなく、いろいろ不安に思っている人に対してのアドバイスをしよう。

まず値段的な問題であるが、マイクロソフトによると7月29日まではアップグレードもクリーンインストールも無料である。クリーンインストールというのは、機械だけがあってWindows 7や8がインストールされてなくてもできるインストールのことで、これには7よりもっと古いXPやVISTAが入っていた機械も含まれる。アップグレードとの違いは、アップグレードでは事前にソフトやドライバなどの互換性をチェックするが、クリーンインストールはWindows 10をインストールすることで以前のソフトやデータがすべてなくなるというもので、さらにドライバに関しても保証はない(おそらく大きな問題はないが)。クリーンインストールは通常DVDやUSBを使ってインストールするが、但し書きとして7月29日までに機械の方にインストールしておかなければならない。つまりDVDやUSBにWindows 10のインストール用ソフトを持っているだけではだめで、7月30日以降にそれを使ってインストールしても有効にならない。

マイクロソフト社は、Windows 7や8.1から10にアップグレードするときは、現在のデータはすべて保存されると言っている。理論的には正しいのであるが、それでもアップグレード中に予期せぬ問題が起こる可能性があるので、事前にバックアップを取ることをお薦めしている。

先日あるクライアントから電話があった。ウィンドウズ10へのアップグレード時にノートパソコンの電源を入れるのを忘れていて途中でバッテリーがなくなり、機械が止まってしまった。あわてて電源コードを入れたがそれからうんともすんともいわず、画面が真っ暗なままでアップグレードもしなければ、元にも戻らないという状態になったということであった。この種の問題はこのクライアントだけに起こるものではなく、アップグレードをする人全てに起こる可能性があり、事前に万が一の対策を準備する必要があると思う。

さてこのような場合の対策であるが、事前にDVDなどにハードディスク全体のバックアップをしたものがあれば、そのバックアップの日付までプログラムやデータを戻すことができる。そういうものがなければ、リカバリという方法で買ったときの状態まで戻すという方法しかないように思える。買ったときの状態というのは、PCが工場から出荷された状態で、通常ワードやエクセルも入っておらず、もちろんデータもなくなった状態ということだ。データはハードディスクの中に残っているのであるが、素人ではデータだけ取り出すということが困難である。プロに任せることで、ハードディスクから直接データだけ取るという作業もできるが、その分お金をかけないといけない。従ってアップグレードの前に以下のような作業が必要である。

● 全データのバックアップ:

Outlookをメーラーに使っている人は、Outlookのデータファイル、PSTという拡張子を持ったファイルもバックアップにとっておく。通常データが入っている場所はCドライブ→ユーザーの中にログイン名と同じ名前のフォルダがあるので、そのフォルダごとバックアップを取ればよい。バックアップ用のメディアは外付けハードディスクが大容量で安いのでお薦め。

●ソフトのライセンスIDやパスワードをメモしておく:

最近のソフトはプログラムに関しては自由にダウンロードできるものが多いので必ずしもCDやDVDを持っている必要はない。ただしライセンスIDやパスワードを失うと結局買い直しになる。

以上は、アップグレード中におかしくなったときの対処法であるが、この対処法ではWindows 10ではなく元のバージョンに戻すだけであるから、それからさらにもう一度Windows 10へのアップグレードを行う必要がある。

第157話:Windows 10無料アップグレードの期限迫る

マイクロソフト社によるとWindows 7並びに8.1は、Windows 10(テン)に無料でアップグレードできる。ただし期限があって、最近発表されたところによると2016年7月30日以降は有料になるという。値段的には詳しくはわからないが、Windows 10 ホームと呼ばれる最も安いエディションでも$100以上すると思われる。

期限が迫ってきてアップグレードすべきかどうか迷っている人が多くいると思う。わたしが勝手に「えぃ、やー」で言ってしまうと、特に問題がない方はアップグレードしたほうがいいのではないと考えている。理由は今後Windows 10が主流になるのは間違いなく、7や8、8.1はそのうちなくなってしまう。今後発売されるソフトや周辺機器もまず10に最適化するように設計されるだろうし、10が最後のバージョンアップといわれているように、10以降のバージョンアップはなく、後はインターネットによるアップデートの形で更新されていくものと思われる。(今後マイクロソフトが考えを変えなければであるが)車でいえば大きなメジャーチェンジをしたので、今後のメジャーチェンジは考えていないと言ったところか。スピードが今より遅くならないかと心配しているユーザーがいるが、わたしの経験では古いPCでも返ってスピードが上がったように思う。

1つ1つ検証していこう。Windows 8や8.1をタブレットではなくデスクトップモードで使っているユーザーに対しては間違いなく10の方が便利でデスクトップで操作する機能も優れていると考える。8や8.1をタブレットで使っている方もわたしとしては、10へのアップグレードをお薦めする。問題は7を使っている人が、10に切り替えるべきかどうかというところである。7に慣れた多くの人は、10が7より使いやすいと思っていないようだ。確かにわたし自身7と10の両方を使っているが、どちらが優れているか、どちらが好きかと聞かれて回答に苦しむ。7は使い慣れているということもあるだろう。ただまた「えぃ、やー」で言ってしまうと、迷っているくらいなら10にしたらどうかという意見である。坂本竜馬の前向きの精神を見習いたい。

ときたま10は大嫌いだという人に会う。なにがなんでも10にはしたくないと言う。理由を聞いてみるとまちまちで、画面が気に入らないとか、ソフトが対応しているかどうか心配とかクラウド仕様なので情報が盗まれる可能性があるというようなことである。10のデスクトップ画面に関してはマウス操作だけではなく、手のタッチ操作も勘定に入れているためにどうしても一つ一つのボックスが大きくなり、画面に表示できる行数が少なくなる。確かにマウスを使っていて、タッチパネルを使っていない人にとっては必要のないものだが。
ソフトの互換性はアップグレード前に事前にチェックできるが、不正なソフトを使っているユーザー、特に高価なソフトをクラックと呼ばれる金庫破りのような手段を使ってインストールしている人にとっては、10へアップグレードすることでメーカにそのことがバレてしまう可能性がある。ご用心ご用心。

10にアップグレードし最初にユーザーを作ろうとすると、マイクロソフトのユーザー・アカウントを作らされる。実際は従来のローカル・ユーザーも作れるのだが、初めてのユーザーはマイクロソフト・ユーザーしかないと思ってしまいこのアカウントでログオンする。マイクロソフトのアカウントを使用すると、デスクトップ画面のレイアウトやお気に入りなどが共有され異なるPCでも同じものが出るので便利だが、基本的にクラウドを使っているためセキュリティーということからいうと、どこにどんな情報が飛んでしまっているのかユーザー自身がわからなくなることが多く、機密性の高いデータを保管するにはよほど気をつける必要がある。とはいえ、これが最近のトレンドであり、Windowsだろうがアップルだろうが同じ傾向で、ユーザーの方が賢くなることを望まれている。

第156話:クラウド - Office 365

クラウドという言葉を聞くようになってかなりの年月になる。でも実際どのくらいクラウドが使われているかというと、あまり使われていないか、もしくは使っていても分からないまま使っている人が多いと思う。またクラウドという言葉は知っていても意味をはっきり理解できていない方もいるかもしれないので簡単に説明する。

昔は自分のPCのハードディスクの中にデータを保存しておいた。企業だと社内にあるサーバーに保存しておいたのだが、最近はインターネットを使って接続先のサーバーにファイルを保存することができる。ちょうどインターネットが自分のPCと遠く離れたどこかのサーバーの間にありその仕組みは技術的には複雑だが、ユーザーにとっては考える必要がない雲(クラウド)の上のようなふわふわした存在なので、このシステムをクラウドと呼ぶようになった。言い直すと便利なシステムで、なにかわからない雲のようなものが中間に介在しているがそれを特に気にする必要がないシステムがクラウドだ。そして最近のクラウドによるサービスはデータ・ファイルの保存だけではなく、アプリケーションそのものをクラウド側において、自分のPCではインターネット・ブラウザ(例:Internet Explorer、Google Chrome)さえあれば、それだけでさまざまな仕事がこなせるようになってきている。

わたしのまわりの話をするとクラウドの代表格であるマイクロソフト、Office 365を使っている人はまだ少ない。使っている人のなかでも店で間違って買ってしまいしかたなく使い続けているという人がいる。昔から売っている Office 2013や2016とクラウド仕様のOffice 365とはどう違うのかと聞かれる。まず基本的な知識としてOffice 365には個人用と法人用があり、個人向けのプランではOffice 2013やOffice 2016を各々のPCにインストールする必要がある(企業向けのものは別の方法がある)。つまり365でも通常のOfficeと同じようにそれぞれのPCにインストールする必要がある。ではなにが違うのかというとデータの保存場所がクラウドでは自分のPCではなくクラウド先のサーバーになるということである。

通常のOffice ではMy Documentなどのローカルディスクに保存するが、Office 365はインターネットの向こうのマイクロソフトが提供しているサーバーに保存する。そのメリットとしては、保存する場所が一流メーカーのクラウド・サーバーなので、安全管理が行き届いており個人のPCのようにハードディスクの故障でデータが取り出せなくなったりすることがないこと。従ってバックアップも頻繁に取る必要はない。ただしサーバーのハードディスクが壊れることはないにしてもデータ・ファイル自体何らかの原因で壊れることがあるので、バックアップが完全に必要でなくなったということではない。

Office 365のもう一つのメリットとして、データが自分のPC内ではなくクラウドの向こうにあるサーバーに保存されているので、同じPCを使う必要がなく、異なるPCたとえば旅先のPCからでもアクセスすることができる。ただしOffice 365の場合個人用プランでもいくつかの種類があって、その種類によって使用PCの台数制限があるので注意。

Office 365のソフトは買取ではなく、1年ごと(もしくは1ヶ月ごと)にライセンスを買う必要があり、長い目でみると高く感じることがある。その代わり、ライセンス期間中は最新のOfficeをダウンロードしていつでもアップグレードできるというメリットがある。クラウド内のセキュリティーもしっかりしているので、セキュリティーにお金をかける必要がないというメリットもある。

以上は個人用のOffice 365の話であるが、法人用になればさらに複雑なことがクラウドでできるようになる。自分のPCにいちいちOfficeをインストールする必要もなくなるし、世界中どこでも、どのPCを使っても同じ環境で仕事ができるということも可能である。日本では金銭的なメリットから中小企業が主にこのシステムを使い始めてきているが、大企業になればなるほど普及していない。その理由は主にデータのセキュリティーで、マイクロソフトといえど100%信頼がおけるとは思っていないようだ。

第155話:海外でなぜメールが送れないのか

前回インターネット・メールの話で、受信メールに関して解説した。今回は送信メールのお話をしよう。おさらいになるが、インターネット回線を通じて送られるEメールをOutlookなどのメールソフトで使用するためには、受信メールサーバーと送信メールサーバーの設定が必要になる。受信メールサーバーは、POP3とIMAPという2つのシステムの中から選択する。ただPOP3にしか対応していないメールアカウントも多くあるので注意。送信メールに関してはおよそ1つだけ、SMTP(エスエムティーピー、Simple Mail Transfer Protocol)と呼ばれているシステムを使う。設定では、各プロバイダが指定するSMTPサーバー名を入れ、メールはSMPTサーバーを通じて送られる。

SMTPに関するルールは、かつては1つだけで、「現在使用しているインターネットのプロバイダが指定しているSMTPサーバー名を指定する」というようなものであった。たとえばテレストラがプロバイダであれば、SMTPサーバー名であるmail.bigpond.comを設定項目に入れることによってメールが宛先に送られた。間違って他のプロバイダのSMTPサーバー名を設定するとエラーになって送ることができなかった。よく海外に行ったときに今まで送られていたメールが送られなくなったという話を聞くが、原因はこのルールのせいで、この場合海外で使っているインターネット・プロバイダのSMTPサーバー名に設定変更すると送信できた。そして多くの場合SMTPの設定にパスワードは必要なかった。

ところが最近は上のルールだけではいろいろと困ったことが起こるようになってきた。困ったことの1つは、送信メールサーバーに大量のジャンクメールを送るハッカー攻撃があり、プロバイダのSMTPサーバーが機能停止することが頻繁に起きるようになった。昔の人であれば、遺恨のある人や団体に対して大量の白紙FAXを送信することで、受け取り側のFAXがいつも受信状態になり、結果相手のFAXを使えないようにした事件を覚えていると思う。それと同じことがEメールでも起こっているのだ。2つ目として、成りすましメールが増えたことだ。上のルールだけではメールを送る人がそのメールアドレスの本当の持ち主でなくても送ることができる。その性質を利用して、他人のメールアドレスから、他人の名を騙って送ることができる。

これらの問題対策として、多くのプロバイダは、受信メールと同じように、送信するときもパスワードを入れる必要があるようにした。このことにより、パスワードで本人確認ができるため、パスワードが合っていない送信メールは送信メールサーバーの入り口で拒否され、またパスワードが必要とされるために成りすましができなくなったという利点がある。

そしてもう一つおまけのメリットが生まれた。最初に作ったルールである「現在使用しているインターネットのプロバイダが指定しているSMTPサーバー名を指定する」というルールに従う必要がなくなってきたことだ。たとえば現在使用しているインターネット・プロバイダがテレストラだとして、Outlookの中にグーグルメールを設定するとき、テレストラのSMTPサーバー名 mail.bigpond.com を設定することもできるが、グーグルメールのSMTPサーバー名である smtp.gmail.com を設定することも可能で、しかもグーグルのSMTP設定をした方が、インターネット・プロバイダが変わっても、たとえば海外に行っても、どのプロバイダになってもメールを送信できる。つまり基本的にインターネットさえあれば世界中どこでも設定を変えずにOutlookから受送信できるようになった。

もう一つ追加されたルールとして、SSLとかTLSとか呼ばれるセキュリティーの設定をする必要があるものがでてきた。このことによって送信側と受信側の間が暗号化されるため万が一メールを第三者が盗み見しても何が書いてあるか分からないというものである。それと関連してポート番号設定などがあるが長くなるのでこれは又の機会に説明したいと思う。

第154話:POP3とIMAP

インターネットプロバイダを変更したとき、EメールアドレスやEメール設定が変わってしまう場合が多い。HotmailやGmailといったウェブメールであれば、基本的にユーザーネームとパスワードだけ覚えておけばどんなコンピュータでも使用できるが、例えばTelstraがプロバイダでOutlookに設定しようとした場合ユーザーネームとパスワード以外にいくつか設定値を入れる必要がある。

Outlook設定の際に機械からいろいろ聞いてくる質問に答えながらEメールを設定するのだが、通常はこう聞かれたらこう答えよというようなマニュアルをプロバイダから渡されていて、その通りに入れたら使えるようになっている。ただ時々マニュアルに書いていない質問があったりするとどうしてよいか分からなくなる。たとえばPOP3にするかIMAPにするかという問題である。

例えば受信メールサーバーの種類がPOP3(ポップスリー)とIMAP(アイエムエーピー)のどちらを選んだらよいのかというところで迷った方もいるかもしれない。個人でインターネット接続を申し込んだ場合、付いてくるメールは、かつてはPOP3方式と決まっていた。しかし最近はIMAP方式も設定できるものも増えてきて、ユーザーが選択できるようになっている。

POP3というのはPost Office Protocol Version 3の略であるが、この名前の由来は本題に関係ないので、それよりもこの方式の説明に焦点をあてたい。POP3はプロバイダのメールサーバーからメールをダウンロードする方式で、自分のPCの中にデータをダウンロードして、同時にサーバーからデータを削除するか数日後に削除するのが一般的な使い方である。サーバーからデータを消してもPCにデータが残るという利点があり、サーバーの容量が少なくて済む。ただ、もう一台のPCを使って同じメールを読みたい場合は、先にサーバーから消してしまうと入って来なくなるので、サーバーに何日置くというような命令をOutlookに出す必要がある。

IMAPはInternet Message Access Protocolの略で、サーバーにあるメールと同じ状態をOutlookでも見られるものである。ウェブメールとOutlookには全く同じ数と内容のメールが入っている、と言うよりOutlookがウェブメールの代わりになったというイメージだ。利点としては、複数のPCでいつでも同じメールがあり、あるPCで削除したメールは他のPCでも削除されており常に同期している。そしてウェブメールの場合はインターネットがないところでは過去に受信したり送信したりしたデータを読むことができないがIMAPでは最後に同期した状態を見ることができる。

OutlookではIMAP方式でも、客先毎、年代毎に仕分けしたフォルダを作成することができるが、そのOutlookで作ったフォルダがプロバイダのウェブメールや他のメールソフトにそのまま反映されるかというと、そうでない場合が多い。Outlookでいろんなフォルダに仕分けしたデータをウェブメールで探そうとして苦労することがある。ウェブメールを見ると、Outlookにあったフォルダがないため、ウェブメールの検索機能を使って探す方法がよく取られる。これが欠点といえば欠点である。

他の欠点としては、常にインターネットの先のメールサーバーと更新、同期しているので、ローカルにデータがあるPOP3に比べると反応スピードが遅く感じることである。また複数の人と同じメールを共有している場合、誰かが誤って必要なメールデータを削除してしまう可能性がある。そうするとそのメールにアクセスした全員のデータも同期されて同じように削除されてしまう。あと自分でサーバーから削除しない限りどんどんメールがサーバーに溜まっていくので、POP3と比べてサーバーの使用容量を大きくする必要がある。最近のサーバーは日付の古いメールを勝手に削除したり、サーバー容量に制限があったりするので、とくにIMAPで使用する場合は、サーバーの契約をきちんと把握しておくことをお薦めする。

第153話:まぎらわしいIT用語

2015年もあと少し、今回はお堅いトピックスを避けて、非常に一般的なIT用語でありながら実は使い方を間違っていたり、人によって使い方に違いがあったり、知ったかぶりをしているが実は分かっていないものについて書いていこうと思う。

インターネット:よく「インターネットは観られますが、メールは入ってきません」と言う人がいる。この人の言うインターネットとはインターネット・ブラウザ、つまりウェブのことある。本当の意味でのインターネットとは、インターネットの規則、手続き(プロトコル)に準じたネットワークの種類のことを指し、インターネット・ブラウザはそのアプリケーションの1つということになる。

ホームページ:日本ではよくウェブとホームページが同じように語られる。本当の意味のホームページとは、ウェブページの最初のページ、家でいえば玄関を指す。

デスクトップ:デスクトップには二通りの意味があり、持ち運びができるラップトップタイプではない据え置きタイプのPCという意味でのデスクトップ。もう一つは、縦置きのタワータイプではない、横置きのデスクトップタイプという意味。

PC(ピーシー):小型コンピュータ、つまりパソコンの省略形として呼ばれるもの。もう1つの解釈は、MAC(アップルコンピュータ)でない、IBM系統のコンピュータをIBM PCとかつて呼び、MACに対抗して、単にPCと呼ばれた。

メモリ:主にRAM(ランダム・アクセス・メモリ)のことであるが、時々ハードディスクの容量を表すのにメモリは1TBもありますと言う人がいる。

ハード:ハードディスクを指したり、コンピュータ全体を指したりする場合があるが、いわゆるハードウェアは、ソフトウェアとの対照で、ソフトが形のない情報であるのに対し、媒体など形や重さのあるものを指す用語。

CPU:日本語では「中央演算処理装置」といういかつい名前で、コンピュータの頭脳にあたる部品の名前であるが、昔はCPUを入れた入れ物、すなわちコンピュータ本体のこともCPUと呼んでいた。

ビット:1ビットで、0と1、もしくはあるかないかという2通りの判断ができる。2ビットだと2の2乗すなわち4通り、3ビットで8通りというようにビットが増えることに乗数を加える。8ビットは、2の8乗すなわち256通り、32ビットは4,294,967,296通りとなる。このビットの数が多いほど、一度に表現できる数が多いということになる。それで64ビットは32ビットより優秀であるという理屈になる。よくインターネットのスピードに使われる 20M bpsというのは、20,000,000 bit per secondのことで、1秒間に2千万回のビット情報が送れるということである。

バイト:ビットとの関係式があり、1バイト=8ビットである。上で説明したように8ビットあれば256通りの区別を付けることができる。英語のアルファベットは、小文字26文字、大文字26文字、それに加え数字やいろんな記号を加えても256の枠があればコーディング(枠に当てはめる)できることから、1バイトは英語などアルファベットの入れ物を造るときに必要とされる枠の単位いということになる。日本語、中国語は漢字を含むため、256通りでは足りず、2バイトすなわち65,536通りの枠が必要になる。RAMが4GBという意味は、40億のアルファベット文字を入れる能力があるという意味で、ハードディスクが1TBという意味は、1兆文字を入れる能力があるという意味である。本一冊を4百万文字とすると、1TBのハードディスクには、25万冊の本が入ることになる。

第152話:30年後

2015年10月21日午後4時29分。もう過ぎてしまったが、あちらこちらで記念のイベントが開かれた。そうバック・トゥー・ザ・フューチャー、パート2でマーティ―とドクがタイムマシン、デロリアン号にのって過去からやってきた日だ。映画では1985年から2015年にタイムスリップしてやってきた設定なので30年後、映画を作成した1989年からしても26年以上前で、その時に2015年はどうなっているかという予測を立てて映画を作っている。もちろん映画用にかなり誇張されており、正確に予測を立てているとは思えないが、ひいき目にみるとかなり当たっている。

まずは現在の方が遅れているもの、空飛ぶ車:空中のあちらこちらに空飛ぶ車が走っていたが、でもこの予想はまったくのでたらめでもなく、アメリカのベンチャー企業がすでに空飛ぶ車の試作車を作成しており、試験飛行であるが実際に空を飛んでいる。ホバーボード:空中を飛ぶスケートボードはまだ実用化されていないが。実験段階ではリニアモーターカーの原理を応用したものがあり、トヨタ、レクサスのCMでみることができる。これから言うと空中を自由に飛ぶには30年ではまだまだ短かすぎるようだ。

あと、当たらずしも遠からずで、かなり実現されているものや、逆に現在の方が先に進んでしまったものもある。映画ではレーザーディスクがスクラップで捨てられていたが、レーザーディスクは10年以上前に、DVDやブルーレイに取って代わられ今ではスクラップさえ見ることができない。ビデオ会議や壁掛けタイプのスクリーン、マルチチャンネルのスクリーンはすでに当たり前にあり、昔のCRT(ブラウン管型)テレビを想い出すのも難しいくらいだ。我々は慣れてしまうとそのことが当たり前のように思い、昔からLED薄型TVやモニターがあったように勘違いしているが、考えたら30年前にはまだ跡形もなかったのだ。

タブレット型コンピュータにおいては、スマートフォンも含めると一人一台と言ってよいほどの普及率だ。リモコンを使わないでするゲームもすでにいろいろある。メガネ型のコミュニケーションツールもグーグルグラスに代表されるようにすでに存在している。映画館の看板のジョーズが飛び出したように見える3D映像に関しては、惜しいことにまだメガネを使わないと見られないが、メガネなし3D映像も最近かなり研究されていて実用が近いようだ。

ナイキの自動紐結びシューズに至っては市販はされていないが、数年前に開発され、この30周年を記念にわざわざナイキが作ってパーキンソン病によって自分で紐を結ぶのが不自由になったマイケルJ. フォックスに贈っている。あと余談であるが、シカゴ・カブズは残念ながら今年もワールドシリーズを制覇することはできなかった。これだけは、はずしたようだ。スピルバーグの予想は当たったのか、はたまたはずれたのかそれぞれの方の判断に任せる。

このように未来に対する予測を立てて数年後にその結果をみるというのはとてもエキサイティングなことだ。私が子供のころに書かれた鉄腕アトムの誕生もすでに過ぎてしまったが、アトムでいうと手塚治虫さんの想像力の方が現在よりも先にいった感じだ。また、これと類似したこととして、1970年に大阪で万国博覧会があったとき、タイムカプセルに当時のいろんなものを埋めて、未来に届けるというのがあった。これが流行ってボクの中学校でもなにかタイムカプセルを作って未来の自分に届けるようなにか埋めたような気がするのだが、さて何を埋めたか、まだあるのかどうかもわからない。でも自分自身を時間軸で眺めるということは、記憶の不思議というか、なにかとてもわくわくすることだ。まあそれはそれ、過去は過去。それよりこれから30年先の予想をたててみてはいかがであろう。私はITが専門なのでITの30年後ということで考えてみると、おそらく人間の脳の仕組を真似たコンピュータシステムがかなりいいところまで行っているのではないかと予想する。つまり心を持ったコンピュータが生まれているかも知れないということだ。当たるかな?でも30年後は死んでいるかも知れないけど。

第151話:1つの機械でアップルとウィンドウズ

Windows VISAやWindows 7で、XPモードというのがあったのを覚えているだろうか。これはWindows XPで動いていたアプリケーションやプリンターなどの周辺機器の一部がVISTAや7で動作しなくなったのを受けてマイクロソフトが付け加えたソフトである。Windows VISTAや7のメニューに組み込まれているXPモードをクリックするとWindows XPのデスクトップを持ったウィンドウが開いてそのままXP搭載のPCとして使用できるというものである。

このXPモードが出て来た背景としては、開発者であるマイクロソフトはWindowsのバージョンアップの度に互換性の問題に悩まされてきたということがある。バージョンアップはその時代時代の最先端の技術を取り入れて、顧客に大きな驚きと感動を与え、さらなる顧客の獲得を目指す大事なステップだ。同時に従来の顧客が喜んでバージョンアップし他社のソフトに移行しないよう注意を払う必要があり、新旧バージョンの互換性がとても大事になってくる。Windows XPまでは、その前のバージョンの互換性をなんとか踏襲してきたが、VISTAになってついに「互換性のないものは、VISTAの中でXPをそのまま開けるようにするからXPでやって」ということになってしまった。それがXPモードである。要するにメーカは新旧バージョンの完全互換性を放棄して、ユーザーはVISTAからXPを呼び出して使えるようになったという意味である。これと同じようなことが実は同時期のアップルのi-Macでもあり、こちらの場合はもっと大胆で、i-MacからWindows XPやVISTAを呼び出し、アップルマシンでWindowsが使えるということで話題になった。

これらの技術をもっと一般的な形で押し広げると、バーチャル・サーバーとかバーチャル・PCというものになる。そして、この仮想機械を実現する技術を一般的にハイパーバイザと呼んでいる(詳しく言うとさらにベアメタル型とホスト型にさらに分かれるが専門的になり過ぎるため省略する)つまり一つの機械のなかで、Windowsサーバーやリナックスサーバーなどが同時に複数動作する環境を作れる。ただサーバーが複数に存在する環境を作れると言っても一般ユーザーにはピンとこないかも知れない。一般のユーザーに馴染み易い使い方としては、たとえばアップルのMacBookの中で、Windows7、Windows10やアンドロイドなどのクライアント用OSを複数インストールしてどんな環境にも対応できるようにするということが可能になるということだ。

このハイパーバイザソフトで有名なものとして、VMware社のVMware、マイクロソフト社のHyper-V、オラクル社のVirtualBoxなどがある。有料バージョンと無料バージョンがある。無料バージョンは有料に比べていろいろ制限が付いている場合が多い。このハイパーバイザ製品を使う利点としては、複数のOS環境を1台のPCで使用できるということに加えてOS環境のまるごとバックアップが可能になったことだ。1つ1つの仮想OS環境イメージをバックアップ保存しておくと、万が一機械が壊れた時でも、別の機械にそのハイパーバイザ―製品をインストールすれば、リストアしてすぐに使用できる。一方、物理的な機械が同じでも仮想で異なる機械として認識されているために、すべての仮想機械のデーターバックアップを取るためには、たとえばバックアップしたい全ての仮想環境にあるデーターをWindowsサーバーに集めるようにプログラミングしておく必要がある。

あと問題としては、今のところ、一般の人がハイパーバイザ製品を扱うには少々難しいところがあり、設定、コンフィグレーションにITの知識が必要で、トラブルが起こったときは自分たちだけで解決できないという欠点があり、バーチャルソフトをよく知っている技術者に修理を任せなければならないということで、結果メンテナンスにお金がかかるかも知れない。

第150話:Windows 10で大きく変わったのか?

Windows10が発売されてから1カ月以上経った。前回にも言ったがWindows 10はまだアップグレード版のみが先行しており、Windows 10を最初から組み込んだ新製品は出ていない。おそらく最初のWindows 10組み込み製品として出てくるであろうマイクロソフト製のサーフェイス4は10月ころに発売されるという噂が流れているが、詳しい仕様はまだ発表されていない。今回アップグレードは無料ということで、マイクロソフト社はWindows 10に切り替えるように大々的に宣伝しているが、まだ多くの人が躊躇しており、特にビジネスユーザーはほとんどが様子見状態である。その理由は、現状で使えている機能、アプリケーション・ソフト、プリンタなどの周辺機器が使えなくなったらどうしようとか心配したり、今特に困ったことがないのでわざわざアップグレードする必要もないのではないかという消極的な気持ちがあると思う。

もうひとつの理由として、Windows 10で非常に素晴らしくなったポイント、大きく改善されたポイントが今一つわからないので積極的な気持ちになれないということもあるだろう。つまりユーザーは多少のリスクがあったとしてもそれに余りある恩恵があればアップグレードを考えると思う。ではその余りある恩恵とはなんであろう?Windows 8でなくなったスタートメニューを復活させたり(8.1で、すでにそうなっていたが.)、初期画面をタイルメニューからデスクトップに変えたくらいではそんなにすごいことだとは思われない。単にWindows 7に戻ったんだなあくらいの感覚である。そんな中、私も余りある恩恵を捜してWindows 7からWindows 10にアップグレードしてこの1カ月ビジネスを中心に使ってみた。

ビジネス用としてキーボードとマウスで使いやすいという意味では、8や8.1より数段よくなった。ただ7と比べて使い易いかと言われれば、7に慣れているということもあり、7よりも断然使い易くなったとは言い難い。あと標準ブラウザがインターネット・エクスプローラからマイクロソフト・エッジに変わったが、これもどちらかというとタブレットユーザーにはかなり恩恵であるが、ビジネスユーザーにはあまりピンとこない。エッジは複数のウィンドウで開けないことからむしろ不便を感じる。タスクビューという、現在デスクトップにオープンしているすべてのアプリケーション・ウィンドウを一画面に縮小して並べて見せるというのがあるが、便利ではあるが、これがあるからアップグレードしたいというまでには至らない。なにか他にないのか?

非常に地味だが、とても重要な大改善が見つかった。以前ウィンドウズのバージョンは2種類あると書いたことがあるが覚えているだろうか?一つは、ウィンドウズの商品名。例えば、XP、VISTA、7、8、8.1、10という流れがそうだ。もう一つは、内部バージョンと呼ばれる純粋に技術的なバージョンで、例えば、XPであれば5.1、VISTAは6.0、7は6.1、8は6.2、8.1は6.3というように商品名とは別に技術的な基準で振られるバージョン。今回の商品Windows 10は、途中まで6.4だとされていたのが、どういう経緯か内部バージョンも10.0にした。

通常内部バージョンは技術者がその改訂状況から付けるバージョンで、普通の人は知らなくてよいものであり、それだけに商品名とは異なり市場の受けを狙った戦略的なバージョン・ネーミングやハッタリとは無縁のものであった。商品名であるWindows10は、大きな変更がなければ内部バージョンは6.4になり、大きな変更があれば7.0になると思われていた。ところが今回はWindows 10という商品ネーミングが出て来たときに、同時に内部バージョンも10.0にすると発表した。これは今までの内部バージョンの規則からいうとかなり異常だ。

なにが変わったから内部バージョンが大きく変わったのか。今回はカーネルという一般の方には馴染みがないOSの基本的なプログラムのアーキテクチャーを大きく変えた。このカーネルは何をしているのかというと、コンピューターのハードウェアとソフトウェアの受け渡しに関係する基本的な出し入れを制御するところであり、ここを大幅に変更したということのメリットとして考えられるのは、デスクトップPC、ノートパソコン、タブレット、スマートフォンと多彩化するハードに対して1つの統一されたカーネルで最適化制御を可能にし、従ってあらゆるハードウェアに対しての処理速度を向上させるというものである。

私のPCも古いPCだったが幾分アクセスがWindows 7よりよくなったように感じる。逆にデメリットとしては、カーネルというOSソフトの核を変更したことによって、バグが次々と出てきて今まで使っていたハードやソフトが動かなくなるという事故が起こる可能性が高くなる。身近な例でいうと、プリンタメーカーは、新しいカーネルに対応したプリンタ・ドライバーを開発する必要があり、しばらくはバグとの戦いになるかも知れない。

第149話:Windows 10発売開始

Windows10が7月29日に一斉にリリースされた。と言っても過去にあったように秋葉原の電器店に深夜長蛇の列ができることはなく、お祭り騒ぎをすることもない、マイクロソフトが「史上最高のWindowsを手に入れましょう」と事前に宣伝していた割には今までの中で一番静かなスタートだったように思う。オーストラリアに住む日本人何人かに聞いてみたところほとんどの人はWindows10が出たことも知らなかった。

それには訳がある。今回のWindows10のリリースのメインは、アップグレードなのだ。「史上最高のWindowsを手に入れましょう」の後には別のキャッチフレーズがあり、「史上最大のアップグレード作戦」と言われている。これはどういうものかというと、現在Windows7 SP1(サービスパック1)とWindows8.1を使用している人であれば(Windows8を使用している人は先に8.1にアップグレード(無償)する必要がある)誰でも無償でWindows10にアップグレードできるというものだ。

例としてWindows7を使用している人であれば、一番下にあるツールバーの右側に漢字の「田」のようなマークが知らない間にできており、それをクリックすれば無償アップグレードができる仕組みだ。アップグレード時に心配なのは、今まで使っていたアプリケーションが使えなくなるのではとか、データを失ったらどうしようという心配がある。マイクロソフトによるとアプリケーションやデータはアップグレード後もそのまま使用でき、もし対応できないアプリケーションがあった場合は、アップグレード前にソフトがチェックしてお知らせしてくれるということだ。まあ念のためにデータだけはバックアップを取っておくことをお薦めする。

史上最高と自画自賛のWindows10の新機能であるが、発売以前から何度も言われているように、また私も何度か本誌や別の記事に書いたように、最大の特徴はWidows8によってタブレット側に舵をきり過ぎたメニューをあらため(多くのサイトでは、Windows8を失敗作と言いきっている)、Windows7で使っていたスタートメニューを復活し、タブレットメニューとの親和性を強化したことにある。いわばマウス、キーボードしか使わないビジネス仕様のユーザーにWindow7の機能を拡張し、より便利にした最高のビジネス環境を提供し、同時にタブレットとして使用したい個人ユーザーに対してもWindows8.1で使いにくかった箇所を改良してタブレットとしても最高の環境を提供しようというものである。その並々ならぬ意気込みを示し、多くの人に使ってもらうために、またライバルであるアップルのiPadやMac Book、Googleのアンドロイドにマーケットを持っていかれないためにもWindows8.1から9を跳びこして10にしたという(多少はったりとも取れる)経緯がある。

私はまだWindows10の製品版のテストをしていないが、その直前までのベーター版と呼ばれる試用版をノートブックに組み込んでテストしていた。印象としては驚くような新機能はないが、Windows7と8.1のユーザーが文句を言っていた不具合や不便なところをうまく調整していると思う。またWindows10のベーター版を組み込んだ私のノートPCはかなり古いものであったが、Windows7やWindows8.1で動かしていたときと比べ、スピードが速くなったように感じる。マイクロソフトによると今回のWindows10でOS(基本ソフト)の中核となるカーネルというソフト部分を変更したということで、これは実はWindows VISAから7、8、8.1まで大きな変更がなかったものであるが、今回は車でいうメジャーチェンジをしたということで、まんざらはったりでもないようだ。このカーネルの変更がスピードアップにつながっているのではないかと思われる。

第148話:シリアルとパラレル

この2つの言葉はどこかで聞かれたことはあると思う。英語でSerial。 Serial number、serial code、また変わったところでは、serial murder(連続殺人)などがある。パラレルは英語でParallel。Parallel cable、parallel parking、SFに出てくるparallel worldなど。ITで言うシリアルは簡単に言ってしまうと情報が直線的に1つずつ順番に流れてくる状態であり、パラレルはいくつかの線が平行して、同時に情報が流れてくるものである。

USBケールブルがない時代、PCと周辺機器をつなぐのにシリアルケーブルとパラレルケーブルが用いられていた。それぞれに特徴があり、たとえばモデムなどの通信機器はシリアルケーブルで、プリンターなどの印刷機器はパラレルケーブルを使っていた。パラレルでは情報を同時に送る線が複数あるので、送れる情報がその分多くなるというように考えがちだ。そしてきっと将来は情報量の多いパラレルが主流になるだろうと。しかし現実は逆で、最近のインターフェースはほとんどがシリアルになってきている。現在PCと周辺機器をつなぐインターフェースの主流であるUSBはUniversal Serial Busの略で、これもシリアル・インターフェースの一種である。

シリアルでは先に述べたように情報を1つ1つ順番に送り出しているのでとても遅いように思われるが、最近の光通信は100 Mbpsが可能で、つまり1秒間に1億回の情報を送り出すことができる。1秒間に1億回のスピードで送り出されていたら誰も遅いとはいわないだろう。このようにシリアルは一度に1つ1つしか情報を送れないという欠点を超高速通信で克服しているのだ。それに対しパラレルは高速になればなるほど平行に走っている線同士の同期(シンクロナイゼーション)がうまくできなくなる問題がでてくる。つまり技術的に複数の線の同期の調整を取るより、1本の線の通信速度を上げる方が簡単なのだ。

さてシリアルは通信に限ったことではない。ノイマン型と言われる我々が日々使っているコンピュータの仕組みもシリアルなのだ。よくCPUが30 GHzとか聞いたことがあると思うが、この30 GHzという意味は1秒間に300億回の情報を送る力があるということである。この1秒間に何回情報を送れるかという能力が現在のコンピュータの最も大事な仕様であり、各メーカーがしのぎを削って競争しているところでもある。

コンピュータの父と呼ばれるアラン・チューリングを前々回ご紹介したが、彼の考えたコンピュータの設計図(後にノイマンが改良し、ノイマン型と呼ばれるが)は、ある意味で万能機械で、数値化できるものならどのようなものも基本的にはこの機械で解けるとした。

たとえば人間の脳の働きと同じものを作ることも理論的には可能だと言われていて、実際に人間の脳を真似た人工知能プログラムがたくさんできている。ところが、コンピュータの計算能力は人間とは比べ物にならないくらい速くなっているのに、不思議と人間の脳の活動を完璧にシミュレーションできるものが未だにできていない。専門家に言わすとまだまだ今のコンピュータでは速度が遅いと言うのだ。どういうことなのか。

それは人間の脳の仕組みにある。脳の仕組みは実はシリアルではなく、どちらかというとパラレルで、詳しくはパラレルというよりも網の目のように張り巡らされたインターネットのようなネットワークと言った方が正しいかもしれない。

一千億個あるニューロン(脳の神経細胞)の1つ1つが複数のニューロンと手を繋いでおり、さらにそれらが複数のニューロンと繋いでいるといった具合で蜘蛛の巣のようにどんどん繋がっている。

シリアルのように直線的に繋がっていないために、1個のニューロンが10個の別のニューロンと手を繋いでいると仮定しても、それら10個がそれぞれ次の10個と手を繋いでいくというように繋いでいけば遠からず天文学的な数字になるというのは納得いただけると思う。

現在のコンピュータをもってしてもこのような大きな数字を扱うのは不可能であり、今後も難しいと思われる。と言う訳で、シリアルが我が物顔で歩く現在のコンピュータシステムも人間の脳の領域に入ろうとすると、パラレルやそれに類するネットワーキングへのパラダイムシフトが必要になる。

第147話:ロボット、サイボーグ、アンドロイド

鉄腕アトムやサイボーグ009などで育った私は、ロボットはすべて機械でできていて、サイボーグは、脳は人間のもので、それ以外のパーツは機械になっているもの。そしてアンドロイドはサイボーグの逆で脳を機械にしてそれ以外のパーツは人間のものを使うとしていたように記憶していた。以上の定義は私が子供のころ、友達と話していて自然に自分の中で作られた定義であるが、今から思うとかなり間違っていた。現在ではロボット、サイボーグ、アンドロイドが現実の社会に登場しているので、さて実際の定義はどうなっているのかウィキペディアなどを使って調べてみた。

この中ではロボットという言葉が一番有名であるが、1920年にチェコスロバキアの小説家カレル・チャベックが発表した戯曲のなかで初めて用いられたのが起源だ。Robotの語源はチェコ語で強制労働を意味する robotaから由来している。つまり人間の代わりに使役するもの、奴隷の代わりになるものということになろうか。そしてなんといってもロボットを今のような機械人間として定着させたのは、科学者でSF作家として有名なアイザック・アシモフである。1950年に出版された初期の短編集「われはロボット」では、ロボットの倫理規則であるロボット工学3原則(人間への安全性、命令への服従、自己防衛)が唱えられていた。この3原則はその後SFでのロボット作品の憲法のようなものになり、鉄腕アトムで出てくるロボット法もこの3原則を延長したものだ。現在ロボットと呼ばれるものは、必ずしも人間の形をしていない。産業用ロボットと呼ばれる人間の形はしていないが、人間のように複雑な仕事をある自分でできるものまで幅広くロボットと呼ばれていてはっきりした定義はないように思える。

サイボーグは1960年にアメリカの医学者、マンフレッド・クラインズとネイザン・S・クラインらが提唱した。人類が宇宙に進出したり、過酷な状況下で働いたりできるように人間のパーツを人体強化目的で人工物に変えた人やその技術のことを意味する。サイボーグ=改造人間という言い方が倫理的によいのかどうかは別として、すべてのパーツを人工物にするとロボットで、一部だとサイボーグということになると思う。現在では、たとえば義手、義足、人工臓器、ペースメーカにいたる人間に埋め込む医療機器の技術をサイボーグ技術と呼んでいる。また医療以外にもサイボーグ技術は発展してきており、介護人が患者を持ちあげたり、重い荷物をもちあげたりするときに使用するパワードスーツもサイボーグ技術と呼ばれている。(ロボット技術と呼ぶ人もいて区別ははっきりしていない)また最近は軍事用にサイボーグ技術を用いようとする試みもあり、原子力と同じようにその倫理性が懸念されている。

アンドロイドは、最近ではGoogle製のスマートフォン用OSを思い浮かべる人が多いが、このアンドロイドという言葉はGoogleがネーミングする前からあり歴史は古く、最初にアンドロイドという言葉が使われたのは1886年にフランスで出版された「未来のイブ」である。Androidという単語は元々ギリシャ語のandro(人、男性の)oid(ようなもの)の組み合わせで、日本語では長く「人造人間」と訳されてきた。ロボットとの区別は、ロボットが産業用など人間の形をしていないものもロボットと呼ばれるのに対して、アンドロイドは人間の形をしたものだけをそう呼んでいる。それでいうとヒューマノイド・ロボットという呼び方と実際は変わらないように思える。サイボーグとの違いは、サイボーグは人間が主体であるのに対して、アンドロイドは人間に似ているがすべてが人工物でできているものを指す。日本のアンドロイド技術は世界でも有名で、遠目に人と間違うような美人アンドロイドが、デパートの受付嬢を務めて…

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