ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

前回からの続きであるが。実際の文を翻訳してみて機械翻訳がどこまで使えるのか、実力を検証してみようと思う。先ず契約書の一部を抜粋して、それぞれ英日と日英の例文で代表的なフリー翻訳ソフトであるGoogle Translateを使用した。

 

 

契約書例、英語原文 日本語翻訳 by Google Translate
All property, including but not limited to documents and copies thereof created by the Contractor under this Agreement, or which came into the possession of the Contractor pursuant to the performance of the Services, are the property of the Principal. All such property must be returned to the Principal immediately upon termination of this Agreement. 本契約に基づいて請負業者が作成した、またはサービスの履行に従って請負業者が所有した文書およびそのコピーを含むがこれらに限定されないすべての資産は、本人の所有物です。 このような資産はすべて、本契約の終了後ただちに本人に返還されなければなりません。

上記英日の翻訳に関して、ロジックに間違いはないように思われるが、長いセンテンスのため日本語訳がぎごちなくなっている。また、日本の契約書には「になる、である」がよく使われるのに対して、翻訳は「です、ます」調になっており、そこを修正する必要がある。

 

 

 

契約書例、日本語原文 英語翻訳 by Google Translate
乙は、特定個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を情報主体に通知し、又は公表しなければならない。この場合において、「通知」の方法については、原則として書面(電子的方式、磁気的方式、その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録を含む。以下同じ。)によることとする。 When you acquire specific personal information, you must promptly notify the information subject or publicize the purpose of use, unless you have announced the purpose of use in advance. In this case, the method of “notification” shall be, in principle, in writing (including records made by electronic method, magnetic method, or other methods that cannot be recognized by human perception. The same shall apply hereinafter). And.

上記日英も大きな問題はないように思われるが、日本の契約書でよく使われる「乙」という当事者の表記がYouになっている。事前に「乙」は誰という定義が今回は省かれているので、もしかすると事前に定義すれば翻訳も変わってくるかも知れない。
括弧()を含む文章も翻訳しているが、前後の文章との結び付きが、英文としてぎごちなくなっている。

以上は短い例文なので、機械翻訳で起こるところのごく一部の問題点しか見えないのであるが。これを見ただけでもある程度のことは言えると思う。

*契約書関係において、英文にしろ、日本文にしろ、原文一つ一つのセンテンスが短い程翻訳の精度が上がる。これは翻訳に限られないことであるが、最近は長文を避け、短いセンテンスで分かりやすく文章を書くことが求められている。
*原文が長くて機械翻訳がうまくできない場合、原文を短く切って翻訳し、後から繋ぎ合わせるという裏技がある
*英日翻訳に対して、日本語の文体に気を付ける。契約書の場合は通常の日本語と異なり、特殊な文体が使われているので契約書用日本語を学ぶ必要がある
*日英翻訳に対して言えることであるが、日本語は主語が省略されていたり、特殊な記号で表されていたりするので、翻訳後、主語がどう表されているかチェックする必要がある。日本語原文に主語を足してから機械翻訳すると翻訳精度が上がるという裏技もある
*あと、機械翻訳がうまくできない、誤訳が生じるという問題が起こった場合。必ずしも機械翻訳のせいではないことが多い。 原文のセンテンスが長すぎたり、関係代名詞を多用していたり、括弧を多用していたりしないか? 主語を省略していないか?
つまり原文そのものの問題であることも加味する必要があり、その場合は原文を修正するということも考えに入れる必要があると思う。

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