幼い子どもはピュアで嘘などつかないように見えますが、意外にもちょこちょこと嘘をつくのが普通です。ですから、まずは子どもの嘘に親がショックを受けないようにしてください。嘘と言っても、一つには、本当に子どもらしく、実害のまったくない嘘があります。それは、想像と現実とが混同して無自覚に口にする罪のない嘘です。もう一つは、自分のミスを隠したいときや、自分をよく見せたいときにつく嘘です。作り話と言ってもよいでしょう。そして、後者の嘘に限っては、子どもの性格に影響するものですから、親の導きが必要になります。
子どもが嘘をついたとき、親がショックを受けないようにというのは、そのときの親の気持ちが、子どもへの冷たい言葉につながることが多いからです。「嘘をつくなんてどうしようもない子ね」「嘘をつく子はうちの子じゃありません」など、子どもにしてみれば、全人格を否定され、大好きな親に見放されたように感じる台詞です。しかし、嘘をついた子どもに必要なのは、親からの批判ではないはずです。このときに大切なことは、子どもの気持ちに耳を傾け、嘘がなぜいけないかを理解させることです。もちろん、みなさん、そうされるでしょうが、その前に批判をしてしまったら、もうその後の指導に効果はありません。親が感情的になって批判してしまうと、子どもは親から信頼されることをあきらめ、嘘を重ねるようになってしまいます。
日ごろから、子どもへの信頼を示し、気持ちに寄り添える親であるためには、子どもが失敗したときなどに、隠さず正直に言えた時、しっかりほめることを心がけてください。隠し事を叱り、そのあと、なんとか聞き出すことができたとき、「次からは正直に言いなさい」など、終始叱責だけになってしまいがちですので、注意が必要です。子ども自身、嘘をついたことに後ろめたさを感じているものです。その気持ちに寄り添い、子どもへの信頼を示しましょう。
そして、最も大事なことは、親自身が子どもにお手本を見せることです。子どもとの約束は必ず守りましょう。「約束しようね」と約束をし、親も子も約束を守るということをしていると、約束を破らない、誠実な子が育ちます。しかし、たとえば、「あとで一緒に遊んであげるから、ちょっと待ってて」と言って結局あとになっても遊んでやらなければ、子どもも約束を守らなくなります。また、父親が「6時に帰るよ」と言って、6時を過ぎても帰ってこないというようなとき、「お仕事だから仕方ないのよ」と言い訳するのもよくありません。子どもには一方的に約束を守らせておいて、親が約束を破るのは仕方ないとなったら、子どもは感情的な部分で納得できず、その結果、心が歪んできます。これは決して大げさな話ではありません。
まずは、親である自分自身が、嘘をついたり、約束を破ったりすると、心が汚れるということを、ちゃんとわかっているかどうかを自問自答してみてください。一度ではなく、朝昼晩、いつでも尋ねるように習慣づけておくとよいでしょう。外では約束を守るけれども、家人との約束は破っても大して困らないからと約束を差別化する人は、大分汚れてしまっています。大人でも、むしろ、大人だからこそ、ついうっかりと大切なことをないがしろにしてしまうことがあるものです。しかし、親の心が汚れていると、育てられる子どもの心も間違いなく汚れてしまいます。大事なのは、親がきれいでいることなのです。

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