ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

今回は難しいテーマに挑戦した。私は精神科医ではないので、発達障害に関してプロの見識は持っていない。しかし、IT業界に長く身を置いていることで、多くの発達障害を抱えながら仕事をしている人たちを見て来た。

半世紀前は、障害を抱えた人を積極的に雇う企業がなかったために、政府や自治体が障害者枠を設定して企業に割り当てたり、企業に色々なインセンティブを与えて半強制的に雇わせていた。ただその場合の障害者というのは、重度の障害を持った人に限られている場合が多かった。遅刻常習犯、締め切りが守れない、喋り出したら止まらない、逆に一切喋らないなど、軽度と思える障害に関しては特別枠はなかったし、それを発達障害だとそのころは誰も思っていなかった。

ITが盛んになる前は、発達障害者が優位に立てる職種がほとんどなかった。ITが世の中に広まって来て、通常の教育を受けた一般人が、コンピュータの訓練を受けただけでは務まらない職種が現れ始めた。プログラミング、グラフィックス、データ・アナリストなど、訓練の前に才能がまず必要である分野。向いている、向いていない、がはっきり表れる分野が出てきた。

ここに発達障害と言われた人たちの活躍の場が現れた。例えば、遅刻はするし、時間は守らないが誰にもできないようなグラフィック・デザインができる。日常の会話はほとんどないにも関わらず、ゲームを作らせたら何日も徹夜してすばらしい作品を作る。ただ、企業にとって問題になるのは、これらの人々を通常の規則、通常の職務規定で縛る訳にはいかないことだ。企業側にもかなりフレキシブルな対応が必要であり、彼らを殺すのではなく、活かす方法を考えないといけない。

オーストラリアでは、そもそも発達障害という名称で一括りにしないで、個々の症状に応じて、またその人の症状の重軽度に応じて柔軟に対応する場合が多いように見受けられる。例えば、軽度のADHDの人は、自らADHDであると宣言する人が多くいる。宣言しても差別されることがないからであろう。

海外のIT企業は、元々オタク的雰囲気を持ったCEOが経営している場合が多い。CEO自身が普通ではない企業が多いと思うのは私だけだろうか。だが日本に関しては、海外と比べて私の知る限り、特別扱いをしてくれる企業はまだまだ少ない。

各発達障害の特性を考慮して、それぞれがIT業界の特定の職種に適している可能性をChatGPTに聞いてみた。以下は、ChatGPTが回答した各障害を持つ人が向いていると考えられるIT職種の例である:

1. 注意欠如・多動性障害(ADHD):
• プロジェクトマネージャー: 多動性を活かして複数のタスクを同時に管理し、短期間の集中が必要な状況で活躍できます。
• ソフトウェア開発: 短期間の集中が求められ、創造性が重視されるプロジェクトに適しています。
2. 自閉症スペクトラム障害(ASD):
• ソフトウェアテスター: 細部に対する高い集中力と精度を要求される仕事で、繰り返しの作業にも強いです。
• データアナリスト: パターンを見つける能力や複雑な情報を処理するスキルが活かせます。
3. 学習障害(LD):
• ユーザーインターフェース(UI)デザイナー: 視覚的スキルを活かし、読み書きの困難を補います。
• ビデオ・マルチメディアプロデューサー: 視覚や聴覚に訴えるコンテンツの制作に向いています。
4. 発達性協調運動障害(DCD):
• システムアナリスト: コンピューターシステム全体の設計や分析に関わり、細かい物理的操作が少ない職種です。
• ITサポートスペシャリスト: コミュニケーション能力を活かし、技術的な問題の解決をサポートします。
5. 言語発達障害:
• データベース管理: 言語能力よりも論理的思考や組織化能力が求められる職種です。
• ネットワーク管理: 技術的なスキルと問題解決能力が中心となります。
6. 知的障害:
• データエントリー: シンプルなタスクで繰り返し作業に適しており、明確な指示に従うことができます。
• ITメンテナンスアシスタント: 基本的なメンテナンス作業や、監督の下でのサポート業務に適しています。

これらの提案は一般的なガイドラインに過ぎず、個々の能力、興味、経験に応じて適切な職種は異なります。また、適切なサポート、トレーニング、適応があれば、多くの発達障害を持つ人々が幅広い職種で成功できる可能性があります。 

 

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