ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

新年あけましておめでとうございます。

企業はそもそもその成り立ちからして、利益をあげなければ成立しない。すべての商売がそうであるが、時代が変わるに連れて社会の変化、環境の変化があり次第に昔ながらのやり方で商売ができなくなってくる。そこにその時代に合った技術、アイデアが出てくるのだ。しかし、時代に合わなくなったものを捨て、時代に合ったやり方を導入する指標は、技術やアイデアではなく、経済効果である。

私がITをスタートした80年代。まだITに関してどんなものかわからなかった企業にIT機器、ソフトを売り込む最大の謳い文句は、経済効果だった。このPCとこのソフトを導入すると、仕事の効率が上がり、新たな顧客も獲得でき、人員も削減でき、2年以内に投資が回収できるという殺し文句で次々と仕事を取った。

この経済効果を軸にしたITの売り込みは世界中で今日まで続いている。企業への売り込みだけではない。プログラミングを例に挙げると、何のためにプログラムを作るのか考えたことがあるだろうか。今まで手作業でやってきた仕事をコンピュータにさせる究極の理由は、正に経済効果、もっと具体的には人員削減が主な理由だ。優秀なプログラムというのは、できる限り人の手を経ず、自動でなんでも処理してしまうもの。逆にだめなプログラミングは人手を介さないと成り立たないものだ。

例えば、オンラインショッピングを例に取ると、商品を選んでカートに入れ、注文する。その後、決済段階になって電話をする必要があったり、顧客を不安にさせカスタマーサポートに問い合わせが必要になるシステムはよくないシステムだ。最初から最後まで人の手を介さないシステムだと無人なので24時間365日活用でき、メンテナンス以外の人的費用が発生しないことだ。しかもメンテナンスさえしっかりやっておれば、病気で休んだり、休暇を取ったりして代わりの人を見つける必要もない。プログラマーは、出来る限り人手を介さないシステムを作ることを使命としている。

今流行のAI(人工知能)も例外ではない。AIを使うことによって人が一々調べながらやっていた仕事がなくなり、経済効果が上がる。だが、銀行員の仕事を奪うとか、オフィースワーカーから仕事を奪うとか言って騒がれている。AIに限ったことではなく、考えれば考える程ITも他のビジネスと同じく人員削減を中心に置いた経済効果を軸として動いていることが分かる。

もちろん世の中のすべてのことが経済効果だけで回っているのではない。最近は環境問題、人権問題、雇用問題、個人の幸せ追及というような要素が経済よりも上にあると考える人が増えている。「人はパンのみにて生きるにあらず」だ。だが具体的にどうすればいいのだろう。

遠くない未来、人がやっていた仕事をAIが肩代わりしたとき、AIによって生じた利益はどのように人々に分配されるのであろうか? AIに資金を提供した人が利益を独り占めするのか。それとも株主制度のようなものを作って、投資額に応じて配当を受け取るのか。大幅に課税して失業者に分配する制度を作るのか。いずれにしても新たな経済システムが必要な時代になったと考える。

 

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