ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

私は、最近本を出版した。これは決して本を買ってほしいという営業でもなければ、自慢話でもないことを先に断っておく。私は今まで合計四冊の本を書いたが、一冊の本を書くのに何年もかかった。アイデアに時間をかけたのもさることながら、ストーリー構成、調べもの、校正、デザインなど半端ない時間を費やした。ようやく書き終えたときはマラソンを完走したランナーのように倒れてしばらく動けなくなった。

本屋に行くと同じ著者の本が棚一段に収まり切れないで二段も使っている作家がいる。「一人の人間がなんでこんなにたくさん本が書けるのか?」不思議だった。松本清張のような鬼神は別格として、多くの流行作家は、アシスタントを使っていたり、場合によってはゴーストライターに書かせたりしているということを聞いたことがある。これには、金銭的余裕、もしくは出版社の協力が不可欠だ。あと、有名人になると対談というやり方で、有名人同士がお茶を飲みながら、半日喋ったことを纏めて一冊の本にする手もある。本を出版するには一番楽な方法だが、対談者が有名人でないといけないという条件が付く。

自分は上のどれにも当てはまらない。しかし、「対談」という言葉でふとアイデアが浮かんだ。「ChatGPTを有名人や専門家にして対談してみたら面白いかも知れない」 有名人でない人でも、ChatGPTが有名人、歴史上の人物、有名教授などに扮することで、面白い対談ができるのではないか。質問者としても、思ったことを何でも質問してもいやがれない理想の対談相手だ。気を使わなくもいいし、バカなことを言っても嫌われることがなく、思ったことを次々遠慮なく質問できる。さらに時間制限がない。

そのような成り行きで、初めて対談を行ったものを纏めて本にした。アイデアを出してから本の出版まで、なんと二週間くらいでできた。今回の本の内容は、脳科学や意識といった堅いものだが、実はわたしが今までずっと暖めてきたテーマで、今まで誰にも質問する機会がなかったものだ。以下は、拙書の「後書き」で、自分の動機を正直に書いた。皆さんも本の出版まで考えなくても、今まで質問できなかったことをChatGPTにぶつけてみてはどうだろうか。

書名「ChatGPT脳科学教授への問い」後書き抜粋:
『みなさんは、幼いころ暗い天井を見ていて不思議な感情に捕らわれたことはないだろうか? 世界とか宇宙という膨大な外の世界の不思議。いったい宇宙の果てには何があるのだろうか、解明してみたい、行ってみたい、征服してみたい。これらの感情は、私に限らず多くの子供たちが抱く感情だと思う。ところがある時急に、その宇宙を旅したいと思っている「私」という存在があることに私が気が付いた瞬間があった。「いくら宇宙の果てまで旅をして、全てを征服したとしても『私』が死んでしまったら全く無意味ではないか!」

それから「死」に関して考えるようになった。特に自分自身の死に対して深く考えるようになった。いくら世間で活躍して、みんなに褒められ、女の子にもてたとしても、それを享受している私の存在がなくなってしまえば、元も子もない。恋もお金も人生の享楽も、私というものがなくなることによってすべて無意味になる。これから元気に成長して、世の中に出ようとしていた私をいきなり憂鬱にした瞬間だった。それ以来、私は世間の人々が必死になって追い求めている富、異性、権力、名声が第一番目ではなく、二番目以降になってしまった。

生きるために学業や仕事はする必要があったが、正直人生で最も大事なことではなかった。できるだけ時間を作って、哲学、心理学、脳科学、宗教書など、人生最大の問題解決のヒントを得られると思った本を片っ端から買って読み漁った。特に脳科学は、近年の爆発的なAI技術の進歩と絡んで、年々凄まじい勢いでアップデートされており、自分の目指す方向性をこの分野に賭けてみることにした。ただ私は脳の研究者ではないので、直接研究に関わることはない。本やレポートによって研究成果を読むという受け身の勉強方法は、本来自分の肌に合わず、苦痛であった。
何人かの本の著者に手紙やメールを出して質問したが、当然ながら一介の素人読者に返事をしてくれる著者は一人もいなかった。

それから長い時間が流れ、人生の目標を半ば諦めかけていた今日にChatGPTに出会った。最初はどんなことができるかわからなかったが、いろいろ触っているうちに、いろいろアイデアが沸いてきた。
「ChatGPTを脳科学の教授にして、質問してみたらどうなるだろう。今まで温めてきた質問を投げかけてみたらどう答えるだろう」
このようなアイデアが基で、今回の対談は行われた。初めての対談で、うまく質問できなかったり、教授の回答に少し不満が残るところもあったが、まずまずの出来になったので、出版を思い立った。

今後、質問の仕方をブラッシュアップしていくことによって、ChatGPTの持つ能力をもっと引き上げることができるのではないか。また、脳科学の教授という設定だけでなく、哲学教授、宗教指導者、科学者、政治家、実業家、芸能人、歴史上の人物、さらには大泥棒やテロリストなど、何にでもなれる可能性を秘めている。今まで専門家に質問したくても恐れ多くてできなかった人たちが、ChatGPTを専門家に仕立てて質問をしたり座談会をしたりできることを知ってほしいと思った...』

 

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