情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

豪州企業を買収(M&A)する前に行うべきチェックリスト

概要
オーストラリアで現地法人を買収した日系企業が、経営ができずに困っている場合があります。破格の値段で手放す場合もあります。どうしてそのようなことが起きるのでしょうか? 本稿では、買収後の現地法人に起こりがちな事態と、それに対処するためのチェック項目を整理します。

豪州企業の特徴
1.日本とは異なる、豪州人の経営方法を理解する必要があります。従業員が1,000人を超える大企業であっても、1人の経営者が経営方針を決めていることが多いです。つまり、大企業とは言え、分権、すなわち権限が分与されていない状態であることが多いのです。買収した会社のキーパーソンが退職すると、急に売り上げが下がったり、大量の退職者(豪州では「村移動」と呼ばれています)が発生したりします。豪州では上司と部下の関係が日本企業以上にウエットです。

2.買収する多くの企業のキーパーソンにすべての権限が集約されており、また、その人物が最高責任者であり、大株主である場合が多いです。

3.最高責任者が、株主であってもなくても、他の株主を無視して個人商店の店主のように振る舞う場合があり、被害に遭った日系企業もあります。

4.豪州企業の価値は、ROI(Return On Investment:投資収益率)ではなく、粗利(売上総利益)で決まると言われています。つまり、経営者を変えても、あまり効果はないということです。

買収前の対策
1.買収後の当該企業のキーパーソンとの雇用契約を見直す必要があります。キーパーソンが買収後すぐに退職することのないように、再度、雇用契約を交わしたほうがよいでしょう。

2.買収後、コーポレートガバナンス(企業統治)上、権限を分けますが、その計画は買収前に立てる必要があります。サクセッションプラン(後継者育成計画)を考えて、若手の駐在員を各部門のマネジャーにつける日系企業もあります。“終戦”をイメージして、“開戦”する必要があります。

3.現地の最高責任者を管理するためのオーディットコミッティ(audit committee:監査委員会)を構築する必要があります。形だけで、実際には稼働していないオーディットコミッティを見かけます。

4.財務諸表を精査する際に、設備や機械の償却が適正なのか、在庫の有効期限が過ぎていないか、訴訟を抱えていないか、に留意すべきです。特に重要なのは、粗利の算出は適性なのか、です。

買収後の対策
1.キーパーソンの部下を徐々に入れ替えていく必要があります。さもないと、キーパーソンが退職した後、監理者不在になる可能性があります。

2.サクセッションプランをソフトランディングさせる必要があります。

3.オーディットコミッティを稼働させるためには、内部監査人を新たに採用するべきです。コミッティの議長は会社関係者外から選出、またコミッティの過半数は会社関係者外である必要があります。さもないと、公正さに欠けてしまいます。

注意事項:
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
Liability limited by a scheme approved under Professional Standards Legislation

Share This