鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice



腎臓や尿管にできる結石にはあらゆるタイプがあります。単に石といってもその成分は源疾患が何であるかによって異なります。ほとんどの場合はよく調べれば代謝性の疾患(副甲状腺機能亢進症、腎臓の病気、吸収不良や慢性の下痢などの腸の疾患、高尿酸血症や痛風)や解剖学的な構造上の欠陥(馬蹄腎、多嚢胞腎、海綿腎などのような石が形成しやすい病気)がみつかります。
70歳までに12%の男性、5%の女性は腎臓、尿管結石による痛みを経験します。
一度結石をおこした人は、その後25年のあいだで再発する可能性が30-40%と推定されています。中でも、再発を起こしやすい下記のような危険因子がいくつかあります。
★家族歴がある場合
★痛風
★腎石灰化症(nephorcalcinosis)
★はじめての結石が比較的若い年齢でおこった場合
★慢性の下痢や吸収不良のような腸の疾患がある場合
★副甲状腺機能亢進症
★尿路感染症をよく再発している場合
★乾癬
★ショーグレン病
★ビタミンC、ビタミンDの過剰摂取、下剤、
利尿剤の服用など。

腎臓/尿管結石の症状

典型的な症状は、石のある側に突然おこる背中の腎臓のあたりから下腹部、あるいは睾丸のあたりまで拡がるような痛みです。周期性のある痛みで、数分間激しい痛みがあり、そして数分間やわらぐというパターンの繰り返しです。身動きがとれなくなるほどの激しい痛みで吐き気、嘔吐を伴うこともあります。
尿の色が濃く見えたり、はっきりと血尿が認められることもあります。尿を試験紙でチェックすればほとんどの場合は潜血反応が出ているはずです。尿路感染も併発していれば発熱したり腹部の痛みだけでなく排尿時に尿道に痛みを感じたりしているかもしれません。石が尿管の中を通過し、膀胱に近づくとともに痛みを感じる箇所が変わっていくかもしれません。
また、一度膀胱まで達すれば、ほとんどの石は問題なく膀胱から尿道を経て体外に出てしまうはずです。(尿道は尿管よりも
広い)もし、何かの理由で石が膀胱の中にとどまってしまうと膀胱の中で徐々に大きくなり、排尿の終わりで痛みを感じたり
血尿をおこしたりします。腎盂にできるような鹿角状結石(staghorn calculus) の場合は痛みはほとんどなく、症状としては
尿路感染をよく繰り返すということだけかもしれません。

鑑別診断
尿管結石からくる痛みに似た痛みをおこす疾患には次のようなものがあります。
*卵巣嚢胞 *卵巣捻転 *子宮筋腫 *子宮外妊娠 *卵巣癌
*骨盤腹膜炎 *虫垂炎 *憩室炎 *膵炎 *胆石
*小腸閉塞 *腎盂炎 *大動脈瘤 *腹膜内出血 *帯状疱疹 など

検査
検査の目的は診断を確認するとともに尿路感染(infection) 、尿路通過障害(obstruction) 、あるいは腎機能低下(decreased renal function) がおこっているかをみておく必要があります。
症状が上記のような典型的なもので、尿に潜血反応が出ていれば診断はほぼ確実です。
映像検査は腹部CTスキャンが適切です。腹部レントゲンだけでしたら放射線透過性の結石(例えば尿酸結石)は写りません。もし妊娠している場合はCTスキャンではなく、超音波やMRIなど放射線を使わない方法が適切です。
尿路感染が疑われる場合は尿の培養検査も必要となります。また、比較的長めに尿路の通過障害がおこっていると腎機能にも
影響してくるので血液検査で腎機能検査(尿素とクレアチニン)を測ることもあります。

石の分析
自然に尿道を通って体外に出てきた石や体外衝撃波結石破砕術(体外から超音波を結石に向けて当てて石を砕く方法で、ESWL, extracorporeal shock wave lithotripsyという)で砕かれた石の破片などは必ず収集し、生化学的分析をしておくと面倒な代謝疾患の検査を省けるので考慮するべく大切なポイントです。

治療
診断が確認されれば石の大きさと位置によって治療法は左右されます。もし、比較的小さな石で尿管をすでに下がってきているようでしたら鎮痛剤を使いながら自然に体外に出るか様子をみます。最近では前立腺肥大のときに使われるFlomaxtraという薬を2週間ほど試してみることもあります。その間、絶えず網のようなもので尿はこすようにしていると石が出たことを確認できるとともにその石を分析に出すことができます。数日ごとにレントゲン、あるいは超音波検査で石の位置を確認しなければならないかもしれません。
もっと積極的な治療が必要な場合:
*直径7mm以上の石
*痛みがコントロールされない場合
*尿管閉塞に伴って感染症が起こっている場合
*両側の尿管が閉塞している場合
*妊婦
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)で石を砕く方法、尿管にステントを挿入する方法、それに経皮的腎ろう造設術 (透視下に腹側部皮下よりカテーテルを腎盂に挿入し, 尿をドレナージすること)などという方法があります。最近では開腹手術が必要となることはあまりありません。

再発の防止
どのタイプの石でも再発を防ぐための大事なポイントは2つあります。

1)水分を多く摂る ー排尿量を多くすることによって尿の濃度が薄くなり結晶もできにくくなります。一日(24時間)
の排尿量は最低2L必要です。
2)塩分を控える ー塩分(ナトリウーム)の摂取を控えると尿に排出されるカルシウームが少なくなり、結晶ができに
くくなります。
その他に注意できること:
★動物性蛋白 ー動物性蛋白の摂取を抑えると結石ができにくくなります。
★シュウ酸 ー高シュウ酸尿症(Oxalate という酸のタイプが尿に出過ぎる)の場合、シュウ酸の多いもの(ほうれん草、
紅茶、チョコレート、苺、ナッツなど)を摂りすぎないようにします。
★ビタミンC ービタミンCが体内で代謝されるとシュウ酸になるので、多く摂りすぎないように注意するべきです。
★カルシウーム ーカルシウームの摂取制限をするとかえって結石ができやすくなりますし、骨粗鬆症にもなりかねないので特殊
な例外を除いては制限はしません。
★クエン酸塩 ー尿に排出されるクエン酸塩の濃度が低いとカルシウームの結石ができやすくなりますのでレモンジュースを
毎日多めの水分とともに飲むとこのような石ができにくくなります。
★尿酸 ー尿に尿酸が多く排出されると尿酸結石ができやすくなります。また、尿酸の結晶が核となってそのまわりに
カルシウーム結石ができやすくなります。水分を多く摂ることと尿をアルカリ性に保つことが大切です。
これでも尿酸の排出が減少しない場合はAllopurinol(Zyloprim)という痛風に使う薬を投与することもあります。

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