情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

オーストラリア連邦政府と州・自治体の財政関係について

オーストラリアは連邦、州、特別地域、地方自治体という3層の政府構造を有する連邦制国家です。連邦政府は、外交、防衛、電波管理、高速道路、出入国管理や年金などの行政分野を担当しています。州・特別地域は、連邦に専属する権限以外の権限が与えられていて、例えば、警察、消防、救急、教育、病院、環境保全などが当てはまります。そして、地方自治体は、地方道整備、山火事対策、公衆衛生、ごみ収集や建築許可などを担当しています。

それぞれの歳入については、連邦は税収がその9割を占めています。州の歳入は、補助金・交付金が5割とサービス税収入がおよそ3割。地方自治体は、サービス税収が歳入の4割弱あるほか、歳入の3割ほどが使用量・手数料となっています。このうち、連邦政府の税収のほとんどが所得税と物品サービス税となっています。一方で、州・地方自治体は所得税収は一切ありません。給与税、資産税、消費税など使用税のみになっており、連邦政府の総税収と比べるとかなり少ないのです。国全体の総税収に占める連邦税収の割合は8割以上を占めています。

その理由として、所得税と消費税の大半を連邦政府が独占していることが挙げられます。実は、以前所得税については州も課税権を付与されていました。しかし、1942年の戦時特例措置として州政府が所得税課税権を放棄し、以来、消費税は連邦政府に独占されています。この制度は憲法解釈上合憲とされています。

しかし、これでは連邦政府と州との間で歳入の差ができてしまいます。その差を埋めるために、連邦から州へ財政移転が行われているのです。これをGST交付金(Goods and Services Tax Revenue)といいます。すなわち、州は課税権を有していないものの、州に代わって連邦が国民からGSTを徴収し、各州に配分する仕組みになっているのです。

注意事項:
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
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