情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

豪州法考察8

雇用法
80年代にシンガポールに駐在されていたIBMの人事部長は、色々の人種の集まるシンガポールでは、人事管理を行うのに其々の異なる文化を無視しては出来ない事に、赴任後直ぐに気が付きました。彼自身はオランダ出身でオランダの大学の博士号をお持ちでした。
人事部長は欧米より極東の方が文化的に男性系である事に気が付きました。また、欧米は投資型であるのに対して、極東は貯蓄型である事も理解しました。
この様な文化の違いを理解して豪州で上手く経営したい所ですが、実際にどうしたら宜しいのでしょうか? 英国の人事管理はよく、酪農経営に例えられます。
つまり、お牛さんに自由に草を食べて頂き、自由に寝て頂き、自由に子牛を生んで頂きます。農家はその引き換えに、ミルクと子牛を頂きます。
極東の場合の人事管理は、馬車を引っぱるお馬さんに例えられます。つまり、手綱でお馬を管理する経営です。従い、極東から豪州に移住致しますと、急に手綱が無くなる為、最初可也戸惑います。
日系企業の非営業部門で極東及びその周辺出身の方を好んで採用致しておりますが、差別防止法が豪州に有る事を忘れてはいけません。手綱で管理される事に慣れている方を採用する事自体は問題ありませんが、その使い方に気を付ける必要が有ります。
欧米の場合、人事管理で一番重要な事は、生産性を上げる為の働く環境を作る事です。そして、環境に適合する人材を採用する事です。仕事を楽しんで頂く必要が有ります。極東の場合は馬車を引くお馬さんの様に社員一丸となってお仕事をする事です。
担当者の居ない仕事をどうしても手綱文化に慣れている社員に降りがちですが、度を過ぎますと、人種による差別防止法違反で会社が訴ったえられ事にもなりかねません。職務内容に記載されていない仕事を社員にさせる事は契約法、雇用法違反になります。使い易い社員に振り分ける前に、職務内容の変更に社員から合意を頂く事が必要です。

損害賠償請求
ニュージランドは自然に恵まれた、緑の多い、面積が日本に比適する、農業国です。最近は日本から観光客のみならず、移住される方も増えております。最大の輸出品は乳製品、次に建材になります。
ニュージランドはスキー・リゾートとしても有名です。それ以外にも多くの観光客が海外から、バンジー・ジャンプや熱気球等のスポーツを安価な値段で楽しんでおります。何故、安いかを考えた事が有るでしょうか?
ニュージランド政府は数十年前に受傷事故に関す法律を大きく改正しました。以前は豪州と同じ様に交通事故で被害に遭えば、加害者を訴ったえる事が出来ました。現在では、ニュージランド政府が、加害者に代り、被害者の補償をしております。
この背景には加害者が自己破産や倒産になり、被害者に対して十分な補償が出来なかったからであります。被害者を救済する為、ニュージランド政府は受傷事故の一括窓口になりました。
加害者は民事訴訟から逃れられる様になりました。従い事故を起こしても経済的負担が無くなりました。運営経費も減少しました。政府が全てを保証すると云う事は、被害者にとり、安全な国と考えるべきなのでしょうか?では、何故、海外からの旅行者は旅行保険が必要なのでしょうか?
ニュージランド政府の保証はニュージランド国内のみに留まります。つまり、海外からの旅行者が交通事故に遭った場合、入院費や、手術費は政府が負担しますが、一胆出国致しますと、それ以降誰も保証してくれる人がいなくなります。
保険の加入無しにニュージランドでスキーをする事は自殺行為に近いのかも知れません? ニュージランド政府はニュージランド人を救済する為に法律を大きく改正致しましたが、外国人に対しては如何なものでしょうか?ニュージランドに来る前に保険に入れと云うメッセージを海外に送っているのでしょうか?
ニュージランドは国民にとっては安全な国、外国人にとっては危険な国なのでしょうか?

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