情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

豪州法考察7

移民法

人は人を差別してはいけない。豪州にも年齢差別、人種差別、性差別を禁じた法律があります。この背景には人を差別する事により平和な、経済的に豊かな社会が脅かせられと思われているからではないでしょうか?
しかし、移民法は人を差別する事により、VISAを発給しております。年齢、所持金、学歴、職歴、国籍等により、VISAの発給がなされるか否か決まります。どうして、移民法は外国人を差別するのか?国益の為にはに外国人を差別しても良いのでしょうか?
不思議なものです。国内では人を差別する事を禁じているにも拘わらず、外国人には堂々と差別をしております。

有給休暇上乗せ金

従業員が休暇を取る際にAnnual Leave Loading(有給休暇上乗せ金)を従業員に支払う義務がどうして会社に有るのでしょうか? まるで会社が社員に対して休暇を取る様勧めている様に見受けられます。
この背景には休暇期間中に従業員が残業代を支払われる機会を失う為、それを補う形で1950年台に生まれた法律で有るとの事です。
上乗せ金を支払ってまで会社側は社員に休暇を消化して貰う必要が有るのでしょうか?日本では未消化の有給休暇は翌年度に繰越し出来ません。豪州では未消化の有給休暇を会社側が買い取る義務が有ります。
会社の経営が悪化しても簡単には従業員の給料を下げる事は出来ません。日本では社長から始まり、社員全員の給料を下げて、会社の存続を維持する努力を致します。豪州では指名解雇以外で人件費を下げられる道が残っておりません。
従い、社員を育て、熟練工を維持する事が難しくなります。豪州からの製造業の徹退は無理も有りません。以前は豪州の製造業は保護貿易政策の基に成り立っておりました。1990年代までは日系でも家電メーカーや自動車メーカーが豪州内で製造をしておりました。

自由貿易は製造業を潰すのでしょうか?

徴税

移転価格を見てみましょう。法人税の安い所に国際企業は利益を落としております。株主から見れば当たり前の事ですが、当事国から見ればとんでもない事だと怒ります。国税庁に指示を与え、企業を脱税容疑者に仕立て上げます。
企業は利益を求め国際化している訳ですので、利益を産めない国から徹退せざる負えません。無理に続ければ株主に対しての背任行為になりかねません。
法人税の安いアイルランドを診てみましょう。何故アイルランドは法人税が低いのでしょうか? アイルランドの国民平均年齢は日本等と比較して可也低いです。つまり、国民の生産性は別として、労働人口の占める割合が大きくなります。よって法人税を下げ、国際企業を呼び込み、国民に労働の機会を与える狙いがあるのではないでしょうか?
法人税を下げても、個人所得税、消費税を増やす事が出来れば、国の歳入も増える事が可能になります。何故豪州政府は此れに気付かないのでしょうか?
豪州の場合、個人所得税は自己申告且つ既に高額であります。よつて政府は個人所得税からの増収は期待出来ないと理解しているようです。また、消費税を上げ、法人税及び個人所得税を下げる事が、一番良い事である事を理解しつつ、それが言い出せない悩みが有ります。
消費税を上げる事は言い出せば、政府が次の選挙に勝てないからです。豪州には連邦政府、州、準州政府が有ります。しかし、国民に課税出来るのは連邦政府のみです。つまり、州政府は州民から徴税出来ません。豪州が連邦化された際に州、準州の徴税を連邦憲法で禁じたからで有ります。過去の裁判例を見ても、連邦政府の独占徴税能力は弱まる所か、更に独占力を極めつつ有ります。
地方政府は連邦政府からの寄付金がなければ運営が成り立りたたなくなります。憲法を変え地方政府に消費税徴収機能を移管すべきではないでしょうか? 此れにより、中央集権力を低下するもの、豪州経済を更に活成化出来るのではないでしょうか?

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