情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

豪州法考察6

豪州の独禁法
新しく買収された豪州企業に初めて駐在員が赴任されてきました。着任してみると工場の中ではラジオから音楽を流して仕事をしているのが目立ちました。駐在員は直ぐに仕事中はラジオを止めるよう指示を出しました。
社員はキョトンとした顔をしておりました。おそらく今までその様な指示を受けた事がなかったのでしょう。豪州ではお仕事と言う考えはありません。仕事からの苦痛を和らげる為に音楽を掛けているのに、音楽を止めるとは不届きなマネージャーと社員は思ったのではないでしょうか?
豪州は社会主義とか全体主義とは異なり、自分がしたくなければ人は仕事をしません。従い企業は社員が仕事をしたくなる様な環境を構築する必要が有ります。音楽を止めることは逆効果になります。職場を見てみると、働いている社員とそうではない社員がいることに気が付きませんか?
経営者は働く社員を残し、そうではない社員を解雇しようとするのではないでしょうか? そうしますと、働く社員まで退職する可能性が大きいです。働かない社員もラジオの音楽と同じで職場環境に貢献しているのです。
つまり、豪州では職場の生産性を上げる事は大変難しい事です。従い、人による生産に基づく産業は競争が無い限り、利益を出すが難しいです。豪州政府はACCCを通し、業界内の市場独占を妨げる様努力しております。 しかし、ACCCの指示に従っていたのでは薄利多売になるだけです。政府は消費者に有利になるよう法規制を行なっております。
理想的投資先は人員により生産を上げる第二次産業ではなく、人員によらない第一次産業または第三次産業になります。つまり、お金がお金を産む様な業種でないと豪州では良いROIが期待出来ません。

勧奨退職
最近あった事件ですが、某大手警備会社(非日系)が大型シヨッピング・センターの警備契約を更新出来なかった為、警備員を解雇致しました。転勤または指名解雇になる所を、解雇する前に辞表を出せば、次の御仕事を紹介すると警備員に約束致しました。
警備員は8年以上勤めた会社に辞表を出し、このシヨッピング・センターの警備契約を新たに取得した別の警備会社に採用されました。自己都合退職と看做された為、未消化分の年休分のみの御給料の支払いを受けました。
会社は変わりましたが、同じ仕事を略同じ御給料で続ける事が出来ました。警備員は50歳を過ぎており再就職が難しいと思い、余り考えずに辞表を出したとの事でした。前の会社で後2年働けば2ヶ月分の長期勤務休暇が頂けるはずでした。辞表を出した為、8年分の努力は何処かに消えてしまいました。
会社側は役職が無くなり、転勤も不能であった為、本来であれば8年分の指名解雇金を支払わなければなりませんでした。新しく契約を取得した会社に話を着け、上手くお金を節約致しました。此れは合法でしょうか? 
警備員はその後自分が騙されたのではないかと思い、弊事務所に来られました。同じ役職を警備員は維持出来ましたが、新しい会社が前の会社を買収したわけでは有りませんでした。また、この2つの会社は系列企業でも有りませんでした。新しい会社に8年分の長期勤務休暇が買い取られ移管されたわけでも有りませんでした。従い、辞表を出さなければ警備員には指名解雇金を受け取る権利が有りました。
しかし、最初の警備会社は再雇用を鼻付かせ自己都合退職を警備員に勧めました。拠って、法的には勧奨退職と看做されます。従い前雇用主はこの者に対して、指名解雇金及び解雇通知期間分の御給料を支払う義務が有ります。

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