情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

豪州法考察5

守秘義務違反
最近扱っている事件で守秘義務違反が有ります。被告は保険会社でした。医療保険加入者の情報を被告が第三者に無許可で流してしまい、告訴人が精神的にも肉体的にも被害を被った事件でした。
保険会社に損害賠償金の支払いを求めましたが、満足な回答が得られない為、AIC(豪州情報監督庁)への告発になりました。AICの判例を調査してみますと守秘義務違反の賠償金支払額は数千ドルから数万ドルでした。予想以上に低いのに驚きました。
守秘義務はPrivacy Actという連邦法で規定されております。従い、
豪州情報監督庁も連邦政府の配下になります。企業として気を付けなければならない点は社員の個人情報並びに顧客の個人情報になります。
企業が被告人で有りながらも賠償金の支払い金額が低いのは国策と思料されます。Privacy Act自体が数年前に改正された新しい法律で有り、豪州国民が守秘義務取り扱いに不慣れで有ります。賠償金額を吊り上げてしまいますと、策略的に企業や政府機関に守秘義務違反を起こさせ、賠償を求める国民が出てくる可能性が有るからと思料されます。
従い、企業や政府機関が時間と共に守秘義務取り扱いに慣れてくるに従い、賠償金額の上昇が見込まれます。豪州に進出しております日系企業は賠償金額が上昇する前に守秘義務を学ぶ必要が有ります。
開示された個人情報の管理について、企業は個人情報の流出、悪用、無許可の使用を防ぐ措置を講じる必要があります。個 人情報取扱者は基礎原理の手順を取ったことを証明しなければなりません。また、個人情報の取り扱い手順を常にアップデートしておく必要があります。この 他、問い合わせやクレームに対してどのような対応を取るかのプロセスを明確化しておく必要があります。個人情報の取り扱い方針はそれぞれの企業に合わせて 構築する必要があります。

税金滞納
今回は税金滞納の顧客の裁判でした。税法は連邦法ですが裁判はニューサウス・ウエールズの州裁判所出廷でした。連邦法関連の裁判は通常連邦裁判所になりますが、今回は税法を犯したのではなく、単に国税庁に滞納している税金が未納の為国税庁が告訴した事件でした。
つまり、顧客は税金未納を認めており、争点は未納の金額でしたので州裁判所に告訴されました。裁判は通常告訴者と被告者の裁判所での顔合わせである予審(Pre-Trial)から始まります。当然双方に通常弁護士が付きます。此処で裁判官を入れた3者で此れからの裁判の日程並びに条件等が決められます。
裁判不出廷であれば被告人にDefault Judgementと言う欠席判決が与えられてしまいます。これを避ける為には被告人又は被告人の弁護士は出廷しなければなりません。
本裁判に入る道のりは長く、予審の次の出廷はDirections Hearingと言う本裁判前の細かい条件や証拠書類の提出等が議論される審判手続き裁判が何回となく開かれます。裁判費用が徐徐にかさむにつれ、裁判と平行して和解金の話が告訴人と被告人の弁護士同士で話されます。
未納金額は数億円に上る為顧客は現在自己破産を考慮中で有ります。 自己破産を申請致しますと、国税丁は告訴金額が回収出来ない為訴訟を一時中断致します。自己破産を宣告致しますと生活上色々と不便が生じてきます。顧客は会社役員ですが、退任しなければなりません。また、海外出張も簡単には出来なくなります。
豪州では自己破産も裁判所に出向いて申請しなければなりません。申請は連邦法に基づいて行う為、取り扱い裁判所は連邦裁判所になります。

注意事項:
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
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