鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


目の中の水晶体はカメラのレンズの役目をしています。外からの光を集め、
眼球の奥の網膜(フイルム)に焦点を合わせます。網膜から視神経を経て脳に信号が送られ、映像として感知されます。
白内障とはこの水晶体が濁ってくる疾患です。光がうまく通らないことによって映像が霞んだりぼやけてきます。
ほとんどの場合は加齢によるものです。視力にどの程度の影響があるかは水晶体の濁りの度合いやタイプによります。

白内障の種類
*核性白内障(nuclear cataract)
加齢によっておこるタイプで、レンズの中核部に変化がおこってきます。レンズが曇ってくるとともに硬くなり、黄色み
がかってきます。何年もかかって徐々に変化していきます。視界が曇って見えにくくなり、色の識別も困難になるかも
しれません。
*皮質部白内障(cortical cataract)
レンズの皮質{表層部}におこる曇りで、周辺部から中心部に、向けて線状に進んでいきます。このような変化は光を
拡散してしまう効果があり、視界が霞む以外に太陽光がぎらぎらしたり眩しかったりします。糖尿病の人におこり
やすいタイプです。
*後嚢下白内障(posterior subcapsular cataract)
レンズの後極部に曇りができるタイプです。字が読みにくくなったり、物体の輪郭に光輪ができたり、強い光がぎらぎら
したりします。糖尿病、副腎皮質ホルモンの長期服用などからおこりやすいタイプです。このタイプは進行が早いことも
あります。
*先天白内障(congenital cataract)
生まれつきの白内障で、妊娠中に母親の感染症からなることもあります{例えば風疹}

白内障になる危険因子
*高齢
*糖尿病
*過度のアルコール摂取、喫煙
*電離放射線の照射(例えば癌の放射線治療)
*白内障の家族歴
*高血圧
*肥満
*過去の目の怪我、あるいは手術
*長期にわたる副腎皮質ホルモンの服用

白内障の予防
強い紫外線をなるべく避けるようにすることです。日中、外出するときはサングラスをかけ、帽子もかぶるようにして
ください。タバコは止めるべきです。食事は果物、野菜(特に緑のもの)、それに抗酸化物質を多く含むものを摂るようにしてください。

白内障の症状
*視界の霞み、ぼけ
*色があせて見える
*太陽光やヘッドライトなどの強い光がぎらぎらしたり眩しく感じたりする
*物体の輪郭に光輪がおこる
*夜間の視力が落ちる
*ものが二重に見える

白内障の検査
上記のような自覚症状があれば白内障が疑われますが、初期の場合、本人は気づいていないこともあります。医師の診察でレンズが曇っていることで白内障は確認できます。眼科医で受診した場合、眼圧検査や眼底検査も行い、緑内障や黄斑変性など、高齢者にはよくおこる目の疾患についてもチェックをします。

白内障の治療
初期の症状でしたら新しい眼鏡の処方、抗眩輝サングラスの使用、室内のライテイングを明るくするなどという工夫でしのげるかもしれません。しかし、毎日の生活に支障が出てきて読書ができない、テレビが見にくい、運転が困難などという問題がおこってくるようでしたら手術で曇ったレンズを取り除き、人工レンズと取り替えるという手段が必要となってきます。

白内障の手術

曇ったレンズを超音波で砕いて取り出します。超音波水疱体乳化吸引術(phaecoemulsification)と言います。最近では、一部分をレーザーを使ってする方法もあります。科学的にはまだこの方法が優っているとは証明されていませんが、費用は高くなります。角膜と前嚢を切開し、超音波でレンズを砕き、吸引します。後嚢は残しておきます。
そして、残った後嚢の中に新しい人工レンズを挿入します。手術前には眼の測定をしてどのようなレンズ、レンズの大きさと度数などを決めておきます。よく使われるのは単焦点レンズで、遠くのものが見やすくなるように度数が調整されます。この場合、老眼の人は手術後老眼鏡は続けて使用しなければならないかもしれません。
乱視がある場合、乱視矯正レンズもありますが、このレンズは乱視の軸とピッタリと合うように挿入されないと効果が弱くなります。
もし、眼鏡を使用したくない場合、多焦点レンズ、あるいは毛様筋や硝子体の圧力の変化によって焦点を調整できるようなレンズ(単焦点)も開発されています。個人差があり、このようなレンズから充分な効果が得られない場合もあります。また、両目に白内障があり、手術をする場合、左右のレンズの焦点を変えて片方が近くのもの、もう片方が遠くのものを見やすくするという方法もあります。
両目を手術する場合、片方ずつ、最低2週間は間隔をあけて手術します。 手術の時間は15-20分程度です。局部麻酔ですみます。ほとんどの場合はDay Surgery の施設で行いますので日帰りです。術後の数日間は目薬を使い、1週間後には眼科医でのチェックを受けます。

手術後の合併症
白内障手術は安全なもので、ほとんど問題はおこりませんが、術後早期には角膜浮腫、虹彩炎、眼圧上昇などがおこるかもしれません。軽症でしたら1週間ほどで治まります。細菌感染、出血、眼内レンズの脱臼などがまれにおこることもあります。後発白内障といってレンズを挿入した後嚢が濁ってくることもあります。この場合、レーザーで濁った嚢に切れ目を入れることによって視力は回復します。

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