情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

豪州法考察3

会社役員の義務
サラリーマンで有ながら海外赴任致しますと現地法人の役員になりがちですが、国内では全ったく役員の義務など意識していなかった方が多いかと思われます。
豪州での役員の義務は会社法(連邦法)で成文化されておりますが、裁判所は会社法をどの様に解釈するのかを説明したいと思います。
役員には各種の義務が有りますが、役員が個人責任を負はない為にどうるべきかを説明したいと思います。例としてInsolvent Trading、つまり会社が期日以内に債権者に支払い出来ないのを知りながら会社経営を続けた場合を挙げて見ます。
自分は工業高校しか卒業していないので財務資料を理解する事が出来ない。これはDefence、つまり個人責任を逃れられるのでしょうか?
裁判所は自分で理解出来なければ、専門家のアドバイスを求める義務が役員にあると命じております。
現地法人の社長は豪州人で、東京からの出向役員は自分だけである。社長は東京の役員に直接報告している様だが、自分には財務資料を見せたがらない。何回か打診したが、面倒くさいので彼に任せきりにした。現地法人が破産した場合十分なDefenceになるのでしょうか?
裁判所は役員は帳簿を見る義務が有ると命じております。また、社長も他の役員に帳簿を閲覧出来る様にしなければならないと命じております。
自分は現地法人に管理者として赴任したが、役員は東京に2人、現地法人に豪州人が1人である。従い、自分には役員責任は無い。そうでしょうか?
裁判所は上級管理職は役員と同等の義務があると命じております。

税務
日本は成文法の国で有りますが、基本的には豪州の様な慣習法の国と同様に日本の法津も文化から生まれております。両国の異なる税法の観点から検証してみましょう。
日本では自宅から会社まで通勤費が経費と看做されるに反して、豪州では経費扱いに何故出来ないのでしょうか? 豪州の場合会社を退社した瞬間から、従業員は仕事から解放される為、通勤手当を会社が支払えばFBT(給料看做し税)が発生致します。此れに不満を持つ従業員が豪州の裁判所で度々争いましたが、裁判所は決して認めませんでした。日本の場合はお仕事は24時間勤務と歴史的に看做される為、通勤費も経費と看做されるのではないでしょうか?
但し、豪州の通勤費にも例外規定があります。直帰する場合や自宅から直接お客さんの会社にお伺いする際は経費と看做されます。また、出張の経費扱いにも文化の異いが出ております。豪州では家族や同姓者同伴の出張が多くあります。何故ならば経費と看做されるからで有ります。良く飛行機のビジネス・クラスに家族ずれが多いのはこの為です。日本人には理解し辛い点で有ります。
接対交際費は日本の場合経費と看做されますが、豪州ではFBTが掛かります。豪州人は接対しないのでしょうか? 豪州人も接対致しますが、社員は自分自身がお客以上に楽しんでおります。又そうでなければ豪州人は接対致しません。日本の場合は、豪州と異なり、気配り目配りの世界です。つまり、接対は豪州では仕事の延長とは看做されないと云う事です。
税法のみならず、労使法でも文化の異いが出ております。日本では年次休暇の未消化分は切り捨てで有るのに対して、豪州では買取になります。この差は日本の会社がケチで有るという事ではなく、社会主義で有る日本の文化から来ております。日本には公休日が豪州の約倍有ります。つまり、休みを自分の都合で取る豪州人の個人主義とは異なり、皆一緒に仲良く取る日本人との文化の差では無いでしょうか?

注意事項:
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
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