情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

豪州法考察2

遵法精神
日本や独逸では交差点で車が来なくても赤信号であれば歩道者は信号が変わるまで横断歩道で待ちます。豪州ではどうでしょうか? シドニーで歩行者の赤信号無視を取り締まる警察官の姿を数回見ましたが、余り効果が出た様には見えておりません。
車が来なくても赤信号で横断歩道を渡る事は、当然豪州の法律でも交通法違反になります。仮に、車が10分に一台位しか通過しない横断歩道に歩道者用の信号が有ったとします。車が来なくても信号は以前として赤です。遵法精神の強い方は辛抱強く待つでしょうか?
歩道者用信号とは歩道者を車から守る為に作られた物で有ります。その車が通過しなくなれば、歩行者に害を及ぼす可能性のある危険な物がいなくなる訳で有ります。横断歩道の見直しを行政者は行なわなければなりません。
日本で学生の時、香港出身で英国で教育を受けた先生から『日本人はLive To Workである。西洋人はWork To Liveである。』と教えて頂いたのを30年以上経つた今でも憶えております。日本通の豪州人が良く言葉に出す事は『日本人はお仕事(A Honorable Job)と言う。豪州人は仕事(A Job)と言う。』つまり、生活する中で、日本人と比較して、豪州人は生活する中でのお仕事に対する優先順位が低いと言う事になります。
風邪を引いたら会社を休みます。自分の体も壊してまでするまでに仕事は値しない。従いA Jobになります。自分の生活を楽しむ為に仕事をする訳ですので、生活が楽しめ無ければ仕事を変えざる負えません。
先ほどの横断歩道の赤信号と同じでこの国民差は社会主義と個人主義の差である事は明らかで有ります。しかし、余りにも法律が現状とかけ離れていれば社会主義の国民でも遵法精神が消えて行きます。
豪州で何処まで法律を守るべきか?どの様な状況下でも法律を守るべきなのか?
自分の都合に合わなければ法律を無視すべきなのか?この判断は個人に因りますが、判断する前に何故この特定の法律が存在するのかを考えてみては如何でしょうか?

教育
90年代にデプロマ・ミルと云う言葉が流行りました。お金さえ支払えば大学から学位が授与されと云う意味です。授業に出る事無く、試験も受けなくても学位を授ける、政府から認可されていない大学が存在しておりました。
現在では多くの認可された大学が授業に出席する事無しに学位を授けております。中には試験無しに授ている大学も有ります。段々と90年代のデプロマ・ミルの大学との差が判らなく成りつつ有ります。
歴史的には伝統ある有名大学が社会の成功者に対して、名誉博士号と言う学位を授けたのが始まりです。
政府非認可大学もそもそもは中卒、高卒で社会で活躍されている人々の中で、経済的理由等で大学に行けなかったが、大学では学べない様な特異な彼らの技術、能力を評価し学位を授ける所から始まりました。
認可大学と非認可大学の差は、各学会等の指導要領に則い教育をするか否かで有ります。指導要領は車や飛行機の作り方を教える事が出来ますが、運転や操縦の仕方を教える事が出来ません。何故ならば運転や操縦は学問に出来ないからで有ります。経営学を認可大学は教える事が出来ますが、日々の経営を教える事は出来ません。余りにも領域が広く、因果関係が一定で無いからで有ります。認可大学が学位を与える事が出来ない領域で、人々に学位を授け様としたのが非認可大学で有りました。しかし、多くの非認可大学は失敗に終わりました。成功する為には政府認可大学よりも多くの資金、人材を必要としたからで有ります。
憲法上豪州や米国の場合、連邦政府に教育に関する権限が有りません。各州が非認可大学から授与された学位に対して対応せざる負えません。米国の場合、州により対応が異なりました。ある州では学位の表示を禁止致しました。中卒で長年自動車工として働いていた人が、その熟練技術を評価され、機械工学の学位を授けられたとします。しかし、教育指導要領に則って学んでいない為、通常の機械工学を学んだ人と同じ仕事をさせる事が難しい場合が発生します。
豪州の場合、各州政府とも特段の対応策を出しませんでした。但し、海外の大学で得た学位を認定する連邦政府機関が存在致します。豪州の大学の学位と同等か否かを評価する機関です。文科省認定大学でも豪州では認められない大学が多く存在致します。評価基準は何処に有るのでしょうか?
豪州連邦憲法上、国内の大学を評価出来ませんが、海外の大学を評価する事が出来ます。

注意事項:
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
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