情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)専門家

知的財産/商標登録
知的財産法は、ある情報をどのように捉え、その情報に対して法律がどのように適用されるのかを理解しない限り、理解困難な分野です。商標権は、それが適正に使用された際には、オーストラリアでのビジネスにおいて多くの利点を与えてくれます。しかしながら、誤認や不明瞭性が問題となることが多くあり、それらの点の明確化に留意することが必要となります。

商標登録は、商標の目的、過程、それがもたらす利益の可能性を理解する上での基点となります。

登録可能なもの
ブランド名、言葉、フレーズ、文字、数字、音、匂い、形、ロゴ、絵、 パッケージ、または、これらの組み合わせが登録可能です。

商標登録の目的
商標登録は登録業者の商品、サービスを、他の業者のそれらと区別することが主目的です。それにより、市場における両者の混同を防ぎます。
商標登録は実質的に貴社の商品やサービスの取引を手助けします。消費者は商標によって登録業者の商品やサービスの質を見分けることが可能となります。商標登録は、市場における、登録業者の信頼性を維持します。

登録によって得られる権利
商標登録者は、オーストラリア国内において登録された商品やサービスのカテゴリーに対する商標を使用、許可、販売する法的権利を有します。

商品・サービス
商品・サービス(goods, services)とは、商標登録により保護される商品、サービスの種類、部類のことを指します。
オーストラリアでは、商品には34、サービスには11の部類があります。
例)
清涼飲料の「コカ・コーラ」は商品(goods)の31品等(ビール、ミネラルウォーター、清涼飲料水、フルーツジュース、清涼飲料水作成のためのシロップ、他の調製品) に分類されます。従って、他者は「コカ・コーラ」という商標を31品等内の商品、サービスにおいて、利益目的で使用、販売、許可することができません。
登録業者は、登録の際、さまざまな品等を選択することが可能ですが、最低1品等の商品、またはサービスを選ぶ必要があります。

商標が異なる商品、サービスの品等については、すでに存在している商標と同じ商標を登録することが可能です。その主な理由としては、市場における混乱を避けることが商標登録の目的であるため、品等が異なる場合は混乱を招く可能性が低いためです。すでに、ある商標が登録済みの場合、新商標の承認は商標の審査官が「商標法1995(Trade Marks Act 1995 (Cth))」に従って、審査します。

申請方法
まず、申請前に登録希望の商標がすでに登録されているものであるかを調査する必要があります。
調査結果において、登録商標がなければ、オーストラリア知的所有権保護局(Intellectual Property Australia:IP Australia)を通じて申請を行うことが可能となります。

登録困難な商標の種類
商標内の範囲で商品やサービスの記述をすることが大変重要となります。例として、「シャワー」(商品)、「配管工」(サービス)は、登録困難となります。理由として、これらの記述は商標商品やサービスの普遍的使用を記述する際に使われるためです。

登録理由
商標が未登録の場合、商標の保護のためには、コモンローにおける‘詐称通用’、または公正取引法1987(Fair Trading Act 1987)に訴える方法があります。しかし、これらの法に訴えかける場合、多大な時間と費用の負担を強いられます。
商標登録は登録者を法的に保護します。つまり、万が一、他者が同じ商標を同様の商品、サービスに使用した際、商標登録者は権利侵害に対する訴訟を起こすことができます。

商標登録の重要性は、以下の訴訟に見られます。

<判例要約>
原告A社は、B社がA社の栄養ドリンク(シェア世界2位)のブランド名、またその省略形をB社の栄養ドリンクに使用し、その結果、消費者が両社製品を混同し、誤認するとして、B社を提訴しました。
A社の栄養ドリンクのブランド名および省略形は未登録商標であったため、A社が登録商標保護を目的とした、権利侵害に対する訴訟を起こすことは不可能でした。代わりに、A社、B社(後に交差請求)の両者の主張は、コモンロー、不法行為法の概念である詐称通用、取引慣行法1974 (Trade Practices Act 1974 (Cth))第52条に抵触するというものとなりました。
これらの法律に対する違法性を立証する場合、両者はオーストラリアの消費者にとって、製品の十分な評判があるか否かの証拠を提出する必要があります。両者共に、両社製品の類似性が詐称通用、取引慣行法1974第52条に抵触する消費者の誤認識につながることを認識していました。

証拠
B社が提示した証拠には、両社製品が市場に出た後に行われた、どこで当該ブランド名のドリンクの広告を見たか、あるいは聞いたかを問う質問に対する264人の回答結果を含んでいました。連邦裁判所は、この調査結果は、いずれの製品に言及しているのかに関して不明瞭であるため、証拠としての効果が低い、もしくは皆無であるとの認識を示しました。また、裁判所は、OzTAMテレビが行った格付けデータに関しても、テレビにて放映され、それに対して発言する人々がいた部屋は法廷内ではないため、それら人々の発言は、受諾できる伝聞証拠として不十分であるとの認識を示しました。

模倣
裁判所は、B社が故意にA社のブランドを模倣したことを認めました。しかし、同時にA社がオーストラリアにおいて直接的な販売促進活動は行っていなかったこと、また、オーストラリアにおいては、その主張に見合うような製品に対する十分な評判は得てはいなかったとの認識も示しました。
B社は、そのことを認識しており、結果的に自社の利益につながりました。裁判所は、これらの状況下において、B社がA社のモデル、ブランドを利用し、オーストラリアの市場に参入する機会を得ることになったことを認めました。

評判
A社、B社ともに、主張を裏付けるために必要な、製品に対する評判を証拠として法廷内で立証することはできませんでした。両者の訴えは棄却され、差止命令がなされることもありませんでした。

結論
海外での販売実績や製品の評判は必ずしも、オーストラリア国内での評判と一致するわけではありません。ゆえに、オーストラリアにおいて、早めの商標登録申請を行わなかったことによる外国企業の損失は多大となります。
 

注意事項:
本稿は法的アドバイスを目的としたものではありません。必要に応じて専門家の意見をお求めください。
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