ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

Microsoftは6月24日(米国東部時間)新しいWindows10の後継であるバージョン11(イレブン)を発売するとアナウンスした。時期は今年の年末になりそうだ。

思わず「えっ?」と叫んでしまった。6年前にWindows10が発売された時にマイクロソフト社がどう言ったか? 「今までのWindowsは3、4年でバージョンアップを行ってきたが、これからバージョンアップは行わない。Windows10が最後のバージョンだ。その後は、半年の一度の『機能アップデート』だけで、バージョンの変更はない」 あの時の自信に満ち溢れたアナウンスはどこに行ってしまったのか?

私は1980年代のMS-DOSの時代からマイクロソフト社を知っているので、今回のアナウンスに対して心底驚いている訳ではない。「またやられた!」という気持ちだ。初期の頃は、頻繁に発言を翻したりリリースの期日を守らなかったりがあった。21世紀に入ってバージョンアップ用のベータバージョンを公開し、ユーザーにバグ潰しをさせるという手法を考えた。そしてWindows10の登場によりその必要もなくなったはずであった。

ウェブを検索してみるといろいろ言い訳が書いてある。「Windows11はWindows10で決めた開発方針であるアジャイル方式(小刻みにアップグレードしていく方式)を止めた訳ではない。この方針は変わらないが、今回のアップグレードはかなり大規模なものなのでWindows11というバージョンになった。Windows10からWindows11へのバージョンアップは無料であるから安心するように。ただし、Windows10で動いているPCでも古いものは11に対応していないものがある」という内容である。

PCによって対応できるものと対応できないものがあるという理由でバージョンを変更したのはある程度納得できる。Windows10の時は、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、スマートフォンのすべてに渡って同じOSが使えるという触れ込みであった。ところが、実際はWindows10でタブレットやスマートフォンは使い物にならず、ビル・ゲーツがiPhone、iPadを使っているという噂が流れた。Windows10の発売後、ちょっと使ってみたらタブレットやスマートフォンで使えないのは素人でもすぐにわかった。それがなぜ開発者には分からなかったのか? ソフトのトップを走る開発者というのは、良くも悪くも普通の人ではないと思う。開発能力は優れているが、日本で「オタク」と言われるように一般人の気持ちがわかる常識人ではない場合が多いのだ。
以下Windows11がWindows10から大きく変わった点をご紹介する。

マクロソフトTeamsの標準搭載
COVID時代を反映して、今までダウンロードで販売していたマイクロソフトTeamsを標準搭載し無料で利用できるようにした。これによって会社でも個人でも何も買わなくてもWindows11だけで仕事ができるというアピールだ。しかし、これにより他のアプリメーカーのソフトが売れなくなることが予想される。1990年代マイクロソフトがWindows95を販売した時にインターネット・ブラウザであるInternet Explorerを無料で販売したことで裁判沙汰になったことがある。この時のマイクロソフトの言い分は、Internet ExplorerはOSの一環であり、切り離すことができない機能という理由であった。今回はどのような説明になるのか。

スタートメニューがなくなる

上は、マイクロソフトの公式ウェブの画像である。画像のように左下にあったスタートメニューがなくなり、メニューが画面の中央に移動する。マックやタブレットユーザーを意識した変更だろうが、私はまったく賛成できない。実際に触ってみないとわからないが、今から気持ちが優れない。

マイクロソフト・ストア
マイクロソフト・ストアはWindows10でもあったが、アップル・ショップと比べて利用者が少なかった。理由の一つは、Windows10は個人よりも企業で使用されていることが多く、企業では社員が勝手にアプリをダウンロードするのを禁止していたからだ。また主力商品であるワードやエクセルが入ったMS-Office はストアで販売されていなかった。Windows11ではMS-Officeもストアの商品群にいれて積極的に活用させようとしている。この方針転換は、サードパーティーのアプリ開発者との分け前の問題などいろいろ大人の事情があるようだ。
しかし、ここで大きな問題がある。マイクロソフト・ストアを利用するためには、マイクロソフト・アカウントが必要となることだ。企業にとってログイン時にマイクロソフト・アカウントでログインしているところは少なく、正直クラウドであるマイクロソフト・アカウントを使いたくないと思っている企業が大半だと思う。今後かなりの混乱が予想される。

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