鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


医学的には疲労、倦怠感というのは休憩、休養をとっても持続する疲労感のことをいいます。知らぬ間に徐々に進んでいく場合と何かはっきりとしたイベントがきっかけとなって現れることもあります。日常生活動作にかなり影響することもあります。
精神的、社会心理的な原因、ライフスタイルの変化、あるいは器質性疾患 (機能障害, 特に心因性のものとは対照的に、身体の組織または器官に解剖学的または病態生理学的な変化が起こる疾病)などと広範囲な要因の可能性があります。診察、あらゆる検査をしてもほとんどの検査結果は正常で、最終的には原因不明であることもよくあります。このような症状がおこった場合、患者さんの病歴、家族歴、家庭事情、社会的環境などをよく理解しているかかりつけの一般開業医とまず相談をすることが薦められます。
無駄な高額な検査をする前にこのように患者さんをよく知っている医師の判断に任せることが賢明です。

よくある原因

危険信号
疲労感、倦怠感に伴って次のような症状がある場合は器質性疾患が原因であることが多いので、慎重に
検査を進める必要があります。
*高齢者で以前健康であった人に最近疲労感が出た場合。
*説明できない体重減少
*不正出血
*息切れ
*原因がはっきりとしないリンパ節の腫れ
*発熱
*以前からある病気(循環器、消化器、神経系など)の症状の悪化

”疲労感”としてよく感じられる症状
次のような症状の場合によく疑われる疾患
*昼間の眠:睡眠障害
*エネルギーの低下:貧血
*息切れ 循環器疾患:貧血
*手足に力が入らない:神経疾患
*やる気がない:鬱病

年齢別考慮
★小児
元気がない、ごろごろしている、いつもより長く寝ている、などという症状としてよく現れます。
鉄分不足はよく見られる原因で、幼児に牛乳を与えすぎたり鉄分を含む食べ物を始めるのが遅かったりするとおこります。また、特に冬の寒い期間中に繰り返して頻繁に風邪や上気道炎をおこしていると疲労が増すこともあります。
白血病などの血液の癌はまれですが、あざができやすかったり皮膚が蒼白になったりしていればその可能性も考慮して血色素、赤血球数、や白血球数なども調べておくことも賢明です。

★青年期
この時期はおとなへの成長段階で急に成熟度や責任が求められ、精神的な疲れ、ストレスもおこりやすくなります。鬱病やカフェイン、アルコール、タバコ、違法薬物の乱用にも気をつけていなければなりません。夜更かしをして生活のリスムが乱れることも多く、健康的なライフスタイルに気を配り、この時期に良いライフスタイルの基盤が根付くようにしておくことも大切です。食事の栄養バランスがかたよっていて必要なタンパクや鉄分をとらなかったり不規則な食事をしたり、あるいは運動不足や逆に過度に運動をすることによって疲れが生じることもあります。

★女性(中年期まで)
月経過多、鉄分の摂取不足から貧血がおこり、疲労感が現れることがよくあります。また、家庭と仕事の両立をすることによる過労働や睡眠不足が原因かもしれません。出産後の鬱病も考慮に入れなければなりません。

★男性(中年期まで)
不健康なライフスタイル、過労働、睡眠不足、睡眠無呼吸症候群、家庭内の不和、アルコールや薬物の乱用などがよく疲労の原因となります。

★高齢者
年をとるとともにあらゆる慢性器質性疾患の発症率も高くなります。貧血、呼吸器疾患、糖尿病、心不全、癌などがおこりやすく、また複数の疾患の作用により、疲労感が悪化しているかもしれません。すでに慢性疾患を持っている場合、その病気が悪化したのか、あるいはまた新しい問題が現れてきたことを意味しているかもしれません。また、慢性疾患を患っていることからくる鬱病、心不全や呼吸器疾患からくる睡眠困難なども考慮しなければなりません。

原因不明の疲労感が解消しない場合
一通りの検査をして器質性疾患の可能性が低く、とくに気になるような新しい症状が現れない場合は経過観察するしかありません。何か大事な診断を見落としていないか、あるいは慢性疲労症候群が疑われるような場合は専門医の意見を聞いてみることも選択肢のひとつです。
慢性疲労症候群(Chronic fatigue syndrome, CFS)を診断するためにはただ疲労感が続くというだけではなく、次の条件のうち4つ以上を満たさないとその定義にあてはまりません。
*肉体的活動後の倦怠感が24時間以上続く 
*睡眠後のすっきり感がない 
*記憶力、集中力の減退
*筋肉や関節の痛み 
*頭痛 
*首やわきの下のリンパ節の痛み 
*のどの痛み
CFSはまだ謎に包まれた疾患で、診断を確定できるような検査もなく、立証された治療法もまだありません。医師やまわりからのサポートが重要です。

疲労感が続くときに試してみること
*栄養バランスの取れた健康的な食事を規則正しく摂る
*規則正しい生活をし、きちんと睡眠をとる。
*アルコールやカフェインの摂取を控え目にする。
*定期的に適度な運動をする。
*ヨガやタイチーなどでリラックスする時間をつくる。
*精神的に不安定だったり鬱状態の場合は医師と相談する。

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