情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)


国際商事仲裁解説 Q&A形式

8話

仲裁人5
Q 後で分かったのですが、仲裁人と相手側の弁護士がゴルフ友達の様です。
A Model Lawでは仲裁人の選定に問題が有れば15日以内に仲裁廷に異議申し立てが出来ます。その際にその仲裁人が辞任するか相手側が解任に合意しなければ、仲裁廷がその仲裁人の処分を判断致します。
Q 仲裁人は一人、単独なのですが?
A 問題が有るとされる仲裁人本人が自分の処遇を判断致します。
Q 問題が有るにも拘わらず続行されたらどうしたら宜しいでしょうか?
A Model Lawでは仲裁廷の本件結審後30日以内に仲裁機関又は仲裁地裁判所に申し立てをする必要が有ります。
Q 仲裁廷や裁判所は何を基準して判断するのでしょうか?
A 仲裁人が当事者から独立している存在で有るか否かです。単にゴルフ友達と言うだけでは無く、どの位親交が深いのか? 又、此れにより公平性が失われている可能性があるか否かを判断致します。

Kompentenz-Kompentenz(権限争議)
Q 仲裁廷は自らの権限を審査出来るとの事ですが、法的根拠は何処に有るのでしょうか?
A Model Lawの16条1項が規定しております。但し、同条3項で例外も規定しております。
Q 紛争解決(仲裁合意)条項とは別に本契約自体が無効の場合は如何なるのでしょうか?
A 国連国際商取引委員会の仲裁ルール(UNCITRAL Arbitration Rules)23条1項でも定めている様に、本契約が無効でも仲裁廷は解散されません。つまり、仲裁合意は本契約から独立しております。本契約が無効であるか否かを判断するのは裁判所では無く仲裁廷になります。
Q つまり、裁判所が判断する前に仲裁裁判所が判断すると言う事ですね?
A 仲裁廷が裁定として審議するのであればその通りです。但し、仲裁廷が予備質問として審議するのであれば、Model Law16条3項に則り、仲裁地裁判所は直ちに介入出来ます。

当事者合意
Q 当事者の合意に基づいて審議されるとの事でしたが、例外もあるのでしょうか?
A Model Law19条1項では当事者は自由に仲裁の方法を合意し決める事が出来るとされております。但し、同項では例外が有る事も規定しております。
Q 当事者が合意に至らなかったら如何なるのでしょうか?
A 同条2項に基づき仲裁廷が決定致します。但し、当事者や仲裁廷で決められない規則もあります。最初に地裁地法を確認する必要があります。

ニューヨーク条約を離脱した仲裁地法及びModel Law
Q 仲裁条項なのですが契約書に署名しないと無効なのでしょうか?
A ニューヨーク条約ではその通りです。ニューヨーク条約2条2項で文面で交わさないと無効とされております。しかし、Model Lawは改正され仲裁合意の文書化や署名を外しました。豪州仲裁地法では合意書が存在しなくても音声の合意記録があれば十分とされております。
Q 仲裁合意が無くても国際仲裁が出来ると言う事でしょうか?
A そうでは有りません。仲裁合意は必修ですが、その証拠が無くても国際商事仲裁が出来る可能性が有ると言う事です。
Q 合意証拠不十分で仲裁を行った場合どうなるのでしょうか?
A ニューヨーク条約に違反又は拡大解釈と看做され、仲裁裁定を執行しない裁判所が出てきます。
Q 合意書はきちんと文面で交わし署名をする必要が有ると言う事ですね?
A 基本はその通りですが、相手側がメールでの合意や電話での録音記録を基に国際仲裁を開始する可能性があります。

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