情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ外国法事務弁護士事務所
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)


国際商事仲裁解説 Q&A形式

7話

準拠法2
Q 準拠法が合意されなければ仲裁廷が単独で決めるとの事ですが、どの様な基準で決めるのでしょうか?
A Model Lawでは法の抵触原理に基づき仲裁廷が判断すると規定されております。
Q 何処の国の法律を選ぶかでしょうが、国によりどの位法律は異なるのでしょうか?
  例えば、英米法では契約が成立する為に約因と言う対価の様なものが必要ですが、
  日本を含む大陸法の国では必要有りません。又、フランス法では実現不可能な契約は無効になります。

Model Law
Q Model Lawと何回も出てきますが、重要と思いますので、詳しく教えて下さい。
A Model Lawは国際連合の国際商取引委員会が1985年に採用した示範法です。
  多くのニューヨーク条約加盟国がModel Lawをお手本にして国内の国際仲裁地法を作成しております。
  従い、国際商事仲裁を理解する上で重要な示範法です。
Q Model Lawで何が規定されておるのでしょうか?
A 5条では基本的に国際商事紛争に国の裁判所が介入してはならないとしております。
  但し、6条で例外を示しております。
Q どの様な例外が有るのでしょうか?
A 仲裁人の選定、証拠の確保、裁定の執行、裁定や仲裁人の審査をModel Lawは国の裁判所
  に許しております。

裁定の無効判決
Q 仲裁地裁判所は裁定を無効にする事が出来るとの事ですが、どの様な際に無効にするのでしょうか?
A 仲裁地法上仲裁合意書が違法である場合、仲裁人の選人や仲裁廷の審議に事前に十分な告知が
  与えられなかった場合や仲裁審議中に平等な権利が各当事者に与えられなかった場合に仲裁
  地裁判所は裁定を無効にします。また、裁定の内容が仲裁合意の範囲を超えている場合も無効
  にします。

裁定の無効判決
Q 例えば、豪州で出た裁定を独逸の裁判所が拒否する場合は、どの様な理由が考えられますか?
A ニューヨーク条約上では下記の場合拒否する事が出来ます。
                      記
1. 当事者に法的能力が無い場合、仲裁合意が豪州仲裁地法上又は独逸仲裁地法上無効な場合
2. 仲裁人の選出や仲裁廷の審議に事前の十分な告知がえられなかった場合や仲裁審議に平等な権利が
   与えられなかった場合
3. 裁定の内容が仲裁合意の範囲を超えている場合
   (但し、範囲内の内容に関しては裁定を一部認める事が出来る。)
4. 仲裁廷の設立が仲裁合意や豪州の仲裁地法に反している場合
5. 裁定が仲裁地裁判所で既に無効にされている場合

Case Management
Q 何時裁判が始まるのでしょうか?
A 最初に紛争当事者及び仲裁人全員が集合するのは、Case Management(案件管理)です。
  但し、国際紛争ですので、面会するとは限りません。電話会議等で行なう場合も多いです。
Q Case Managementでは何をするのでしょうか?
A 今後の予定を話し合う席です。また、当事者同士の要望をお伺いする席でもあります。この場で、争点の
  明確化や合意点を纏めます。又反訴等を取り扱います。
  又、仲裁廷に問題が有ればこの席で正さなければなりません。これ以降は仲裁廷は当事者に受
  け入れられたと看做されます。
Q 何を決めるのでしょうか?
A この席で仲裁のルールを決める必要があります。ICCの様な機関仲裁のルールを採用するのか?
  又は国際連合の国際商取引委員会の仲裁ルールを採用するのか?
  仲裁地、言語、口頭審理の場所もこの席で決める必要があります。

Share This