情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ法律事務所-公証役場
主席弁護士・公証人 堀江純一(茨城県弁護士会所属外国法事務弁護士)


 

オーストラリアの法律に関して

海外で会社経営するうえで不安に感じることの一つに現地の法律があげられると思います。ここでは、オーストラリアの法制度等についてご紹介いたします。

豪州法務(73)

正義と秩序(その88)

医者からの診断書は社員に病休の権利を与えるのか?

ズル休みの判例: Anderson v Crown Melbourne Ltd (2008) FMCA

Andersonさんはメルボルンのクラウン・カジノの従業員でした。ラグビー観戦が飯より大好きでした。ある日休みを取りパースまで観戦に行こうとしましたが、年休は使い過ぎて残っておりませんでした。そこで、Andersonさんは同僚に勤務交代をしてくれないかと尋ねましたが、断られました。

困ったAndersonさんにある考えが浮かび上がりました。試合の前日に医者を尋ね、『試合を見ないと精神的病気になる。』と云いました。其れを聞いた医者は診断書を発行致しました。その内容は『Andersonさんは仕事が出来る状態ではない。』でした。
Andersonさんは翌日会社に病気で休むと電話で伝え、パースに飛び予定通りラグビーを観戦致しました。次の日、会社に出社し診断書を提出致しました。しかし、会社側は病休の乱用と判断し、彼を解雇致しました。

怒ったAndersonさんは、クラウン・カジノを不当解雇で連邦裁判所に訴えました。
訴状の内容は下記の通りです。

<訴状>
1.会社に医者の診断書を審議出来る能力は無い。
2.このラグビーは、彼の大好きな選手の最後の試合であった。この試合が見られない事に拠る精神的障害を、会社側に判断出来る能力は無い。
3.試合の日に仮に出社したとしても、試合が気になり仕事にならなかった。

連邦裁判官は下記の様に判決を下しました。

<判決>
1.試合の当日Andersonさんが会社に病休の連絡を入れるまでは、彼が元気であった事は事実である。
2.もし、彼が出社すれば、気分が悪く、多くの失敗をしたかも知れない。しかし、それが健康上仕事が出来ないと云うことではない。
3.当日Andersonさんは肉体的には全く問題が無かった。大好きな選手の最後の試合と言う事で興奮していた事は認めるが、仕事が出来ない程では無かったと思われる。
4.雇用主である会社側は、非雇用主である従業員から提出された健康診断書を審議する権利が有る。
5.会社側はAndersonさんが当日ラグビー観戦をし、其の後パースのカジノで遊んだ事実を得ている。
6.其の事実を基に会社が彼を解雇した事は、不当解雇に繋がらないと結審致しました。

<判決から学ぶ点>
医者の診断書は必ずしも被雇用者に病休の権利を与えるものでは無い。

正義と秩序(その89)

2016年11月19日付けのVisaの変更

 

下記の2つのVisaが新たに誕生します。

1)407 Training
2)408 Temporary Activity

下記の5つのVisaが消滅します。

3)401 Temporary Work
4)402 Training And Research
5)416 Special Program
6)420 Entertainment
7)488 Superyacht Crew

下記の2つのVisaが改正されます。

8)400 Short Stay Specialist
9)403 International Relations

日系企業に影響を与えるのは研修Visaの402から407への変更と思料されます。下記の見取り図をご参照願います。


 

豪州法務(72)

 

● 2016年4月19日の変更点

2016年4月19日に、457ビザに関していくつかの変更がありました。それは、職場での差別防止及び、英語能力証明免除規定に関する変更です。

● 職場での差別防止

この規制は2016年4月19日より厳しくなりました。差別防止法がビザの申請にも適応される様になりました。つまり、雇用主はビザ申請にあたり差別をしてはいけない事を契約する必要があります。

また、雇用主はオーストラリア人労働者を雇っているという確かな記録とそれを証明する報告をする義務が発生致しました。雇用者が457ビザに頼って外国人労働者ばかりを雇い、オーストラリア人を雇わない事を防ぐためです。

雇用主は書類を保管しておく必要があります。457ビザ所持者がどの様に雇用され、ビザ申請において、入国資格や市民権による差別が行われなかったことを証明するためです。移民局がこの義務に対する違反を調べに入る事を考慮して、書類を整えておく必要があります。

● 英語能力免除範囲の拡大化

457ビザ申請者が職業資格を得る際に英語能力が課されている場合、英語能力試験結果を提出する必要がなくなりました。

● 457ビザ所持者はパートタイムで働くことはできるのでしょうか?

457ビザは正社員で働く事を前提としております。もし労働時間を減らす、又は、パートタイムに切り替えようとしている場合、ビザの発行条件を満たしているか否か十分考慮する必要があります。例外として、移民局は労働時間の短縮を認めますが、減給する事は認めません。

正義と秩序(その86)

公証人の歴史 

公証人の起源は、古代のローマ共和国にまで遡ります。当時はscribae(「記録者」)、tabellius(「公言人」)、またはnotariusと呼ばれておりました。

公証人が法曹界の中では、最も古い職種であることは明らかな事です。

公証人の勤め先は公証役場です。公証役場の歴史は非常に長く、起源は古代ローマの文民制度に位置づけられます。事実の証言と訴訟手続の単なる司法書士業務から、scribaeすなわち「記録者」と呼ばれる公務員に発展しました。

そのうちの何人かは、上院議会に属する正規の役人でした。その仕事は、公的な議事録を記録すること、判決の公的な文章化、行政長官に公文書を提出すること、及び行政長官の法令や命令を記録することでした。

共和国の最後の世紀、恐らくキケロの時代には、彼の養子息子マルクス・トゥリウス・ティロによって、新しく速記術が発明されました。この速記術は後に彼によって’notae Tironianae’と名づけられました。notaeと呼ばれる恣意的な記号・文字は、一般的に使われている単語に代用されました。速記術をマスターした書記官がnotariusと呼ばれるようになりました。つまり、元来、公証人は、これらの文字を使う速記者であり、覚書またはメモの形で書きおろしておりました。後に、職名notariusは、地方の知事と皇帝の秘書官を含む、高い政府高官に付属していた記録者を意味する事になります。

紀元5世紀に西ローマ帝国が崩壊し暗黒時代に突入したにもかかわらず、公証人は、ヨーロッパ大陸で広く、重要な存在であり続けました。12世紀以降、中世イタリアでルネッサンスを迎えてから、公証人は、法曹界の中心的な職業として確立しました。公証人はヨーロッパと南アメリカを含む大陸法を基本とする法律体系を持つ国々の中で、その地位を維持し続けたのでした。公証人の活躍は、12世紀にイタリアのボローニャで最高の地位を迎えました。有名な御曹司はRolandino of Bolognaとして知られているRolandino Passeggeriでした。彼は紀元1300年に亡くなりました。彼の傑作はSumma Artis Notariaeです。

イギリスは、ローマ法の影響をほとんど受けず、 独自に慣習法を発展させてきました。13、14世紀後半まで、公証人制度が導入されませんでした。当初、イギリスの公証人はローマ教皇の使節者から任命されていました。1279年に、カンタベリー大司教は、公証人を任命する権限をローマ法王から与えられました。驚くべきではないですが、当時、公証人の多くは聖職者の一員でもありました。その後、聖職者たちは、世俗のビジネスや俗人との関わりをしなくなりました。従い、特に都市や貿易が盛んな町の中で、慣習法の公証人の公的資格及びその機能を正式に認めるようになりました。

宗教改革は、イギリスの公証人の地位と機能になんら実質的変化をもたらしませんでした。しかし、1533年に上訴禁止法を立法したことで、ローマ法王の公証人を任命する権力を無効とし、イギリス国王に譲渡されました。その後、国王はその権力をカンタベリー大司教に譲渡し、その後、最高裁判所と最高裁判長に委託しました。

公証人は、伝統的に、司法の重要な問題と同様に、民間取引や出来事も記録しておりました。つまり、専門的技能または知識によって作成され、公式に認証を受けた記録又は文書が必要な際に公証人が呼ばれたのです。

公証人の役割

 

イギリスおよび他の慣習法国の公証人の義務と機能は、『Brooke’s Notary』の19ページにおいて下記のように説明されています:

… 通常、公証人は法律の役人と評されます。公証人の役職と義務に関しては、公式な捺印行為によって、遺書、他の遺言による文書、個人財産の譲渡や弁護人依頼、といった証書やその他の書類等を認証すること;公証人の署名・印鑑によってそれらの文書を公文化すること。法的文書が扱われる司法又は公的権威に対して、それらの書類は公証人に認証されて初めて、正式な公文書となります。つまり、公証認証をすることで、私的文書を公文化させ、公的機関で取り扱われる書類となります。;書面の写しの認証、書面の内容の認証。;裁判所に提出する証言書の認証。;契約書の証人証書。加えて、貿易取引や交渉、又は貨物容量に関連するクレームや他の公的書類を作成する。

公証人は北アメリカのほとんどの国を除き、オーストラリア及びニュージーランドを含むほとんどすべての慣習法国家において、司法書類の作成及び取り扱いに慣れた、弁護士です。公証人は、司法の重要な書類の記録だけでなく、伝統的に、民間取引や公文書、専門的技能または知識によって作成された書類が必要とされる際に起用されてきました。公証人の役割は、特定の文書(国際的な契約、証書、遺書、および委任状を含む)の準備、死刑執行の認定、宣誓供述書の立会い、及び、法令の施行、コピー文書の証明、為替手形の承認、および船荷のクレームの作成が中心的なものです。

オーストラリア及びニュージーランドにおいて公証人は、初めに、植民地総督によって任命を受けました。次第に、東オーストラリアの州が発展すると、カンタベリー大司教によって任命されるようになりました。その後、オーストラリアのいくつかの州に公証人の活動が広まり、最高裁判所によって任命されるようになりました。しかし、ニュージーランド及びクイーンズランド州では、未だにカンタベリー大司教に任命権があります。

正義と秩序(その87)

フェアー・ワークUpdate
有休の取り扱いに関する変更

 

2016年7月29日にフェアー・ワーク委員会は下記の点について変更を致しました。

1.休暇の現金化
2.有休の前取り
3.有休の取り扱い
4.有休の支払い方法

1.休暇の現金化

新しい規制では、下記の点が変更になりました。

・現金化した後、少なくとも4週間分の有休を残している事
・文書で残すこと
・年間の現金化は50%以下である事

2.有休の前取り

新しい規制では、有休の前取りが認められました。雇用主が事前に書面で同意した場合に適用されます。同意書では、下記の項目が必要とされます。

・雇用主及び被雇用者が署名をする事
・前取りする有休の日数が記載されている事
・前取りする有休の開始日が記載されている事

 

3.有休の取り扱い

被雇用者が8週間以上(シフト制の場合は10週間以上)の休暇を貯めている場合の有休の取り扱いに変更がなされました。

雇用者による指示―被雇用者が有休を取ろうとしない場合、雇用者は下記の要領で有休を取らせる事が出来ます。

・被雇用者に文書で有休を取る指示を通達する事
・被雇用者に、8-12週間以前に有休開始日を通達する事

取得するべき有休の期間と、その後、残されていなければならない年間有休の日数についての規制もあります。

4.有休支払い方法

有休を取る前に雇用者は被雇用者に前払いで休暇中のお給料をお支払いしなければならない職種もあります。但し、電子送金の場合はこの限りではありません。

 豪州法務(71)

航空法の未来について

無人航空機(UAV)が今後、商業・娯楽に急速に活用されていくのは疑う余地もありません。かつては、何千ドルもかかっていたものが、今や、数百ドルで手に入れられるほど、無人航空機はより入手しやすくなっております。
ただ、無人航空機の使用法について、法的観点にて多くの疑問が不明確なまま残されております。重要なのは安全性・プライバシー・管理義務の問題です。幣法律事務所では無人航空機の事例はまだあまり多くは扱っておりませんが、将来、法曹界は多くの問題に直面することが予想されます。今回は、無人航空機使用法に関する法律概要をご説明するとともに、事業主の方々に対しいくつかのご提案を致します。

使用法

例えば、無人航空機の現在の一般的なユーザーとして不動産業者が挙げられます。以前は、買い手に地理的位置を提示する際、ヘリコプターから航空写真を撮っていました。低空から写真を撮る場合、効率性と容易性の観点で、無人航空機がより有効な手段となっています。
建設業者の間でも、無人航空機が計画・施工両段階において地理的調査のために使用され始めています。警察当局も安全監視目的で従来の高速道路パトロールなどに代わって無人航空機を使っていく可能性もありそうです。
放送業や農業、娯楽業界、及び、新たな監視や交通手段を所持する業界領域では、無人航空機を航空の未来と断言できるでしょう。しかし、この新しいテクノロジーを活用するにおいて、無人航空機をどのような規制や法律が取り締まるかという多くの疑問が未だに残っています。

規制

これまで、無人航空機の取り扱いには自家用操縦士免許が必要であるとされてきました。しかし無人航空機の場合、オペレーターは地上にいるので、この適用がふさわしいか疑問が残ります。無人航空機操縦士の資格は本来、CASA(民間航空当局)ではなく、RMS(ニューサウスウェールズ州道路・海上局)に属すべきだと言えます。オペレーターは無人航空機を操作する資格を得るために知識テストと技術テストを受けるべきです。

現在の規制はCivil Aviation Safety Rulesの第101項に規定されており、以下のルールがあります。

・無人航空機は許可なしに居住地上空を飛行することはできない
・大型無人航空機(100kg以上の回転翼機と150kg以上の固定翼機)はCASAからの許可が必要である
・夜間飛行の規制
・人や飛行体、私的又は公共財産に危害を及ぼす物を無人航空機から落下させてはならない
・無人航空機は例外的に飛行場、特に滑走路、離陸路・着陸路の近くで操縦されてはならない
・無人航空機は人(第三者)との間が30メートル以内では飛行してはならない
・多数の人が集まる催しの上空を飛行させてはならない

この規制下では個々のルールに9000ドル以下の違反金が課されます。
CASAは安全性に焦点をおいていることは確かですが、無人航空機に関する新しい規制を課すまでは、その他の全ての法的問題が明確にされる可能性は低そうです。
以下では、無人航空機の操縦に適用され得るオーストラリア内の現在の他の法律を取り上げます。無人航空機を扱う事業主の方々は、法的注意義務と課されうる違反に配慮しましょう。

プライバシー問題

オーストラリアはプライバシーを特に保護する法律がありません。しかし、無人航空機を誤って使用することで問題となる事件が多くあります。
飛行機は高度1000ft以上を飛行することが必要とされています。従って、無人航空機はこの高度以下の空域を飛行することが定められています。私有地上空を飛行する際には、許可が必要です。土地所有者がその土地の空域を所有しているので、その空域を飛行することは現在の法律では不法侵入に等しく、私的・公的妨害の問題となります。
ニューサウスウェールズ州法のもとでは、記録・観察をするために、故意に乗り物に監視カメラを取り付け、許可なしに私有地に侵入することはできません。これはSurveillance Devices Act 2007に基づきます。乗り物とは飛行機を含み、違反すると高額の罰金又は5年以下の懲役が課されます。これがどのように無人航空機に応用されるかは検討中ですが、例えば、個人がスパイ目的で無人航空機にカメラを載せ、近隣住民の私有地上空を長時間に渡って旋回させた場合、この法律が適用される可能性は高いです。しかし、オペレーターが許可なしに私有地に侵入する場合のみに適用されるため、同じ行為でも、オペレーターの所有地から、同意のもとで他人の私有地上空を飛行させた場合は、違反とならないでしょう。
オフィス、レストラン、ホテルなどの多くの場で安全監視のために、無人航空機を活用することは有効ですが、ここでの無人航空機は、CCTVに応用されている同じ法律、またはそれに近い法律の対象となる可能性が高いので、オペレーターは注意が必要です。

過失と注意義務

オーストラリアの法体制では、過失に対する法律が整備されており、これが最も娯楽・商業における無人航空機操業者に関係することでしょう。
Civil Liability Act 2002に基づき、一般的に、法的過失と見なされるには、いくつかの要素を満たす必要があります。特に、「常識的な人」はどのように考えるのか、どうするのかという点で注意義務を判断しています。そのため、ここでの争点は、常識人がどのようにリスクを予想し、どのような深刻な危害がもたらされるのかを考慮して対策を講じるのかという点です。無人航空機の操縦に関しても同様に、常識ある行動が求められています。

違反についてお話します。違反の深刻さはどれだけその危害が予測可能であったか、操縦者の行動が常識的であったかどうかによって決まります。例えば、無人航空機を公園付近で飛ばしていて車にぶつけ、窓を割るという事例を考えましょう。周辺の公的・私的財産(今回の車)に危害を加えないようにする注意義務があることは明らかです。この場合、十分な考慮なしに、ドローンで窓を割ったことが義務違反と見なされます。この過失は車の所有者に被害金額を賠償しなければならないことを意味します。
もしかしたら、窓を割ったことは過失ではないという見方もあるでしょう。例えば、無人航空機が突如空から落ちてたくさんの見物人が続けざまに怪我を負ったというアメリカで起きた最近の事例のように、おそらく上空で無人航空機のバッテリーが切れたのかもしれません。この事例でも、操縦責任・管理責任は操縦者にあります。無人航空機が人やモノに危害や傷害を与えた場合、法的責任から逃れるのはとても難しいと思慮されます。

必要な経験や知識なしに無人航空機を操縦した場合、この事例は更に代償の大きいものになり得ます。業務上作業員に無人航空機を飛行させる際には、雇用主は使用者責任を考慮しなければいけません。
ニューサウスウェールズ州のライクハート地方議会が公園でのドローンの使用を禁止しました。これは特に子どものプライバシーや安全を守るためです。娯楽目的のドローンによって傷害や危害がもたらされる事例が発覚していることから、他の地方議会もこれに倣う可能性がありそうです。もし、公園で無人航空機を操縦する場合は、その地域に特定の規制があるか確認しなければなりません。

終わりに

現在、そして今後、無人航空機の使用法に影響を与えうる法律は多岐にわたります。これまで、その中のごく一部を取り上げてきましたが、無人航空機の人気が高まるにつれて、適応される新しい規制や法律はほぼ間違いなく増えていくでしょう。無人航空機を操縦する皆さんはあらかじめ関連する全ての規制と適用される法律、特にCASAの規制を読み、都度、確認するべきです。

正義と秩序(その82)

457ビザ制度の抜本的な見直しの提言
―駐在員コスト増大の可能性―

「国の不面目〜現在の労働ビザ保持者による不当利用」と題されたレポートの中で、上院委員会は事実上457ビザ制度の抜本的な見直しを提言しています。
レポート内には以下の様な改定案が記されています。

・TSMIT(移民労働者に対する課税最低額)は2015年7月1日におけるAWOTE(フルタイム労働者の平均週間収入)に基づいて決定する。上記の様な課税最低額のスライドは、ABS(オーストラリア統計局)の統計に基づいて会計年度毎に行う。(現在のAWOTEは約1,500ドル/週、もしくは78,000ドル/年)
・現在行われている、ANZSCO(オーストラリア・ニュージーランド標準職業分類)においてスキルレベル1および2の職業に対する職業市場調査の免除を取り止める。以後は、移民局との労働協約およびDAMA(特定地域移民協約)に基づいて認可を受けているスポンサーによる全ての職種のノミネートに対して市場調査の実施を要求することとする。
・現在のtraining benchmarks(研修に対する一定比率の支出義務)の代わりにtraining levy(研修課税)を実施する。457ビザ保持者一人あたり最大4,000ドルの税金を雇用者に課すこととする。
・国内労働者に対して同等かそれ以上の雇用機会を与える。457ビザ保持労働者一人を雇用する毎にオーストラリア人労働者を一人雇用すること、また全労働者の1/4以上はオーストラリア人とすることを雇用者に課す。
・MACSM(移民労働者に関する諮問機関)の見直し案で、機関の独立性を高め、政府に対して労働者不足・研修ニーズ・労働生産高・労働移民などに関する諸問題を根拠に基づいて客観的に助言することが出来るようにする。

信頼出来ないような経営者や企業による不当利用を根絶させようとして多くの変革をもたらす事は歓迎すべきですが、一方で小規模事業者にとっては国際的な人材を確保するためのコストが高くなり、事業効率が悪くなるという害を被る可能性があります。

レポートの全文はこちらをご覧下さい。
http://www.aph.gov.au/Parliamentary_Business/Committees/Senate/
Education_and_Employment/temporary_work_visa/Report

 

正義と秩序(その83)

オーストラリア 就労関連ビザ概要

Visa Class

①ビザ要旨 ②申請資格 ③申請方法

400 Temporary Work(Short Stay Activity)Visa

① オーストラリアで行う業務が高度のスキルを要し、なおかつ短期的、非継続的であることが条件。ビザ期間は審査によって決定し、原則3ヶ月(状況に応じて最長6ヶ月間までの延長が可能)。ビザ発給後6ヶ月以内に渡航が必要。

② 渡航目的が
(1)特定の目的、または特化した職務で一時的な就労
(2)文化的・社会的なイベントに参加し賞金などが発生する場合
(3)災害救援などのオーストラリアにとって国益となる限定的な活動、のいずれかに該当すること、健康基準と、犯罪歴などの人物審査の基準を満たしていること

③ 移民局のウェブサイト http://www.border.gov.au より申請可能。

402 Training and Research Visa(Occupational Trainee stream)

① オーストラリア国内で研修や研究活動を行うためのビザ。このビザには

(1)Occupational Trainee stream オーストラリア企業での職業研修を受けるためのビザ
(2)Professional Development stream 専門家がオーストラリアの開発研修プログラムに参加するためのビザ
(3)Research stream オーストラリアの大学や研究機関にて研究に参加するためのビザ
の3つのサブクラスに分かれている。本文では特に(1)について記述する。

② 受け入れ先の現地企業がスポンサーとなる必要があり、以下の3段階の審査を経る必要がある
ⅰスポンサーシップ
受け入れ先(オーストラリア現地企業など)の審査、安定した事業実績・十分に研修を提供できる状態・法令遵守

ⅱ ノミネーション
ポジション(職業)の審査、職業リスト(CSOL)に含まれているか・職種に応じた給与・研修計画の内容

ⅲ 申請者
ビザの申請者の審査、18歳以上・相応の英語力(但し証明の必要なし)・関連する就学もしくは職務経験・健康基準と、犯罪歴などの人物審査の基準を満たしているこ

③移民局のウェブサイト http://www.border.gov.au より申請可能

457 Temporary Work(Skilled)Visa

① オーストラリア国内にて就労するためのビザ。ビザ期間は最長4年間で、この間の出入国は自由。また、扶養家族を同行させることができる

②受け入れ先の現地企業がスポンサーとなる必要があり、以下の3段階の審査を経る必要がある

ⅰ スポンサーシップ
受け入れ先(オーストラリア現地企業など)の審査、安定した事業実績・適切な研修経歴・法令遵守

ⅱ ノミネーション
ポジション(職業)の審査、職業リスト(CSOL)に含まれているか・職種に応じた給与(TSMIT:最低額53,900豪ドル)・労働市場テスト

ⅲ 申請者
ビザの申請者の審査、相応の英語力(原則IELTS5.0以上)・健康基準と、犯罪歴などの人物審査の基準を満たしていること

③移民局のウェブサイト http://www.border.gov.au より申請可能

ETA Electric Travel Authority System(Subclass601)

① 3ヶ月までの短期観光と短期商用公用目的のためのビザ。観光、親族訪問、短期商用(公用、商談、会議・学会出席など)の目的に限られ、就労は禁じられている。

② ETAS対象国籍のパスポート保持者(日本国籍であれば申請可能)
健康基準と、犯罪歴などの人物審査の基準を満たしていること

③ ウェブサイト http://www.eta.immi.gov.au (日本語対応) にて申請。もしくは旅行代理店、航空会社を通じて登録。大使館では受け付けていない。オンライン申請にはシステム利用手数料20豪ドルをクレジットカード決済することが必要。

 

正義と秩序(その84)

 

統合・買収と独占禁止法

企業統合とは2社が統合することであり、企業買収とは1社が他社を買収することを意味します。市場が絶えず変わりゆく中で、統合や買収は長期的な企業の確実性と収益性を確保するため重要となります。これらは、経済的効果を生み、市場への影響力もかなり大きなものです。しかし、結合前に法的規制と潜在的な利益が適切であるか考慮することが重要です。オーストラリアの独占禁止法とACCCがどのように企業結合を審査し、非認可するかについて解説いたします。

オーストラリア独占禁止法とACCC

オーストラリア独占禁止法とオーストラリア独禁・消費者委員会(ACCC)は企業結合審査権を保持します。これは、Competition and Consumer Act 2010に規定されています。
企業結合が反競争行為に陥る場合、消費者に大きな損害を与えることとなります。したがって、ACCCは、企業結合の影響力を審査するために、企業結合を検討している企業に対し、事前に申請することを求めています。ここでの当該法人とは以下の最低基準を超える企業です。

1.当該法人の製品がそれぞれ代用品となり補完するものであること
2.結合後、当該法人の市場シェアが20%以上となること

ACCCは事前申請を求める強制力をもちませんが、当該法人は事前に申請するべきでしょう。申請すればACCCが企業結合に反対する禁止命令を下すかどうか事前に把握することができます。あるいは、当該法人はACCCからの正式な認可を得ることもできます。認可が下りれば、結合を妨げられることもありません。

通常、市場シェアによって蓋然性を図ります。いくつかの市場にわたる場合、最も市場競争に影響を与える市場にて、市場シェアを計ります。

反競争行為について

ACCCは競争の実質的減殺効果を懸念しています。例えば、企業統合の後、独占的に価格をかなり吊り上げたり、企業が価格を比例して下げることなしに品質を落としたりすることです。市場シェアが大きくなり、市場競争が弱まることで、消費者は被害を受ける一方、企業側は長期的に莫大な収益を勝ち得ます。市場競争の低下は、同じ市場で同じ製品やサービス、似た客層をもつ2社の統合、つまり、水平統合を推し進めることになるかもしれません。ACCCが競争の実質的減殺効果の有無を評価する際には,次の事項を考慮します。これはCompetition and Consumer Act 2010の法第50条(3)に規定されます。

(a)当該市場における実際の及び潜在的な輸入競争の程度
(b)当該市場における参入障壁の高さ
(c)当該市場における集中度
(d)当該市場における対抗力の程度
(e)取得者が、当該取得によって、価格又はマージンを著しく、かつ、持続的に引き上げる可能性
(f)当該市場において代替商品又は役務が入手可能な程度
(g)当該市場の動的な特徴-成長性、革新性、製品差別化等
(h)当該取得が、活発かつ有力な競争業者を当該市場から退出させる可能性
(i)当該市場における垂直統合の性質と程度

ACCCの企業結合審査

当該取得が市場における競争を実質的に減殺する効果を有するかどうかの判断は、市場状況により異なります。前述の事項は、市場状況によって、評価基準とされる影響力や比率が異なります。さらに、ACCCの評価基準は、結合後の市場シェアの比率だけでなく、不確定要素も含みます。

たとえば、審査過程で、企業結合の効果を検討します。1、2年後にどのような影響を企業結合がもたらすのかを分析するということです。これは、企業結合が為された場合の市場予測と、企業結合がなかった場合の市場予測を比較する分析です。殆どの場合、現在の市場競争と同じような市場であるとする予測が多いのですが、ACCCは、結合がなかった場合の市場競争がどのような状況であるかを判断するためにさまざまな調査手段を用いて、あらゆる要素を考慮します。例えば、当該法人のうち一つが近い将来、存続しているか(いわゆる経営不振ということですが)を判断する特定の調査があり、これは最終評価に大きな影響を与えます。
他の要素に、企業結合後、新たな企業が市場参入の余地があるかという点があります。企業結合後の市場力が制限されており、統合後の競争を実質的に減殺する効果がないことが必要であるということです。つまり、新規の市場参入によって、市場結合によってもたらされる市場力が中和される余地があるということです。
さらに、実質的に輸入競争があるかという点です。輸入競争は、企業結合した当該法人の競争上の優位性を制限できるからです。つまり、ACCCは輸入の拡大の可能性と障壁を考慮して審査します。

他の考慮点は以下の通りです。

・代用品の利用可能性
・当該市場の競合の存在
・当該市場における供給側の値上げを制限するほどの力をもつ買い手の存在
・さまざまな要素と当該市場の流動性
・活発で効果的な競合会社、若しくは、異端会社との企業結合
・近い規制や政策
・市場効果
・輸入輸出市場への潜在的影響

ACCCは当該法人が許可をとるために体裁上の目的で実行した行為にとても慎重です。結合前に当該法人が新しい規制や政策を施したとしても、ACCCは考慮しません。

ACCCの企業結合審査に関する決定
基本的に、委員会は提出された情報に一致しているかどうかに基づいて企業結合審査を進めます。最終的には、法第50条に違反する見込みがある、又は、法第50条に違反しないと見込まれるという二択に決定付けられます。
ACCCが非公式の調査として調査した際にも、当該法人に結果が伝えられます。その際、結合を勧められなかったとしても、結合することが禁じられたわけではありません。しかし、この場合、ACCCが結合が実行されることに対して禁止命令を発する権利を行使する可能性は高いです。

もしACCCが正式な結合許可を下した場合、競争の実質的減殺効果はないと結論付けられたということです。法第50条に基づいて、ACCC、その他いかなる関係者も企業結合を妨害することはできないことを意味します。
当該法人はオーストラリア競争審判所に企業結合の認可の申請をすることも可能です。企業結合が公共の利益であると考えられた際に認可されます。認可が下りれば、法第50条に基づいていかなる関係者(ACCCを含む)も抗議することが禁じられます。

終わりに

企業統合・買収に関する競争法は複雑で企業法人や産業、市場にそれぞれ違った影響を与えます。これまで、オーストラリア市場における企業結合審査の過程の一般的な方針を示してきましたが、企業結合を進める前に専門的な法的アドバイスに耳を傾ける必要があるでしょう。

 豪州法務(70)

(457 Temporary Business Sponsorship Visas)

移民局が定めたリスト(CSOL)に掲載されている職種(Skill)保有者が、雇用主から雇用契約を受けた場合に申請可能になる4年間の暫定ビザ です。雇用主側にも多くの条件が課せられます。 海外長期赴任に伴う、取得ビザもこのタイプです。雇用主事業者がオーストラリアか海外かは関係なく、オーストラリアに雇用ベースがあり、事業運営が豪州国 内であり、豪州政府に納税義務をおっている事業母体があることが雇用主の一つの条件になります。 優良事業者にスポンサーされた場合は、ほとんどの場合、S457が発給されます。

S457の申請は3パートに分かれています(実際には3つの申請を同時に行った方がプロセスが早いので同時に行う)。まず、Sponsorshipの申請、Nominationの申請、VISAの申請です。

条件(Criteria)

 

1.  雇用主側(スポンサーシップSponsorship)

雇用主が、ビザのスポンサーとなるに適しているか審査。

– 合法的なビジネス運営がなされている
– 過去の業務実績が十分なものである
– ビジネス運営において、適切なトレーニングプログラムを組んでいる

2.ポジションノミネーション(Nomination)

– 申請ポジション(Skill)が CSOL (Consolidated Sponsored Occupations List)に掲載されている。
– 年間報酬が最低規定金額(currently $53,900)を確約できる
– 雇用契約がオーストラリアの労働法に批准したものであること。(ポジションが、オーストラリア人を雇用した場合と同様の内容となる事)

3.申請者アプリケーション(Visa Application)

申請者は、ノミネートされたポジションにて就労するためのビザ申請を行います。主な申請条件は以下:

– ポジションに適するSkillを保有している事を証明する。
– 英語力を証明する。
– 健康状態及無犯罪経歴を証明する。

雇用主指名永住ビザ(Employer Nomination Scheme(ENS) Subclass 186 Visas)

S457の永住権版と言えます。S457保有者が、諸条件が揃った時点で、ENSに切り替え申請するケースが最も多いですが、直接ENSに申請する 事も可能です。ただし、S457よりも、要求されるスキルレベル(Skill Level)は高いと言えます(S457では求められなかったSkill AssessmentがENSでは求められる等)。

2つの申請ステージ(ENS Stages)

S186(ENS)の申請には2つのステージがあります。

雇用主ノミネーション(Nomination):
雇用主がビザのスポンサーになるのにふさわしいかの審査です。主にビジネスが良好か、経営状態を審査されます。

申請者アプリケーション(Visa Application):
これには下記、3つのパスウェイがあります。移民局はSkill Assessmentの提出、英語力の証明、健康診断、無犯罪証明書の提出を求めます。

3種類の申請(Application Pathways)

ENSには下記3種類の申請方法があります。

1. Temporary Residence Transition:
既に、S457にて上記エリアにて2年以上就労している人が申請可能。この場合、Skill Assessmentは不要で、英語力はIELTS 5レベルです。

2. Direct Entry Stream:
Skill Assessmentの提出が求められ、なおかつそのSkillで3年以上の職歴を有していることが条件です。英語力はIELTS 6レベルが必要になります。

3. Agreement Stream:
雇用主が「Labour Agreement」を持っている場合。

ENS申請の一般的な問題点(Common Issues with ENS Visas)

ENS申請には、S457よりも高度なレベルの書類提出が求められます。特にENS申請においてよく聞く問題は以下の3点です。

– Skill Assessmentの提出。(ただし状況次第で避ける事が可能)
– 雇用主が実績のあるトレーニングプログラムを証明(”satisfactory record of training” requirement)

申請者が、英語力・年齢・スキルレベルで、規定を満たしていない場合、その免除を受けるための証拠立て。

 

正義と秩序(その78)

オーストラリアで事業を展開するには?
−子会社設立・登記のガイドライン−

オーストラリア会社法(Corporations Act 2001)では、海外企業は「オーストラリア国外で設立された事業団体」と定義されます。これには単独コーポレーション(Corporation sole)、公共機関、特定の非法人団体は含まれません。

登記義務

オーストラリアで海外企業が事業を行うには、オーストラリア法に従って登記を行う必要があります。オーストラリア国内に子会社を設立するにはASIC(Australian Securities and Investments Commission)に登記し、親会社がARBN(Australian Registered Body Number)を取得する必要があります。

登記が完了すると、子会社は税務などに用いられるABN(Australian Business Number)を取得出来ます。これによりGST(物品サービス税)、高級車税、ワイン平衡税といった諸税への納税登録を行う事が可能になります。

海外企業がASICへ登記を行うには、以下の様な項目を提出する必要があります。

・企業設立を証明できる書類の有効な複写
・企業定款の有効な複写
・住居地、生年月日などの個人情報を記載した取締役リスト
・取締役の権限を認める旨の覚書
・登録事業所もしくは主な営業所の所在地
・その他、ASICが求める情報
・連絡が取れる登録事業所(営業日は午前9時〜午後5時の間、少なくとも3時間以上は営業していなくてはならない)

英語以外で書かれた書類は、全て英訳した有効な複写を添付しなければなりません。
その他必要とされるフォーム、手数料、添付書類をASICへ提出します。

登記後

登記後、ASICよりARBNが付与されます。登記が完了した海外企業は、オーストラリア国内の現地に代理人を任命する必要があります。任命された代理人はオーストラリアでの事業において個人的に責任を負う事となりますが、あらゆる面で会社の代理人として活動することが可能です。この代理人の任命もまたASICへ提出することが義務づけられています。

また、登記完了後には当該会計年度の賃借対照表をASICへ毎年提出する義務が発生します。提出は最大で15ヶ月以上の期間離れないようになされなければなりません。

企業名を記載したレターヘッド付きの文書、その他企業が主体として発行された社外向けの文書には全てARBNを記載する事が義務付けられています。この他にも、登録事業所には企業名を掲げること、事業内容に大きな変更があった場合はASICへ報告することなどの義務が発生します。また、会社法(Corporations Act 2001)では、取締役・現地代理人およびその詳細に変更があった場合はその変更から1ヶ月以内に届け出るよう定められています。

子会社の企業構成

オーストラリア国内に単に支店を持つ場合とは違い、子会社を設立する場合には企業の財政状況と長期的な戦略をしっかりと吟味する事が重要です。子会社がオーストラリアで採用できる企業形態にはいくつかの選択肢がありますが、その中で最適と考えられる企業形態は財政状況や事業種によって異なります。

通常、新規でオーストラリアに子会社を設立する場合は、株式取引を制限した非公開会社とするのが最も適当です。非公開会社であれば、大会社に適用される様々な情報開示義務を回避する事が出来ます。しかしながら、さらに適した企業形態の可能性を探るために綿密な調査をなされることをお勧めします。採りうる企業形態は他に公開会社、合名会社、事業信託、企業結合などがあります。

非公開会社の設立

オーストラリアで小会社が設立されると海外企業本社を事前に登録する事無くACN(Australian Company Number)を取得する事が出来ます。

ABNの取得の際には取締役、納税管理人、主要株主のリストを提出しなければなりません。もちろん、親会社を主要株主として登録可能ですが、その場合には親会社のARBNを記載する必要があります。

ABNの申込用紙は、要望を出すとそのままGSTや高級車税への登録に流用する事が出来ます。その他の登録に関してはABN取得後に申込みを行います。
一度子会社が設立されると、会社法を遵守し、子会社が該当する義務に留意しなければなりません。

M&A(企業買収)

仮に子会社が買収された場合、もしくは海外企業本社が他企業と合併した場合などでも、依然としてASICに対する企業形態変更の報告義務は残ります。合併や買収が行われると企業は大きな変化を経る事となります。

変更より1ヶ月以内に下記に関する報告をASICへ提出しなければなりません。

・新たな企業定款
・住居地、生年月日などの個人情報を記載した新たな取締役リスト
・取締役の権限を認める旨の新たな覚書
・所在地の変更
・資本・株式の変更に関する会計報告書
・新たな企業設立を証明する書類(新規設立をした場合)

合併・買収が完了した後、企業要件を満たしているかを確認するために新たな変更があった情報に関しては全てASICへの報告義務が発生します。

もちろん、企業名の変更等といった合併・買収に起因するその他の事項に関する変更もASICへの報告義務があります。

結び

海外企業がオーストラリア進出を計画したとき、親会社及び子会社に要求される登記の手順は複雑なものです。さらに、買収・合併を行うには長い期間とオーストラリアのビジネス・法律に関する膨大な知識が必要とされます。要件や細かな注意点などへの十分な知識を持たずに行うと、結果的に時間と費用を必要以上に失う事になります。
また、オーストラリア法の下で、登記した海外企業やオーストラリア国内の会社に課される義務が現行でどのような内容になっているかに注意し続ける必要があります。

正義と秩序(その79)

取引企業の支払い不能時に
不公平な優先弁済を受けたとみなされないためには?
−在豪債権者の方へのガイドライン−

ある企業が支払い不能となり清算人が任命されると、清算人はその企業が支払い不能となった前後において優先的に支払われた金銭を取り戻す権利を有します。例えば、過去6ヶ月の間に不公平な優先弁済が一債権者になされたと考えられる場合には清算人がその弁済分を債権者より回収することが出来ます。
企業の支払い不能時には全ての債権者は平等に扱われ、清算までに行われた取引については徹底的に査定される事になります。

従って、こうした状況で起こり得る損失を緩和するために、債権者は自らの法的権利及び責任についてしっかりと認識しなければなりません。もし、貴社に対して清算人からの返金要求があった場合には、適切な方策を講じるためにも法律の専門家へ相談する事が重要です。

不公平な優先弁済とはどのようなものか?

清算人は会社法(Corporations Act 2001)に従い取引が不公平な優先弁済に該当することを証明する責任を負います。
まず、債権者と当該企業間で取引が行われたという事実を証明します。次に、債権者が清算人の要求通りに返金をしてその後に破産企業からの平等な取り分を受け取るという過程をたどると現在より取り分が減損する、つまり然るべき手順を超えた額を債権者が手にしていたという事を証明しなければなりません。もし債権者が余分な利益を受け取っていると判断されなかった場合は不公平な優先弁済には当たりません。

清算人が該当期間中の取引を洗い出す時、通常の取引では考えられないような額の支払などを発見すると不公平な優先弁済の嫌疑がかけられます。該当期間は条件によって異なり、通常の場合は6ヶ月、取引の相手方が当該企業に関連する企業・私人の場合は4年、特別に他の債権者から搾取する等の悪意が認められる場合は10年となっています。

債権者が為せる抗弁

こうした状況で債権者が行いうる抗弁についても同会社法(Corporations Act 2001, Section 588FG)に記載されています。

a. 当該取引が誠実に行われた事
b. 当該支払に対して約因(対価)が存在する事
c. 債権者が相手方企業が支払い不能状態もしくはその様な状態に陥りかけているというような疑いを持たず、また疑う理由も無かった事(主観要件)
d. およそ分別のある人間であれば、取引時において当該企業が支払い不能状態もしくはその様な状態に陥りかけているというような疑いを持たず、また疑う理由も無かったであろうと考えられる事(客観要件)

もしこれらの要件を証明する事が出来れば抗弁が成立します。要件の証明責任は債権者にあります。最近の判例では要件のc.とd.の両方を債権者が証明する事が必須となっています。

上記の通り、ただ債権者自身が相手方企業の状態に対して疑いを持っていなかったという事実だけでは足りず、分別のある人間が当該企業の状態に対して疑いを持つ理由が無かったという事実を証明しなければなりません。逆の言い方をすると、分別のある人間であれば疑う理由があったという事実がある場合にはこの抗弁は成立しません。ただし、最近の判例を参照しますと「債務者が支払期日までに支払を行わなかった」という事実だけでは支払い不能状態であると疑う理由にはならないという判断がなされています。

他に債権者が取りうる手段として「継続的な取引関係」を主張する事が考えられます。債権者と債務者の間に継続的な取引が存在すると、結果として当座預金に支払の経過が記録される事になります。この場合、継続的な取引の範疇と考えられる全期間の取引がまとめて一つの取引として見なされます。不公平な優先弁済は、この継続的な取引全てで支払われた総額が対価として供された財やサービスを超えると考えられる場合にのみ適用されます。
これは「継続的な取引関係」を主張するものですので、一度きりの取引関係では適用し得ない事をご注意下さい。

債権を守るために取るべき他の方策

債務者が支払い不能に陥る可能性がある場合に債権者として債権を守るための方策がいくつかあります。以下に挙げたものの他にも、代金先払い方式で取引を行うなど、それぞれの状況に応じた手段が考えられます。

・債権に担保を設定する

債権に担保を設定しておく事で債権の確実性をある程度高める事が出来ます。もし貴社が動産に対して担保権を設定し、PPSR(動産担保登録制度)へ登録した場合、債務者から支払われた金銭の総額が担保物件の価値を上回っていないときは優先弁済が為されたとは見なされません。

・即金方式で取引をする

そもそも債務・債権関係を作らないために取引を即金方式にするというのも安全性を高める方法の一つです。

・全取引において所有権保持条項を契約に取り入れる

全取引における契約書内に、「支払が完遂されるまでは所有権を債務者に譲渡しない」という旨の規定をする条項を置きます。この条項により有効的に債権を保護するには特有の技術的な法的表現が必要になります。

最後に

支払い不能状態にある債務者との取引に対しては、債権者は自身の法的権利と責任を正しく認識する事が重要です。そして、取引に潜在するリスクとそれを最小限に抑える方法についても知る必要があります。

正義と秩序(その80)

未払い債権の回収手順

法律の専門家のサポートなしで未払い債権の回収を行おうとすると、時には長期に渡って困難を強いられることがあります。今回は債権者の方が未払い債権を回収する大まかな手順をご紹介致します。
もちろん、以下に示した手順は正式な契約に基づき、債務総額やその他の条件に関しては当事者間で争いが無いという条件を想定したものとなっております。

1.催促状の送付

まず最初に取るべき手段は債務者に対して催促状を送付する事です。
催促状は下記の内容を再確認する正式な文書です。

・契約に基づき供された製品・サービス
・製品・サービスに対して支払われるべき金額
・請求書の支払期日
・支払済みの金額及び支払いがなされた日付
・未払金総額(利息や手数料等その他支払に関する金額すべて)

そして、催促状において未払債務の新たな支払期日を設定します。
この期日は通常7日後、14日後、21日後などとされる事が多いですが、もちろん債権者の意向次第で期間を短くする事も長くする事も可能です。
もし新たに設定された期日までに債務が支払われない場合、債権者は回収のために然るべき法的手段を用いる事を明記すると良いでしょう。

催促状は個人または法人名義で送付する事はもちろん可能ですが、法律事務所の名義を用いて送付する事でより効果的になります。法律事務所の名義を出す事で事態の深刻さを債務者側に伝え、相手方より迅速で的確な行動を促す効果が期待出来ます。

2.債務者からの応答

債務者は催促書に対する返答として、分割支払での返済を交渉してくる場合があります。この際、債務者は自分達の状況を説明し、一括払いでの返済が不可能である事や何らかの理由をつけて債務額に異議を申し立ててくるケースが頻繁にあります。
もし債務者との間で今後の債務の支払方法における合意がなされた場合は、契約書を作成し、最終的な支払方法を確定するのが良いでしょう。
催促状を債務者側に送付した後に考えられるのは以下のいずれかです。

a.債務者が要求通りに支払を済まし、問題が決着する。

b.債務者が何らのアクションを取らず、債権回収のために次の段階を考える。

3.裁判所への訴え
もし債務者が依然として支払を行わない場合は、次の段階として問題を裁判所へ提訴するべきかどうかを検討しましょう。債権額が少額の場合は、訴訟に係るコストが見合わないものとなってしまう事がほとんどでしょう。

訴訟を提起する場合は請求の原因を債権の回収としましょう。請求する債権額によって訴状の提出先が地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所と違ってきます。
被告側(債務者側)は訴状を受け取ってから28日間以内に訴状に対する抗弁を提出しなければなりません。

もし債務者側からの抗弁がなされない場合、裁判所は通常、欠席判決として債権者へ全額返済すべき旨の判決を下します。
もし債務者側からの抗弁がなされた場合、例えば訴状上の債務額に対して異議を唱えられるなどされた場合は裁判所による審理に入ります。

裁判所の判決により債権者が勝訴した場合、状況に応じた返済命令が出されます。通常、債務者は債務全額の一括支払が命じられます。
しかし、債務者の流動資産に問題がある場合は他の命令を求めるのが適切な場合があります。債務者の資産売却命令や、給料その他の債権差し押さえ命令などがこれに当たります。

 豪州法務(69)

-国家補償ACCについて-

ニュージーランドの特徴的な補償制度にACC(The Accident Compensation Corporation)と呼ばれるものがあります。この制度により、ニュージーランド国内に滞在されている方であれば、居住者のみならず、観光やワーキングホリデービザを利用して訪問されている方も事故で負った傷害の治療などに国から一定の補償が得られます。その一方で、ニュージーランドでは事故が起きた場合に加害者に対して損害賠償を請求する事が出来ません。この様な特殊な社会制度を備えたニュージーランドにおいて安全な生活を送る為に、制度の概要や注意点に留意する必要があります。

1.沿革

1974年、現行のACCの前身となるAccident Compensation Commissionが設立されました。これは、相次ぐ各種事故に対して、従来の訴訟制度では時間とコストがかかりすぎるという状態を改善する為に1972年に制定された事故補償法(Accident Compensation Act 1972)を受けて設けられたものです。これに伴い不法行為に対する損害賠償請求訴訟を行う事ができなくなり、その代わりに事故後に国からすぐに補償が受けられるという現在の制度が形作られました。

2.概要(適用条件・利用方法など)

ACCの適用対象

・傷害の態様

裂傷・捻挫・過労・骨折・脱臼など身体的な傷害のほとんどが適用対象とされています。また、精神的傷害に関しても、身体的障害が起因とされるものや特定の犯罪が原因とされるものについては適用対象となります。

・傷害の原因

事故・労働災厄・医療事故・性的暴行及び虐待
ACCの非適用対象

疾病

ストレス障害・うつ病等の精神障害で上記適用対象に該当しないもの

加齢に伴う体調不良

長期間の蓄積による傷害で、労働が原因ではないもの

利用方法

事故などで傷害を負ってしまった場合、まず病院へ行き医師の診察を受けてください。受診後、病院が患者の傷害情報などを直接ACCへ送ります。基本的にはACCからの補償額が差し引かれた金額を病院が請求する事になります。その後、ACCから請求番号が付与されます。補償内容などに関して問い合わせを行いたい場合はこの請求番号を用います。

3.注意事項・対策

一時訪問者とニュージーランド居住者での適用対象の違い

・一時訪問者の場合
観光ビザやワーキングホリデービザを用いての一時訪問者であっても、ニュージーランド国内で上記適用対象・原因に該当する傷害を負った場合、ACCからの補償が得られます。

適用対象例としては、
ニュージーランド国内での

事故による傷害
労働である特定の環境下での傷害

医療事故による傷害
性的暴行・虐待に起因する精神障害

ニュージーランド国外での傷害はACC非対象となります。例として、ニュージーランド行きまたは帰りの飛行機及び船舶の中で負った傷害などは適用対象外となります。

・ニュージーランド居住者の場合
傷害を負った時点でニュージーランド居住者と見なされる方(市民権もしくは永住権保持者、及びその者と生活を共にしている配偶者・子供・扶養者)はニュージーランド国外で負った傷害にも条件付でACCが適用されます。

6ヶ月以内の国外旅行である場合
6ヶ月以上でも、業務上の渡航で所得税を国内に納めている場合

注意事項

・ACCは疾病には適用されません。また、適用対象であっても常に全額が補償されるわけではありません。一部傷害に関しては満足な補償が付与されない場合があります。
・ACCはニュージーランド国内で負った傷害を補償しますが、国外で治療を受けた場合はこの限りではありません。ですので、事故後にニュージーランド国内で治療を受けずに帰国した場合、もしくは治療途中で帰国した場合も補償対象外となります。また、補償は傷害治療に対するもので、それに伴う帰国費用などは一切含まれません。
・ACCに施行に伴って損害賠償訴訟を提起する権利が失われています。これにより、補償が不十分であっても訴訟を提起し賠償を得るという手段を採ることが出来ません。

ACCはあくまで迅速な救済を目的とした制度ですので、ニュージーランドへ渡航される方、またニュージーランドに居住されている方は各自で保険に加入される事を強くお勧めいたします。

正義と秩序(その75)

戦争や宗教に関して人をからかう事はジョークでは済まされない-委員会の警告

本稿では解雇された元社員がFWCの裁定により復職を命じられた件について解析させて頂きます。
同僚社員に対してタリバンやイスラムに関する話題を用いてからかったとして、昨年2月に日系企業より解雇された元社員がフェアワーク・コミッション(FWC)の裁定により復職しました。
FWCは、企業が職場内の行動方針を規定していたことを認めた上で、それにも関わらず社がそれを適切に実施せず、社員に対して行動方針の違反が解雇へ繋がることを通告していなかったことを明らかにしました。
FWCの見解では、当社員が以前に同様の違反を犯した時点で、もしその様な行動を続ければ後が無い事を十分に認識するようにもっと違った形で問題を取り扱うべきであったとしています。当時、彼は軽い叱責を受けただけに留まりました。
不適切な行動に関わった従業員には、その様な行動が社内で受け入れられない事、そして結果どのような始末がまっているのか(今回のケースでは解雇)、を事前に警告なされなければならないとビセット委員は言います。

強烈な批判
FWCに提出された証拠によると、当社員はアフガニスタン系の同僚と職場で頻繁に政治・宗教に関する議論を行っており、その同僚が西欧諸国の中東に対する介入について強く批判的であったと主張しています。
当社員は、自分はただ会話に参加していただけであって、彼が同僚に対して「お前はタリバン出身か?」「イスラムは人を殺すのが教えなのか?」などと発したのはジョークのつもりであったと訴えています。しかしながら、このような発言を聞いた同僚が上層部に訴え、調査が行われました。
調査の過程で、少なくとも2014年以後に彼は同様の違反を過去に3度行っていた事が判明しました。そして、上記の訴えに対して応答するよう求められましたが彼はこれを拒否しました。
調査の末、当社員は昨年2月に解雇されました。
ビセット委員は裁定において、事前の警告無しに解雇されるのは罰として厳し過ぎるとしています。さらに、職場における文化的、民族的な問題について企業は行動方針のみを頼りに取り扱うべきではないと付け加えています。
「職場における訓練、教育、問題の議論、そういった事が知識や理解を深めて互いに寛容な状況を生み出すのです。」とFWCは言います。

ジョークでは済まされない
一方で、FWCは当社員に対して、この裁定が彼の潔白を意味する訳ではないと警告しています。彼の発言はジョークで済まされる様なものではなく、彼の様な行動は今日の職場において受け入れられず無礼なものであるとしています。
彼女は、企業の反対にも関わらず、彼を復職させて以前の同僚と接触する事の無い別の場所での以前と同様のポジションへ復帰するよう命令を出しました。
また、解雇以後の給料を3ヶ月分を差し引いた額を彼に賠償し、当社員に必要と考えられる再訓練を決定するよう言い渡しました。

反省点
職場での行動方針に対する違反があった時にどのような制裁が適用されるのか? 刑法等に違反しない限り、警告無しに解雇する事は不当解雇に繋がります。
全従業員の文化的な違いを反映させて社員行動方針を社則として導入する事が重要であります。

 

正義と秩序(その76)

NSW州における海外運転免許証の扱い
海外の運転免許証を用いたNSW州での運転
海外の運転免許証を保持している場合、以下の条件全てに当てはまる場合はNSW州で運転する事が可能です。

・海外からの一時的な滞在である(永住権・市民権保持者でない)
・保持している運転免許証が現在有効である
・NSWその他オーストラリア各州・地域より運転資格を剥奪されていない
・運転免許証が取り消されたり無効となっていない
・運転時に免許証を所持している。免許証が英語で書かれていない場合は正式な翻訳もしくは国際免許証を同時に所持している

これらの条件を満たし、NSW警察から要請があった場合に一時滞在者である事が証明できる場合、特にNSW運転免許証を取得する必要はありません。

運転できる車種
一時滞在者として海外の運転免許証で運転する場合、NSW州のClass C(車両重量最大4.5トン、乗車人数最大12名)に該当します。
バイクの場合、保持している免許証と同様の車種が適用されます。

NSW州の運転免許証を取得する場合
また、一時滞在者としてNSW運転免許証を取得する事も可能です。この場合、免許証に”Q”の文字が記入され、”Evidence of permanent residency status not provided”と背面に書き込まれます。

交通違反をした場合
まず、NSW州の運転免許証を取得された方はDemerit points systemという罰点方式が適用されます。
これは所持している免許証の種類ごとに上限点が決められており、各違反で与えられたDemerit pointsが加算され、上限点に達したときに免許証の取り消し及び無効が言い渡されるというものです。

免許証の種類・上限点
・海外の運転免許証を取得してから12ヶ月未満の方
Provisional P1 Licence 4ポイント
・海外の運転免許証を取得してから12ヶ月以上3年未満の方
Provisional P2 Licence 7ポイント
・海外の運転免許証を取得してから3年以上の方
Unrestricted Driver Licence 13ポイント
・上記Unrestricted Licenceの要件を満たし、かつ週20時間以上運転業務に携わるなどの条件を満たしている方
Professional Drivers 14ポイント

次に、海外の運転免許証を用いて運転する場合。
現在、今まで海外免許証でのドライバーには適用されていなかった上記の罰点方式を海外免許証保持者にまで射程を広げようとする動きがあります。
しかし、制度整備の過程ということから現在当局(RMS:Roads and Maritime Service)から公式の発表は為されていません。
ですので、現時点では違反をした時に各違反に設定されている罰金及び刑罰が科されるのみとなっております。
しかし、悪質と看做される場合には起訴され、免許証取り消しもしくは無効とされた事例があり、将来予定されているDemerit points systemの適用も踏まえて、交通法遵守に関して慎重になられるのが良いでしょう。


 豪州法務(68)

融資に対しての金利についての話し合いになりました。市中金利で双方が合意されました。但し、元金の支払いに対して異論が出ました。お客様である買い手の方は四半期毎に少しずつ元金を戻して欲しいのに対して、売り手の方は株をお客様が売却するまでは元金を返済しないとの一点張りです。

財務表から判断しますと、会社も可也銀行から借り入れている為資金繰りが苦しい様です。キャツシュ・フローを改善する為、株の売却並びに無担保の融資が欲しい様です。次に、お客様の会社から何方が売り手の会社の役員に就任して欲しいとの条件を出してきました。非常勤でも当然役員責任が発生致します。

デユウ・デェリ上可也リスクの有る投資となりそうです。更に、今日の資源ブームからの後退の中での業界への影響が懸念されます。会社が倒産する様な状況になった場合、更なる投資又は融資を迫られる可能性が有ります。株の買戻しやローンの引き上げを行なう場合潤沢な資金が有るのか否か? その時の業績次第でしょうが?

現法設置、豪州国内の業務拡大に1千万ドルの資金を掛ける必要が有るのか否かが今回の買収を決めるポイントではないでしょうか?

正義と秩序(その70)

 

豪州の田舎町でAさんはBさんから離婚する事を決めました。現在別居中です。AさんはBさんに分からない様Cさんと同居しておりました。Aさんは医療保険に昔から入っておりましたが、更新の際にBさんを外しました。保険会社にその事を話した所、Bさんの替わり新しいパートナーを入れる様しつこく説得されました。AさんはCさんとの関係がBさんに知れると困る為、現在離婚協議中である為、最初断りました。しかし、保険会社があまりしつこいので、Bさんには本件を絶対に話さないとの条件でCさんを自分の保険に加入させました。

数日後にBさんが同保険会社に自分の医療保険に関して問い合わせをした所、保険会社からBさんは保険に入っていない事を伝えられました。理由を尋ねた所、Bさんの替わりにCさんがAさんのパートナーとして加入している事を伝えられました。その時初めて、BさんはAさんとCさんの関係を知りました。逆情したBさんは、Cさんは淫乱な女性であるとフェイス・ブックに載せました。また、Aさんも浮気者の男であると載せました。

人口2万人足らずの小さな町に住んでいる為、噂はたちまち町中に広まりました。AさんとBさんの離婚協議は泥沼化し、Aさんは病気になり、会社をよく休む様になりました。BさんとCさんは同じ役場で働いておりましたが、この事件以来Cさんの昇給は止まり、事務所で働き辛くなりました。

Aさんは保険会社に個人情報保護義務違反としてクレームを付けました。しかし、満足な回答を頂けなかった為AさんとCさんは弊法律事務所に連絡して来ました。弊事務所から保険会社に連絡し、損害賠償を求めた所、賠償金の交渉に応じない為、連邦政府機関であるOAIC(Office Of Australian Information Commissioner)の事務所に本件を告訴致しました。

OAICに告訴状並びに証拠提出を行い、保険会社との調停に入りました。保険会社は調停前に賠償金を倍に致しましたが、AさんとCさんは納得しない為、本調停に入りました。保険会社は事実を認めたものの前例が無いとの事で、それ以上の金額の支払いを拒否しました。調停員から再度金額について念を押された所、多少の上乗せを致しましたが、AさんとCさんが求めている補償金とは可也の隔たりが有りました。

豪州では個人情報守秘義務法は未だ新しい為、判例が少なく、支払われた賠償金も少ないのが現実です。

 

正義と秩序(その71)

 

不当解雇は解雇された日から数えて3週間以内にFair Work Commission (FWC)に申請しなければなりません。申請はインターネットでも出来ます。申請費用は申請者負担になります。但し、3週間を超えていた場合でも、下記の要因を考慮しFWCが受け付ける場合があります。


1.申請者の健康等の理由により不本意に申請が遅れた
2.申請者が解雇された事に気が付くのが遅れた場合(例えば、休暇中に解雇された。)
3.他の手段で争議がなされていた場合(例えば、FWCを通さず、直接裁判所に告訴していた。)
4.元雇用主である会社に不用意に不便を掛けないか?
5.申請の利点は何なのか?
6.同じ様な状況下の人達に対する社会的公平さ   以上

多くの場合、期限を過ぎた申請は却下されます。また、却下された理由は申請者に伝えられる事は有りません。しかし、諦め切れない元従業員はFWCに対してその理由を求める事が出来ます。かつ、却下された日から数えて3週間以内であればFWCに控訴する事が出来ます。控訴が受理されますと約3週間位で公聴会が開かれ元雇用主も参加しての聴衆が開催されます。

争点となるのは上記の要因になります。控訴もインターネットで申請出来ますが、申請者は公聴白書を作成する必要が有ります。白書はインターネットでなく、書簡でFWCに控訴受理日から数えて

 

正義と秩序(その69)〈続き〉

 

 

正義と秩序(その73)

倒産したA社の管財人からB社に対してA社が支払った金額を過去6ヶ月に遡り返金の督促状が届きました。B社は督促状を無視しておりましたが、今度は最高裁判所から訴状が届きました。慌てたB社は弊事務所に相談に来られました。

優先支払いとは会社が既に債権者に対して期日以内に支払う能力が無いにも拘らず購入を続ける場合に発生致します。且つ、全債権者に支払う金額が無いにも拘わらず、特定の債権者には滞納せずに支払いを起すことが優先支払いになります。

通常債権者が裁判所に起訴し、支払い命令が出たにも拘らず、支払いが出来ない場合、倒産が確定致します。多くは銀行が融資の返済が滞っている場合に裁判所に起訴致します。倒産が確定した日から通常6ヶ月に遡り、その期間に支払われた金額が優先支払いと看做されます。

優先支払いと看做されますと、その金額を管財人に返却する義務が発生致します。管財人はその後、その金額を他の債権者と共に分配致します。

倒産致しましたA社とB社の関係は、B社がA社に原料を売り、それに対してB社が請求書を発行する。A社はその原料を基に加工し其れをB社に売り、A社がB社に請求書を発行しておりました。NZの管財人はA社からB社への請求書だけを見て優先支払いと看做し、B社を起訴致しました。

売り換え金が双方に存在し、其れを相殺する仕方は日本独特のものでNZでは非常に珍しいものでした。従い、NZの管財人はこの様な商売の仕方を知りませんでした。NZの最高裁での判例でも相殺の判例は有りませんでした。従い、幣事務所で豪州の判例を見付け出し、最高裁に提出致しました。また、この判例を管財人に渡しました。管財人は売掛金が相殺される場合、優先支払いと看做されない判例を初めて見た様子でした。

管財人は驚き起訴を取り消しました。

正義と秩序(その74)

ニュージーランドで事故にあった場合

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