鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


光を網膜に集中させて焦点を合わせる役目は角膜と水晶体(レンズ)が果たしています。
光がうまく網膜にあたらなければ物体がぼやけてよく見えません。視界がぼやける主な原因には近視、遠視、そして乱視があります。近視の場合、眼球が横長か角膜の湾曲率が高すぎて焦点が角膜の前にきてしまいます。遠視(あるいは老眼)の場合、眼球が縦長か角膜の湾曲率が低すぎて焦点が角膜の後ろになってしまいます。乱視の場合、角膜の湾曲率が方向によって違い、光が角膜のどの部分を通ってきたかによって焦点が変わります。レーザー治療では角膜の特定の部分を削り取り角膜の湾曲率を修正することによってうまく網膜に焦点を合わせようとする治療法です。
原則として眼鏡かコンタクトレンズで修正できるような屈折異常はレーザー治療でも修正できますが
限界はあります。これまでは水晶体(レンズ)を人工のものと置換するのは白内障でレンズがくもってしまった場合に限られていましたが、最近では屈折異常の修正のために度の入った人工レンズと
取り替えることもあります。角膜のレーザー治療に適していないような場合に(例えば強い遠視の
老眼)適応します。

レーザー治療について
レーザーはパルスによって与えられます。1パルスごとに0.25ミクロンの角膜基質が削りとられます。人間の角膜の厚さは500ミクロンです。角膜を10ミクロン削るごとに1diopter の修正ができます。ちなみに、人間の髪の毛の太さは約50ミクロンです。左の写真はレーザーを使って髪の毛に溝を掘ったものです。レーザー光線はコンピューターを使ってこれほどに正確な操作ができます。近視の場合角膜の中心部を削り、角膜をもっと平らにします。遠視でしたら角膜の周辺部を削り角膜の湾曲をもっと深くします。乱視の場合はコンピューターを使って角膜の表面をマッピイングしておき、その方向によって削る度合いを変え、角膜をもっと滑らかな形にします。

レーザー治療の種類
PRK(Photoreactive keratectomy)
レーザーで治療する部分の角膜の上皮を削り取り、角膜基質の厚さをレーザーで調整します。この場合、角膜上皮は削り取ったままでもとに戻しません。軽度の屈折異常に適しています。
LASIK(Laser in situ keratomileusis)
この方法では角膜上皮をフラップのようにして開け、レーザーで角膜基質だけを削り、その後角膜上皮はもとの位置に戻します。高度、あるいは極度の屈折異常の場合にこの方法が好まれます。この方法の利点は術後の痛みが少なく、角膜に瘢痕が残る確率も低いということです。
Wavefront-based laser vision correction
特別なセンサーを使って角膜の微妙な曲率を分析し、その情報に基づいてより細かくレーザーの照射部分を計算し、角膜を修正する方法です。

レーザー治療に適しているケース
*年齢18歳以上 -目の屈折異常が安定していないとできません。20代の中頃にならないと度の進みが止まらない場合もあります。 特に強い近視の場合に言えます。眼鏡、あるいはコンタクトレンズを最低12ヶ月変えなかった場合は安定していると言えるでしょう。
*眼鏡かコンタクトレンズによって修正できるような屈折異常。
*角膜の厚みが充分であること。
*角膜の形に極端な異常がない場合。
*妊娠中あるいは授乳中でないこと-妊娠中、あるいは授乳中のホルモンの影響によって角膜の水和性が変化するので角膜の湾曲度の計測が正確ではないかもしれません。

禁忌症
*高度の乾性眼 ーレーザー治療によって角膜の感度が鈍くなり、涙液の生産を減少させます。
約6ヶ月でこの機能は回復します。しかし、角膜が乾燥しすぎていると術後の角膜の治癒が遅れます。軽度の乾性眼でしたら、涙点をプラグすることによってこの問題を避けることもできます。
*角膜の瘢痕 -術後の角膜がうまく治癒しない危険があります。
*円錐角膜 -やはり術後の角膜の回復に影響します。
*自己免疫疾患 -副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤を使用していたり、自己免疫疾患がよくコントロールされていないと角膜の修復に影響します。
*ヘルペス性角膜炎 -この病気が頻繁におこっていたり、よくコントロールされていなかったりした場合、あるいは後遺症として角膜に瘢痕があるようなケース。

レーザー治療の合併症と注意点
*上方修正、下方修正(1-2%) - 手術後にまだ眼鏡を使わなければならないこともあります。
屈折異常の度合いが大きければこの可能性も高くなります。この場合眼鏡やコンタクトレンズを続けて使用しなければならないかもしれません。角膜の厚さにまだ修正余地が残っているようでしたら再手術もできるかもしれません。
*LASIKの場合の角膜フラップの問題(1%) - 角膜上皮のフラップがもとの位置にうまくおさまらずにずれてしまうことがあります。修正手術が必要になるかもしれません。
*眩輝、まぶしさ - 比較的よくおこりますが、ほとんどの場合は数日で治まります。
*夜間の輪状視 - 夜間に電灯や車のライトのまわりに光輪が見えることもよくあります。
時間とともに治まっていきますが、完全になくならない場合もあります。
*目の乾燥、不快感、視力の変動 ー 手術後数週間のあいだは目が乾燥したり、視力が多少良くなったり悪くなったりすることもあります。時間とともに落ち着きます。潤滑のための点眼液を使用すると乾燥感も軽減されます。
*感染症(0.1%) - 感染の危険性は術後48時間が最高です。もし、ひどい感染症なら角膜に瘢痕を残したり、最悪の場合は極端な視力低下や失明をおこすこともあります。抗生物質でこのリスクを軽くすることはできます。ひどければ角膜移植が必要となるかもしれません。
*角膜拡張 - 円錐角膜であるにもかかわらずにレーザー治療をしたり、角膜を薄く削りすぎたりした場合に数ヶ月、あるいは数年後に乱視がおこり、視力が低下することもあります。角膜移植が必要となるかもしれません。
*老眼 - レーザー治療をしていてもしていなくとも老眼はおこります。この場合は老眼鏡を使用するしかありません。
*眼圧 - レーザー治療は眼圧に直接影響は及ぼしません。レーザー治療を受けたからといって緑内障になりやすいということもありませんし、また後ほど緑内障が発生したとしてもその治療に影響を及ぼすこともありません。
*手術後 - 手術の翌日には最終的に達成できる視力の90%には達しています。ほとんどの人は48時間後には目の痛みもとれ、自動車の運転が可能なまでになっています。水泳と化粧は1週間は避けなければなりません。コンタクトスポーツは1ヶ月避けるべきです。

Share This