ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

オーストラリアでは、自分の誕生日によく自らケーキを買って職場に持って行く。職場の人たちは、お昼時間に紅茶を入れてくれて皆でささやかなお祝いをする。日本人からするとなんで自分で買わなければいけないのか? 誰か気が付かないのか? と思うだろう。でも、誰かが自分の誕生日を覚えている確率は低く、日本では職場でお祝いをする習慣がないために、本人も遠慮してしまい、誰も何も言わずに悶々と誕生日が過ぎていくことが多い。

長々と前振りを書いたが、何が言いたいのかと言うと、私が毎月書いている「ITよもやま話」が今回で200回を迎える。2001年から続けて読んでくれている読者は少ないと思うが、約20年掛かって200回を迎えたので、私としては感慨深い。

連載は、日本人会の前の担当の方から「会報に何かITのことを書いてもらえませんか?」と尋ねられたことに発する。その頃私は日豪プレスに「パソコン講座」を連載していた。「コンピュータの使い方や修理の仕方ではなくて、ITに纏わるサイドストリーだったら」という条件でタイトルを「ITよもやま話」にした。

記念すべき第一号のタイトルは、「夕焼け空の下のIT」。内容は、それまでタイピストにタイプさせていた会社の上役が、自分自身でパソコンを叩くことになって奮闘している話題を喜劇支度で描いた。また、定年退職した方々に第二の人生の出発としてパソコンの学習を薦めた。

このように内容は、ITのハウツーものやソフト紹介ものではなく、その頃話題になったニュースを取り上げ、自分なりの感想や批評を入れてその時代を描くエッセイ風にした。最初は今の様にウェブだけでなく、印刷された会報だったので、かなり厳しい字数制限があった。「千字に纏めてください」というリクエストに合わせるのに苦労した。また、印刷所に出す関係で毎月の締め切りも厳格に守る必要があった。怪我の功名と言うか、そのお蔭で文章を短時間で纏める力がついたと思っている。

「これらの話を纏て出版したらどうか?」と薦める方もいた。だが、その当時のホットな話題を背景にしていて、ITは魚屋さんのような新鮮さが売り物のため諦めた。今振り返って読み返してみるとなんとも懐かしく、恥ずかしく、そして愛おしい。以下に印象に残ったタイトルを書き出してみた。誰か覚えているだろうか?

第2話、第3話:コンピュータは習うより考えよ
第8話:2000年問題の想い出
第9話:学習方法の変化についていけない教育者
第1 0話:戦争とIT
第1 9話:人工知能と人工頭脳
第2 3話:医療事故とIT事故
第6 6話:捨てる人あれば、拾う人あり
第6 8話:人生まるごとデジタル化
第7 4話:警官が実は強盗だった話
第7 8話:苦情をいう日本人
第7 9話:マックの逆襲
第8 7話:ソフトウェア産業はなぜインドか
第9 0話:1Q89 ( 21年前のIT)
第9 4話:itおたくガバナンス
第109話:ITのむなしさ
第113話:石橋をたたいて渡らない話
第104話:老後のIT
第115話:オリンピックとIT
第116話:脳波インターフェース
第118話:なりすましウィルス誤認逮捕事件
第128話:人の弱みにつけこむIT詐欺
第129話:ジョブズのIT哲学
第132話:消えいくメディア
第133話:数学など社会に出たら役にたたないか?
第135話:心とIT
第142話:ITの色
第145話:なんとかならないのかスパムメール
第146話:アラン・チューリング
第156話:あの手この手の詐欺メール
第161話:ITのものの考え方
第168話:ワナクライ、身代金要求ソフト
第169話:哲学と人工知能
第170話:量子コンピュータ
第176話:意識を造る
第177話:消えた電気街
第183話:日本とオーストラリアのサポートの違い
第185話:携帯通信1Gから4Gまで
第190話:顔認証、指紋認証
第194話:自宅から仕事(パンデミックによる自宅待機)
第199話:機械翻訳はどこまで使えるのか?

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