情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ法律事務所-国際商事仲裁専門
主席弁護士・公証人 堀江純一(茨城県弁護士会所属外国法事務弁護士)
調停について
1 裁判とADR
一般的に「堅い」のが裁判、「柔軟」なのがADR(裁判外紛争解決手段)の様に見られがちです。
裁判は原告側の主張を争点として、手続きは裁判所の規則に則り進められます。公開性、公正性や、他の争件との兼ね合いもあり、裁判は比較的時間が掛かります。しかし、判決に強制力が有ります。
ADRは当事者間の合意で始まり、手続きも当事者によって柔軟に決める事が出来ます。また、非公開、期間の短縮化が出来る当事者の為に作られ裁判所の様とみる事も出来ます。又、ADRは当事者のみの交渉と裁判での訴訟の丁度中間点に位置するとみる事も出来ます。
2 仲裁と調停の違い
調停も仲裁もADRに属します。但し、仲裁は同じADRの分類に属するとはいえ、強制力と言う面で見ますと裁判により近い為、裁判・仲裁と言うグループのADRの分類入れる事も豪州や欧米ではあります。
また、調停と仲裁では裁判官に代わる第三者の権限が違います。それゆえ、解決という結果にたどり着く方法も異なってきます。最大の違いは、仲裁には強制力があり、第三者に依って最終判断がなされる事です。
その反面、調停には強制力が無く、最終判断はあくまで当事者が行う為、解決出来るか否かは当事者次第です。
3.調停
調停人は当事者間の争いの内容にはアドバイス出来ません。つまり、解決する為の審議方法のみに関して意見・提案を行う事が出来るだけです。調停人には法的な知識が必ずしも必要とはされません。何故ならば調停人は法的アドバイスをしてはいけないからであります。従い、手続きも簡単で費用も比較的安価の場合が多いです。
当事者間の将来を見つめて、WIN WINの未来指向型の解決が出来る様調停人は働き掛けます。白黒の判決を付けるよりも当事者間の関係改善を図り、お互い納得の行く合意に辿り着く様努力致します。この辺りが日本人の白黒を付けたがらない文化に向いている様に見受けられます。
4. 不確定性
調停では解決が必ず出ると確定されておりません。従い、調停で解決出来ない場合、裁判に持込む調停前置主義が取られる場合が有ります。相手側のどの程度の主張かなどを見定め、出方を伺い裁判に備える様な調停の活用の仕方もありえます。
又、行き成り裁判に持ち込む事が出来ない法律の分野も豪州では有ります。つまり、裁判する前に調停を行なわなければならない、調停前置主義が取られている法理分野があります。例えば、家庭内紛争等が主な例です。裁判で白黒付けるよりも将来を考えて、人間関係の改善には調停の方が有利と考えられるからです。
建設関係も専門的で細かく、紛争件数も多い為調停前置主義取られております。但し、裁判の前哨戦、あくまで本番は裁判という様な意識がある場合、調停での解決は難しくなります。
5.紛争解決の為のアプローチ
調停での解決には通常5つのアプローチがあるとされております。それには、自分の主張レベルと相手側に対する協力レベルが関係してまいります。
Collaborate 主張もするし協力もする。今後も関係が続く場合に適応されます。例えば、職場内紛争や離婚後の子育てに見られます。
Force 主張しても協力はしない。緊急の場合のみに適応されます。
Compromise 主張せずに協力する、つまり妥協する場合に適応されます。
Avoid 主張もせず協力もしない。避けるのが一番懸命と考えらる場合に適応されます。何故ならば合意に至るのは到底不可能であると予想される為であります。
Accommodate 和解する方がメリットあると思われる場合。今後の関係が大切な場合に適応されます。
6.不解決
解決し、当事者間で合意が結ばれれば、それに拘束力を付ける事も可能になります。しかし、解決に至なかった場合、合意不成立、そしては他の解決手段を探ることになります。事前に仲裁合意が結ばれていれば仲裁に移行する事も可能です。仲裁と調停を別々の物として考えるのではなく、紛争解決の為のADRの一の一環としてみては如何でしょうか?