情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ法律事務所-公証役場
主席弁護士・公証人 堀江純一(茨城県弁護士会所属外国法事務弁護士)
Temporary skill Shortage (TSS)
オーストラリア政府は2018年3月からTSSとよばれる新しい就労ビザを導入しました。TSSビザは3段階のステップによって構成されています。
Step1 雇用主によるスポンサーシップ申請
Step2 雇用主によるノミネーション申請
Step3 従業員によるビザの申請
TSSは滞在期間最長2年の短期就労ビザ (Short term stream) 、4年までの中期就労ビザ (Medium term stream) 、レイバーアグリーメント (Labour Agreement) の3種類によって構成されています。
〇短期就労ビザ(Short term stream)
ビザの期限は原則として2年です。しかし日豪経済連携協定(Japan-Australia Economic Partnership Agreement 以下、日豪EPA)によって日本の企業で雇用されている労働者でオーストラリアの子会社、支店、関連会社に派遣されるエグゼクティブやシニアマネージャーレベルの派遣員は4年の申請が可能になる場合もあります。ビザの更新は国内から1回のみ可能です。
短期職業訓練リスト(STSOL)の職業が対象になります。
*短期職業訓練リスト(STSOL)
短期的に不足とされているリストで一時的に海外から受け入れることのできる職業
(例) Sales and marketing manager (セールス&営業マネージャー)
Advertising manager (広告マネージャー)
Corporate services manager (法人サービスマネージャー)
Finance manager (財務マネージャー)
Human resource manager (人事マネージャー) など
〇中期就労ビザ(Medium term steream)
ビザの期限は4年でビザの更新は制限がありません。短期就労ビザとは違い永住権への切り替えが可能です。
中長期戦略技能リスト(MLTSSL)の職業が対象になります。
*中長期戦略技能リスト(MLTSSL)
中長期的に不足とされているリストで高いスキルが求められるニーズが高い職業
(例) Chief Executive or Managing Director (最高経営責任者もしくは取締役社長)
Corporate General Manager (執行本部長) など
※職業リストの付帯条件(Caveats)について
STSOL、MLTSSL共に付帯条件が設定されている職業があり、その職業については一定の条件をクリアする必要があります。内容は、スポンサー企業の事業規模やビザ申請者の給与などがあります。
(例.1) Corporate services manager (STSOL)
・売上規模がAUD$100万以上
・年収がAUD$65,000以上
※ただし日豪EPA など国際的な協定があり、グループ会社間の派遣員の場合はこの要件免除され、さらに最長4年有効のビザを申請できます。
(例.2) Chief Executive or Managing Director/Corporate General Manager (MLTSSL)
・年収がAUD$180,001以上
※ただし日豪EPA など国際的な協定があり、グループ会社間の派遣員の場合はこの要件免除されます。
TSSビザに適用される要件
【実務経験】
2年以上の関連業務での実務経験が必要です。
【英語力】
通常TSSビザ申請に必要な英語力は
STSOL (2年) →IELTS平均5.0以上 (各セクション4.5以上)
MLTSSL (4年) →IELTS平均5.0以上 (各セクション5.0以上)
※下記の場合、英語能力テストは免除になります。
・カナダ、NZ、アイルランド、英国、米国のパスポート保持者
・英語によるフルタイムの英語教育(中学、高校、大学)を5年間以上受けた人
・グループ企業間の派遣員(基本給与がAUD$96,400以上)
【無犯罪証明書】
過去10年のうち1年以上申請者が滞在した国(短期滞在や訪問を含む)からの無犯罪証明が必要になります。(16歳以上から居住した国に限ります)
また16歳以上の扶養家族も無犯罪証明を提出する必要があります。
【労働市場テスト】
オーストラリアの労働市場には求める人材はおらず、この人でなければならないという証明をする必要があります。(求人広告を一定期間掲載するなどして)
※日豪EPAの規定により、日本国籍であれば免除されます。
【最低市場給与】
雇用主は申請者にオーストラリア市場給与を支払わなければなりません。
【無差別雇用テスト】
雇用主がオーストラリア人労働者を積極的に差別していないことを保証する無差別の労働力テストを受ける必要があります。
【トレーニング・ファンド・レビー】
スポンサーはノミネート申請時に研修ファンドへの出資が義務づけられており、
この基金を財源にオーストラリア人に対する職業訓練が行われます。レビーの金額はスポンサー企業の売り上げによって異なります。
TSSビザ対象者1人当たり
年間売上高AUD$1,000万未満の企業 → 年間AUD$1,200
年間売上高AUD$1,000万以上の企業 → 年間AUD$1,800