このクリスマス、新年休暇で、中東のドバイ、イランに行ってきた。それぞれのインターネット事情について報告しよう。最初に入ったドバイは、1日しかいなかったが、空港でも電車(メトロ)の中でもWi-Fiが使用できた。私が知る限り、ほとんどのSNSが使用でき、インターネットは日本やオーストラリアにいる時のように全く不自由を感じなかった。Wi-Fiのスピードも速かった。
次に入ったイランの首都、テヘランの空港にはフリーWi-Fiがなかった。イランは、テヘラン以外の地方都市にも行ったが、どの都市でも空港など公共の場でのフリーWi-Fiはなかった。光通信は発達しておらず、ほとんどの事務所、家庭がADSLを使っている。ただ、スマートフォンは普及しており、オーストラリアや日本と同じように、道路や電車、レストランなどでアクセスしている光景を見た。
メールに関してはどのメールも普通に使用できるが、ウェブ、SNSに関してはかなり制限があった。まずYouTubeにアクセスできない。Facebook、TwitterというSNSも使えない。理由を聞いてみると、政治的に利用される可能性があるので政府がブロックしているということであった。オーストラリアでもニュースになったと思うが、この旅行中にイランの各都市で政府に対する抗議デモがあった。デモに参加した人たちは、イランで使用できる数少ないSNSであるTelegramとInstagramを使って通信していた。Telegramは、SkypeやLINEのようなメッセンジャー・アプリだ。Instagramに関しては、本来の写真や動画の共有といった目的よりも、Facebookが使えないという事情から、デモ参加の情報、反政府情報、さらにはネット・ショップ情報にも広く使われている。そしてデモが過激化してくると、政府はこれらのアプリもブロックした。
ところが、多くの人たちは、政府がブロックしたにも限らずInstagramを使っていた。いや、Instagramどころか、禁止されているはずのFacebookやその他のSNSも自由に使っているではないか。その秘密はVPN(Virtual Private Network)であった。iPhoneにあるApp Storeで無料のVPNアプリを探してインストールすると、海外のVPN先を端末として使用できるので、どのSNSでもアクセスできるらしい。今回は、政府がそれに気が付き、あるVPNアプリを制限したが、ユーザーは、別のVPNアプリを見つけインストール、それもそのうち制限され、さらに別のVPNアプリをインストールという具合に、いたちごっこになった。イランや中国など政府がインターネットに制限を加えている国は、情報管制の元、政府の都合のよい情報しか伝えられていないのではないかと思われがちであるが、どうも我々の頭の方が単純で、そのような裏情報に疎いのではないかと感じた。蛇(じゃ)の道は蛇(へび)と言うが、求めれば何でもできるものである。
イランはあまりWi-Fiが発達していないため、あちらこちらへ旅行するのにSIMカードを買って入れることにした。テヘランにはパソコンやスマートフォンを売る店が集まっている地域があり、常に若者達がたむろし、リトル秋葉原の様相を見せている。いくつかの店に入り、SIMカードを尋ねたが、どこも売っていないと言う。それでは、どこに行けばよいかと尋ねると、同じビルにある1軒の店を紹介してくれた。そこは、インターネットプロバイダでもある電話会社の直営店であった。オーストラリアで言う、テレストラショップ、オプタスショップのようなものである。ただその店は、他の店と比べて間口が狭く、SIMカード専門であろうスマートフォンの展示もなく、カウンターの前に椅子が4脚置いてあるだけの殺風景な店だった。早速、カウンターの前に立って、係りの人を呼んでもらおうと思ったら、整理券を取って待つように言われた。見ると店の外のベンチで数人の先客が順番を待っていた。
30分以上待ち、ようやく自分の順番が来た。先ず、外国人でも購入できるかどうか聞いた。パスポートがあれば、プリペイド式のものを買うことができるとの返事であった。iPhoneやAndroid携帯端末用であれば、殆どの種類のSIMカードがそろっていると係りの人が言っていた。痩せてメガネをかけたその兄ちゃんは、秋葉原やシドニーのチャイナタウンでSIMカードを売っている人たちと同じように神経質で、無駄口を叩かず、早口で必要なことだけしゃべり、客がとろとろしているとサッサと客のスマートフォンを手に取って、あっという間にSIMカードを入れ替えていた。この種の職業をしている人たちは、おそらく世界中どこも同じキャラクターをしているのではと思った次第だ。SIMカードの価格もシドニーと変わりなく、各都市で問題なく使用できた。