鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


右の写真のように視界にゴミのようなものが浮いて見える現象を飛蚊症といいます。糸くずのようだったり、ゴミのようだったり、小さな点が無数にあったりします。眼の方向を変えると一緒に動きます。同時にチカチカとした閃光の様な光が見えることもあります。ほとんどの場合は心配はありませんが、網膜裂孔や網膜剥離の前兆で、視力をなくしてしまうような事態にもなりかねません。

 

 

眼球内の変化
眼球の中はほとんどが硝子体という寒天のような透明な組織が眼球の役80%を占めています。レンズと網膜のあいだの光を通す役目と、眼球の丸い形を維持する役目があります。このジェル状の硝子体はコラーゲン線維とヒアルロン酸で形を保っています。カメラにたとえればレンズと撮像素子のあいだの空間のようなものです。(フイルムカメラの場合はレンズとフイルムのあいだのボディー内部の空間)
網膜に入った光は、視細胞で電気信号に変換され、視神経を経て脳に届きます。この空間にゴミがあれば、撮像素子、あるいはフイルムに影をおとし、ごみとして写ってしまいます。硝子体は、加齢とともに縮み、サラサラした液体とベトベトとしたゲル成分に分離していきます。そのうち後方の網膜からゲル成分の硝子体が離れていきます。これを後部硝子体剥離といいます。後部硝子体にはコラーゲンの密度が高い部分があり、これが光の通過を妨げ、飛蚊症として現れます。
このように飛蚊症は、加齢などの硝子体の液化変性や後部硝子体剥離で生じることが多く、このような年齢とともにおこる生理的な現象でとどまっていれば害はありません。しかし、その際に硝子体と網膜の癒着が強ければ網膜が引っ張られ、網膜裂孔や網膜剥離を伴うことがあり、治療が必要となります。また、網膜が引っ張られたときに毛細血管が破れ、出血がおこることもあります。

右図のように、網膜剥離がおこってしまうと、剥離した部分の網膜は光の信号を受けて処理することができなくなり、その部分が視界の中で膜のように暗くなり、見えなくなります。特に網膜黄斑の部分は視野の中心部の信号を受けていますのでこの部分の網膜が剥がれたら急激に視力が低下してしまいます。チカチカとした光りが見えたり飛蚊症の浮遊物が急に増えたり、視野の一部にカーテンのようなものがかかって見えなくなったりすれば要注意です。至急、眼科医で受診しなければなりません。

その他の飛蚊症の原因
*ぶどう膜炎ー眼球を覆っている虹彩、毛様体、脈絡膜 とそれに隣接する組織におこる炎症性疾患
*眼球の中の感染症
*網膜の血管の病気ー糖尿病や高血圧などで眼底の毛細血管から出血することがあります。

飛蚊症の診断、検査
なるべく早めに眼科を受診して診てもらうことが大切です。眼底検査で、網膜の様子を隅々まで診ることが重要です。そのためには瞳孔を開く目薬を投与します。そのため、数時間は瞳孔が開いたままなので、まぶしかったりピントがあわなくなります。検査後は数時間車の運転はできません。もし出血が多く、眼底がよく見えないような場合は超音波検査などを行います。

飛蚊症の治療
加齢とともにおこる後部硝子体剥離で網膜裂孔や網膜剥離がおこっていなければ治療をする必要はありません。
ほとんどの場合は飛蚊症は徐々に少なくなっていき、気にならなくなります。もし網膜裂孔がおこっていれば網膜剥離へと進展しないように裂孔部分のまわりを治療して修理します。よく使われる方法はレーザー治療で、右図のように裂孔部分のまわりにレーザーをあて、網膜を眼球の後壁に結合させ、剥離がおこらないようにします。1カ所の裂孔を治療しても他の部位でまた裂孔がおこる可能性もありますので、続けて定期的に目のチェックをすることも重要です。網膜剥離がおこってしまっていたら外科治療が必要です。なんらかの方法で剥離した網膜を元の位置に戻さなければなりません。ほとんどの場合、硝子体を切除し、気体か液体を眼球に注入し、中から網膜を眼球に押しつける方法です。手術は剥離がおこってからなるべく早く行ったほうがいい結果が得られます。

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