鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


40歳を過ぎると避妊に関しての考慮がおろそかになってしまい、予定外の妊娠がおこってしまうこともあります。この年齢期に入ると確かに繁殖機能は若い頃のピークと比べると衰えてきますが、妊娠する可能性がないというわけではありません。そして、もし妊娠した場合、ダウンズ症などの胎児の異常が発生したり、妊娠することからくる合併症も若いときに比べておこりやすくなります。

いつ避妊の必要がなくなるのか
排卵がおこることがなくなれば避妊手段をとる必要はなくなります。平均して閉経年齢は50~51歳ですが、個人差があり、55歳頃まで閉経を迎えない人もいます。45歳から50歳までのあいだに12ヶ月間無月経だった場合、まだ排卵が不定期でもおこっている確率は2~10%です。この年齢期でしたら、24ヶ月間無月経が続けば避妊の必要はないと思われます。50歳を過ぎていれば無月経期間が12ヶ月続けば妊娠する可能性はないと思われます。更年期症状(動悸、ほてり、発汗など)がおこっていれば閉経時期を迎えているという目安になりますが、まだ、完全に排卵が止まったかどうかは確かではありません。もし、50歳近くまで避妊ピルを使用している人の場合、閉経を迎えたかどうかの判断がしにくくなります。ピルの種類にもよりますが、黄体ホルモンだけが含まれているピルの場合、このホルモンの子宮内膜に及ぼす作用によって無月経になりますので、生理学的に閉経になったのか、薬の影響なのかを判断するにはピルをしばらく止めて様子を見ないとわかりません。
また、女性ホルモンと黄体ホルモンが両方含まれているピル(混合避妊ピル)の場合は、ピルを指示通りに規則正しく服用していればそのホルモンの作用により定期的に出血がおこりますので、まだ生理が続いているのかピルの影響なのかは、やはりピルを止めてみないとわかりません。血液検査でホルモンレベルを調べても、はっきりとした境界線がありませんのでホルモン検査の結果で避妊を続ける必要があるかどうかの判断をするのは困難です。一般的には55歳を過ぎれば避妊手段をとる必要はないと言われています。いずれにしろ、50歳前後まで達すれば妊娠する可能性はごく低いということはたしかですので、実際に避妊手段を続けるかどうかは最終的には個人の判断によります。

避妊手段の選択
一般に、50歳までは若い年齢層と同じ選択種類があります。50歳を過ぎた場合、混合避妊ピルとDMPA (Depot medroxyprogesterone acetate injection, 黄体ホルモンを3ヶ月ごとに注射する蓄積注射)は薦められません。

*混合避妊ピル (Combined oral contraceptive pill) (膣内リングも含む)
女性ホルモンと黄体ホルモンが含まれているピルのことを言います。禁忌 (通常, 危険性が予測されるため, 薬物の使用や治療の遂行を勧められない特定の症状または状況)がない限り、50歳までは使用することができます。血管疾患(高血圧や静脈血栓塞栓症)、乳癌、それに肝臓疾患の危険、あるいは既往症が禁忌です。
避妊効果以外に月経過多や生理痛を和らげたり骨密度を維持したりするメリットもあります。もし、すでに更年期症状が出ていれば、このような症状を軽減することもできます。また、月経前緊張症(PMS) を和らげる効果もあります。多数の混合避妊ピルが販売されています。それぞれに女性ホルモンと黄体ホルモンの種類と含有量が違いますが、なるべく女性ホルモンの量が少な目のピルのほうが血栓塞栓症のリスクが低いとされています。ただし、女性ホルモン量が少なければ、月経サイクル中に出血がおこる確率が高くなります。(このような出血があっても規定通りに毎日規則正しく服用していれば避妊効果に関しては問題はありません。)

静脈血栓塞栓症について:この疾患は静脈内に血栓ができる病気です。主に下肢におこりますが、この血栓が静脈を伝わって心臓にもどり、そこから肺動脈を通して肺の中の血管に塞栓をおこす危険があります。肺の血管が詰まってしまえば肺の一部に酸素が供給されなくなり、肺が壊死してしまいます。この血栓が大きく、肺の壊死範囲が広ければ命の危険もおこります。
混合避妊ピルを服用するといくらか血栓症がおこるリスクが高まります。しかし、そのリスクも客観的にみて判断する必要があります。ピルを飲んでいない女性で血栓がおこる確率は10年のあいだで1000人の女性に2人です。
混合避妊ピルを服用すれば10年のあいだでピルを飲んでいる女性1000人に4~8人におこります。ピルを飲むよりも妊娠しているときのほうが血栓がおこるリスクははるかに高まります。妊娠をしていないときの21~84倍のリスクがあります。40代を過ぎれば血栓症のリスクはいくらか高まりますが、混合避妊ピルの服用を止めなければいけないほどのレベルには達しません。しかし、過去に血栓症をおこした既往歴があったり、強い血栓症の家族歴などがあればもちろん薦められません。また、50歳を過ぎれば血栓症のリスクは高くなりすぎるので、やはり混合ピルは薦められません。

子宮の疾患:40代を過ぎれば子宮癌、子宮内膜症、子宮筋腫など、子宮の異常もおこることが多くなるので月経過多や不正出血などがあればピルを服用する以前に詳しく検査をしておくべきです。また、子宮頸がん、乳癌の定期検診も怠らずにしておくことが大切です。

*黄体ホルモンピル (Progestogen only pill)

このピルの主な効果は子宮頸部の粘液を厚くすることによって精子の浸透を防ぐことです。排卵を止める作用もいくらかありますが、確実なものではありません。毎日決まった時間帯(3時間の窓)に服用しないと効果が薄れます。この種類のピルは静脈血栓塞栓症のリスクを高めません。不正出血をおこすこともあります。この場合、子宮疾患を除外することも大切です。

*黄体ホルモン皮下インプラント (Implanon)

黄体ホルモンを皮下に埋蔵する方法で、3年間有効です。排卵を止めることによって避妊効果があります。静脈血栓塞栓症との関連はないようです。黄体ホルモンピルと同様、不正出血をおこすことがあり、やっかいなようでしたら使用を
中断しなければなりません。

*黄体ホルモン蓄積注射 (Depot medroxyprogesterone acetate injection)

この方法は黄体ホルモンピルと同じ作用で避妊効果を現します。3ヶ月に1回注射を繰り返さなければなりません。このホルモンは女性ホルモン効果を低める作用があり、そのことによって HDL コレステロール(善玉コレステロール)のレベルが下がります。ですから動脈硬化のリスクがある人(高血圧、糖尿病、喫煙者、強い虚血性心疾患の家族歴)には使用できません。また、50歳以上の女性の使用は薦められていません。
もうひとつは、使用中、骨密度が一時的に下がるようなので、骨粗鬆症の人、あるいはそのリスクが高い人は他の避妊法を選んだほうがいいでしょう。もし、まだ妊娠を将来希望している女性の場合、注意しておかなければならないのは、使用停止後約10ヶ月は繁殖機能が戻らないということです。

*子宮内避妊器具 (IUD, intrauterine device)

IUD には2種類あり、黄体ホルモンが含まれる IUD (Levonorgesterol IUD, LNG-IUD) と銅のIUD (Copper IUD) とがあります。
LNG-IUD:
この IUD は黄体ホルモンが含まれていることにより、月経の出血量を軽くする効果があります。挿入前に不正出血や月経過多があれば子宮に異常がないかを確認しておかなければなりません。挿入後、始めの3-5ヶ月間は不正出血がおこることもあります。場合によっては無月経になることもあります。45歳以下で挿入した場合は5年後に交換しなければなりません。45歳以上で挿入した場合はまだ月経があれば7年間は入れておけます。もし、途中で無月経になった場合はホルモンレベルをチェックして摘出のタイミングを検討するか、あるいは55歳まで放置しておくことも可能です。
Copper-IUD:
この IUD は月経過多や生理痛のひどい人、あるいは子宮筋腫などの異常がある人には薦められません。この IUD によって出血量が増えたり生理痛がひどくなったりすることもあります。もし問題がなければ5年から10年子宮内に入れておくことができます。

*そのほかの避妊手段

コンドームや避妊ペサリーなどがありますが、使い方によっては避妊効果が確実ではない場合もあります。コンドームのメリットは性病の感染を防ぐ効果があるということですが、これも使い方によってはあてにならないこともあります。

*緊急経口避妊薬

モーニングアフターピルの使用に関しては年齢制限は特にありませんので40歳以上の女性でも服用できます。性交後、96時間以内に服用しないと効果は期待できません。早ければ早いほど効果があります。

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