情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ法律事務所-国際商事仲裁専門
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)


シンガポール条約が本年調印され企業の国際間紛争解決において国際調停が活用される機運が日本、豪州で高まっております。 今回は調停の種類とその進め方についてご説明させて頂きます。

調停の種類とその進め方
調停の種類: 治療型調停 - 促進型調停 - 評価型調停 - 和解型調停 -調停の進め方- 対面型 - 電話会議型 - ビデオ電話型 - 個別対応型 - 調停人複数型

調停の種類
ローレンス・ボウル著、「調停の基本,手段,実践」によると、調停には主に4つの種類があり、治療型調停、促進型調停、評価型調停、そして和解型調停がそれにあたります。それぞれの調停には各々の異なる目的を有しています。

  • 治療型調停

治療型調停における機能は、対立の原因を吟味すること、対立の心理や感情にまつわる側面に対処することです。調停人は当事者とともに対立の根幹を明確にし、当事者がそれらの問題に対処し、最終的に対立の解消に至れるよう援助します。

  • 促進型調停

促進型調停における調停人の機能は、当事者の立場、妥協点、対立解消における障害を見定めることです。調停人は当事者が合意形成に至るのを手助けするべく奨励、説得、折衷を含む多種多様な介入方法を取ります。促進型の調停人は「権威ある者」、「社会的に地位の高い者」として認識される場合が多くあります。

  • 評価型調停

評価型調停における調停人は当事者の権利や本質的な利害に着目します。評価型調停人は通常、対立にまつわる領域や分野の専門家であり、必ずしも一貫した調停の手順を踏む必要はありません。調停人は話し合いをまとめ、合意に向けた考えられる案を示すというよりも、当事者に対して助言や指示を行うのが基本です。この点が他の模範的手法と一線を画している点です。

  • 和解型調停

この場合における調停人の機能は、当事者の利益に重視し、当事者間の話し合いをまとめ、進めること、そして両者共通の利益や考えられる案を示すことが挙げられます。促進型調停における調停人は解決案の提示は行わず、あくまで解決案の練り上げに導いていく形をとります。

要約: 調停の種類
以下の表はローレンス・ボウルによって示された、4種類の調停の大きな違いに関してまとめられたものです。

促進型調停 和解型調停 変容型調停 評価型調停
他の呼び名 折衷型
分配型
立場重視型
利益重視型
問題解決型
合理的分析型
治療型
復元型
助言型
管理型
規範型
主な目的 両当事者の元々の要求の“中間点”に達する和解に向けた交渉を促すことを目的とする。 立場重視型を避け、当事者の個人的、商業的な要望や利益の観点から交渉することを目的とする。法的権利や法的義務はあまり重視しない。 紛争解決の基本として、認識や権限委譲を通して、当事者の関係の改善を目的とする。当事者に内在する原因を対処する。 法律に基づいた、裁判所、仲裁廷の想定される判決を基にした合意形成を図ることを目的とする。
紛争の定義 当事者の自己認識、及び問題の自己規定から発生する紛争。  本質的、手続きにまつわるもの、心理的なものから発生する、当事者の内在する利益や要望に関する紛争。 振る舞いや感情、人間関係に関わる要因から発生する紛争。 法的権利や法的義務、業界基準や社会規範から発生する紛争。
調整人の選任 社会的に地位の高い者。
調停の手順、能力、技能の専門知識は不要。
調停の手順、能力、技能の専門知識を持つ者。
紛争が発生した領域の知識は不要。
カウンセリング、心理学、社会福祉事業の専門家。
紛争が発生した感情的、認識的な理由への理解も求められる。
紛争が発生した領域の専門知識を持つ者。
調停の技術に関する資格は不要。
調整人の主な役割 当事者の妥協点を見定める。理解を求めながら、両当事者をそれぞれの一方的な要望から妥協点へと導く。 調停手順を進め、当事者間の建設的な対話を維持しする。交渉することに意味を持たせ、合意を促す。 調停前や調停中に専門的な治療の技術を用いる。
たとえ合意への負担になっても、権限委譲や認識を通して人間関係の問題に対処する。
情報提供、当事者への助言、説得する。専門知識を用いて、裁判所などでどんな判決が出るかを予測し、示すことで交渉に影響を与える。
長所 両当事者の理解が得られる。当事者が互いの状況を受け入れやすい。少ない準備で調停に臨める。 当事者主導の交渉の機会が友好的に活用される。 紛争の解決だけでなく、人間関係の解決に導くことができ、当事者の要望に応えられる。 調停人の専門知識を用いて、予想される判決結果が得られる。
短所 当事者の要望や利益を見落としてしまい、調停人が都合よく解釈してしまい、当事者の理解を得るのが難しい場合がある。 合意に至らない可能性がある。長期的になりえる。両当事者や助言者に並み以上の技能が求められる。 延長の可能性がある。何の合意もなしに終わる可能性がある。カウンセリングと調停の役割を混同してしまう。 調停と仲裁の境がぼやけてしまう。当事者に調停後の将来的な指針を与えない。調停人に大きな責任がある。
活用される領域 商業、人身事故、保険、労使 隣人関係、家族、職場、組織、生活環境、配偶関係 夫婦、親子、親類、及び今後も繋がりが継続する人間関係 商業、人身事故、貿易業務、家庭資産、差別防止

調停の進め方
調停の進め方には下記のものがあります。

  • 対面型
  • 電話会議型
  • ビデオ電話型
  • 個別対応型
  • 調停人複数型

調停人は一般的に初めて当事者に接遇する際に、どのような進め方を使用するか判断します。しかし、途中で必要になれば臨機応変に対応して、進め方を変える場合もあります。

  • 対面型

対面型は、両当事者と調停人が同席する最も一般的な調停の進め方です。

長所:
対面型の長所としては、調停人が当事者から言葉以外の手がかりを得られること、彼らがどのようにお互いの意見を受け入れるのかを直に見ることができる点です。当事者の力の不均衡を理解できる良い機会です。同時に、同じ場所に全ての当事者が揃う為、当事者は互いの意見に耳を傾け、相手方の意見を明確化する機会が得られます。対面型は、通訳者が必要になる場合にも効果的です。

短所:
対面型の調停は当事者の安全性、力の不均衡を考慮した場合、限界があります。これらが当事者たちの調停、及び合意に至る過程に影響を及ぼします。さらに、対立が深刻な場合、相手方への威嚇となりえたり、交渉が口論に発展し、八方ふさがりになる可能性もあります。
また対面型は出張を伴う地理的制限、調停で使う場所の確保や設営、交通の便の良さなどを考慮することが重要です。調停時間の延長や次の会合の機会が必要になる可能性についても同じく考慮されなければなりません。

  • 電話会議型

電話会議型では、相手方が遠方に位置している場合や相手方の安全性を考慮した場合に活用されます。誤解を防ぎ、調停人が手順を管理しやすくするため、当事者は別々の場所や部屋で準備させるべきです。互いの当事者と調停人のそれぞれが別々の場所から調停に臨みます。調停の会合は2,3時間に及ぶこともあります。従って、それぞれが静かで、邪魔が入らないような場所を確保することが重要です。

長所:
電話会議型は、調停に参加することに気が引けている当事者や、参加に恐怖を感じている当事者に対して調停の機会を与えることが可能です。また、地理的に離れている場合でも調停に参加することが可能になります。当事者が田舎の地域に住んでいる場合は、通信状態を考慮しなければなりません。

短所:
電話会議型では、調停人が気を付けなければならないことがいくつかあります。当事者の様子が直接見えないため、相手方が調停をどのように受け入れているのか分かりません。守秘義務の点も考慮する必要がある。当事者は同じ部屋で第三者に助言を求めていたり、耳打ちされていたりする可能性があります。あるいは調停人の許可もなく、話し合いを録音している可能性もあります。

  • ビデオ電話型

新しい技術の進歩と共に、効果的な調停が今やビデオ電話を活用してオンライン上で行うことが可能となっています。対面型と同様に、当事者と調停人が互いの様子を見ることが可能であり、言葉以外の相手方の反応の手がかりを探ることできるのが長所です。しかし、調停中にオンライン上でソフトや通信が切断されないよう注意しなければなりません。

  • 個別対応型

個別対応型は安全性が考慮される場合に有効です。当事者は同じ部屋、同じ電話回線、同じ回線上に、同時にいることはありません。調停人が当事者間の部屋を行き来したり、電話を別々にかけたりします。
個別対応型は当事者が思いの丈を述べやすい環境を作ることが可能です。しかし、この方法は、調停人がそれぞれの当事者に個別で話し、両者間を行き来するのに余計な時間がかかるので、調停の進み具合が遅くなることが短所です。調停人は当事者たちの単なる伝達役に留まらないよう気をつけ、両当事者が合わさって合意を下すよう注意しなければなりません。

  • 調停人複数型

調停人複数型では、2人の調停人が調停に関与します。大抵は男女各1人ずつ、それぞれが別の業界の専門(1人は法曹関係、もう1人は別の業界)であるといった場合が多いです。これにより追加の専門知識が調停に取り込まれます。この調停人複数型は隣人関係の紛争解決には必ず活用される進め方です。
異なる性別、業界の調停人を呼ぶことで、当事者がより安心感を持ち、調停に持ち込まれる不安を和らげる手助けが出来ます。対立が深刻な場合、2人の調停人が当事者の節度のあるコミュニケーションを管理し、維持できるという長所があります。調停人たちが効果的に仕事をすれば、当事者に対して協力し合う手本となります。しかし調停人たちが効果的に仕事できない場合は、調停の流れが停滞してしまいます。当事者が調停人の間で揉め事を起こさせようと仕向けてくる場合もあります。

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