ジャパン/コンピュータ・ネット代表取締役 岩戸あつし

最近、東南アジアとインドに旅行した。まずオーストラリアから出国するときにスマートゲートを使った。スマートゲートというのは、機械化、自動化された出入国審査のことである。透明なパネルで作られたゲートの前に立ち、右側にある台に備え付けられたパスポート読取り装置にパスポートを読み込ませると第一のゲートが開く。二、三歩歩いて立ち止まり、写真を撮る。しばらく待つが、その間にパスポートの写真とその場で取った写真を照合している。うまく照合できた人は第二のゲートが開いて無事出国できるが、照合がうまくいかないと警告音が鳴り、従来からある出国係官のいるゲートに連れていかれる。

私は、出国は何も問題なくゲートを通過できたが、帰りの入国時にスマートゲートが開かず、係官のいるゲートに回された。そのゲートには私と同じようにスマートゲートが開かなかった人たちがたくさん並んでいた。スマートゲートが開かない理由は、顔認証がうまくできなかったということだけではなく、他の理由の場合もあるらしいが、私の場合は結局何も問題がなかったので、顔認証の精度がまだ完璧でなかったのではと思っている。

かつてコンビニ強盗の映像を見せられても、これで犯人が特定できるのかというくらいボヤっとした人物像だった。しかし、最近の監視カメラは4K、8Kという高解像度で、かなり遠くの人の顔まで特定できるという。それに加えて画像の中で顔がどこにあるのか特定して四角い枠で囲み、そこにピントを合わせる機能があり、これらのことによって一台の監視カメラで人物を特定できる範囲がかなり広がった。

現在顔認証が最も発達しているのは中国であると言われている。中国が高い技術を持っているというのも一つの理由だが、それよりもなによりも個人のプライバシーに対して国の規制がなく、人権団体などの反対もなく、国中の至るところに監視カメラを配置することができるという大きなメリットがある。データに関しても政府が自由に扱え、10億の顔データを蓄積できることで当然顔認証の精度も高くなる。それに加えて最新AI技術を導入して解析技術を高め、ほぼ都市内では監視カメラの死角がないと言われるくらいだ。英国BBCの記者が中国南西部の貴陽市の警察を訪れ、監視カメラがどのくらい早く自分を見つけることができるのかというおもしろい実験をした。結果、その記者が街に出て警官に囲まれるまで7分しかからなかった。

戦後日本では1年間以上定住する外国人に対して指紋捺印を義務付けていた。そのころは今と違って朱肉を使って紙に押していたので、赤くなった指をティッシュで拭いてもしばらく指に赤が残るという問題があった。それよりもなによりも当時指紋を取られるのは犯罪者くらいで、外国人を犯罪者扱いするのかという外国からの非難があったこともあり、1999年に廃止された。

1990年代に私がアメリカ旅行したときに驚いたのは、アメリカでは入国手続きはあるが、出国手続きがなかったことだ。理由を聞くと「去る者は追わず」、「いやだったらいつでも帰っていいよ」というよき国、合衆国の誇りがあった。ところが2001年ニューヨークで起こった同時多発テロ事件以降、自由の国アメリカでまず入出国の際に指紋認証が始まった。この場合の指紋認証の方法として朱肉の代わりにガラスのボードに指を押し付けるという現在他国でも使われている方法が取られた。

日本では指紋というと拇印というように、右手の親指と思いがちだが、最近日本での外国人入出国審査では両方の人差し指の指紋が登録される。そして現在多くの国の出入国審査で、全ての指の指紋を取られることが行われている。たとえばシンガポールでは、最初に右手の指、親指を除く4本を取り、次に左手4本、最後に右と左の親指を同時に押すという具合だ。指紋認証の仕組みだが、この研究は日本がかつてリードしていたらしい。1980年代にそれまで一枚一枚人の手によってチェックしていた指紋をNEC社がコンピュータを用いて自動化した。その後多くの研究によって、精度があがり、インターネットの発達により検索のスピードもあがり、現在では一瞬で個人が特定できるということである。指紋認証は、最近ではPCやスマートホンでログイン代わりに普通に使われており、使用範囲も広がり、オフィースや家のセキュリティーにも使用されるようになった。

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