鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


コレステロールとは
コレステロールとは脂肪の一種で人間の体内では肝臓でつくられています。また、コレステロールはあらゆる食品にも含まれています。体内ではコレステロールはいくつかの重要な役割を果たしています。消化に必要な胆汁、数種類のホルモン、それにビタミンDの製造に欠かせない成分です。しかし体内のコレステロールのレベルが高すぎると悪影響をきたします。コレステロールが多いと体内のあらゆる組織に蓄積されますが、特に動脈の壁に蓄積するといろいろな問題をおこします。これがいわゆる動脈硬化という現象です。そして、動脈のなかでも冠状動脈(Coronary arteries という心臓の筋肉に酸素を供給する動脈)が影響されて狭くなると狭心症や心筋梗塞などがおこります。また、頸動脈や脳を供給する血管にこのような変化が起こっていれば脳梗塞がおこりやすくなります。このような血管の動脈硬化からおこる病気の総称をCardiovascular disease (心血管疾患)といいます。

なぜコレステロールは高くなるのか
血中コレステロールが高まる理由は主に二つあります。
1)食事
ほとんどの人の高コレステロールの原因は食べ物からの摂取量が多すぎることからきています。
2)遺伝
体質的に体内でのコレステロールの処理が能率的でなく、血中のレベルが高くなる人もいます。親が40才以前で心筋梗塞をおこしたという家族歴があれば若い頃からコレステロール値を注意して見ておくことが大切です。

家族制高コレステロール血症
この疾患は常染色体性優性遺伝で伝わる異常で、人口の1/500におこります。60才までに心疾患がおこるリスクは男性で60%、女性で30%です。コレステロール値が異常に高く、総合コレステロールは7.5 以上、LDLコレステロールは5 以上のことがほとんどです。腱のまわりに腱黄色腫(Tendon xanthoma)ができていたり、両親や兄弟で比較的若年齢で(50才以下)心筋梗塞をおこしたという家族歴のある人は要注意です。このような患者さんは生活習慣でコレステロールが高くなっているわけではなく、遺伝的な要素で若いときからコレステロール値が高いので動脈硬化も若い時期から進んできています。よって、アグレシッブに治療をする必要があります。

中性脂肪の役割
コレステロールとは別に血中には中性脂肪という脂肪分があります。中性脂肪は通常体内の脂肪組織に蓄えられています。身体がエネルギーを必要とするときにホルモンの作用によって放出され、エネルギーに変換されます。食事を摂取したあと、そのときに必要とされないエネルギー源は中性脂肪として体内に蓄えられますが、常時必要以上の栄養分を摂取すると血中中性脂肪が上昇します。コレステロールと同様に血中濃度が高すぎると動脈硬化からくる心疾患や脳血管疾患がおこりやすくなりますが、その悪作用は高コレステロール(特にLDLコレステロール)ほどではないかもしれません。いずれにしろ、高中性脂肪は高コレステロールと同時におこることがよくあります。そして、コレステロールを下げることをターゲットにした治療は中性脂肪も下げる効果があります。

コレステロールの治療についてわかっていること
治療データの蓄積から次のような結論がでています。
1)動脈硬化で動脈壁に蓄積されている病変部の成分は大部分がコレステロールや他の脂肪分から成り立っている。
2)動脈硬化の進度は血液中のコレステロール値と正比例している。
3)コレステロール値の高い人は動脈硬化からおこる心臓病(狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患)をおこす確率が高い。
4)治療によって(食事療法あるいは薬)コレステロール値を下げれば動脈硬化の進展をおくらせるか、あるいはいくらか後退させることができる。
5)同時に虚血性心疾患の発生率を低下させることができる。
6)血中コレステロール値を1%下げれば心臓病がおこる危険度を3%下げることができる。
*食事療法を厳密に守っていればコレステロール値は10-15%下げられるはずです。

コレステロールが高いとなぜ動脈硬化がおこる?
血中コレステロールが高いと必ず動脈硬化がおこるという単純なものではありません。同年齢の人が同じコレステロール値であっても同程度の動脈硬化がおこっているわけではありません。それではどうしてそのような個人差がでてくるのか、そして実際にどうやってコレステロールが動脈の壁に蓄積されていくのかは今のところはっきりと解明されていません。
ただし、高コレステロール値以外に高血圧、糖尿病、喫煙などの因子も加われば動脈硬化のおこる速度が加速されることはわかっています。特にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の場合、酸化(oxidation)がおこるとLDLコレステロールが血液中の単核細胞に飲み込まれ、その合体物が動脈壁に蓄積されやすくなり、血管が狭くなってしまいます。

食事療法について
*溶性線維
豆類、全粒穀物(whole grain)、 亜麻、リンゴ、柑橘類などに多く含まれます。溶性線維は消化器を通過しながら胆汁を吸収します。その結果、肝臓がより多く胆汁を作るために血液中のコレステロールを使用し、血中コレステロールのレベルが下がります。

*果物、野菜
果物や野菜を1日に4盛り以上食べるとLDLコレステロールのレベルが約6%下がります。また、果物や野菜には抗酸化物質(Antioxidant)が多く含まれていますので動脈硬化性のプラークが血管内におこりにくくなります。

*ハーブやスパイス
ニンニク、ターメリック、ショウガなどにはたくさんのビタミン、ミネラル、それに抗酸化物質が含まれています。ニンニクを1日1クローブ、3ヶ月間食べ続ければ総合コレステロールのレベルを9%下げることができます。オレガノ、セージ、ミント、タイム、シナモン、クローブなどにも多く抗酸化物質が含まれています。

*脂肪分
脂肪には飽和脂肪と多価不飽和脂肪があります。飽和脂肪は牛肉、豚肉、子羊の肉、鶏肉、バター、クリーム、チーズなどの自然食品に含まれています。最近まではこの飽和脂肪が体に有害だと思われてきましたが、精製された炭水化物を多く含む加工食品にも飽和脂肪は多少含まれています。飽和脂肪自体が有害なのではなく、このような精製された炭水化物との組み合わせがよくないということがわかってきています。
例えば、ピザ、ケーキ、お菓子、ポテトチップス、ビスケット、パスタ、白パン、ホットドッグなどです。
不飽和脂肪には単不飽和脂肪と多価不飽和脂肪があります。オリーブオイルは単不飽和脂肪の一例です。比較的酸化しにくく、抗酸化物質が多く含まれているので料理に使うにはいい油です。アーモンド、ペカンナッツ、カシュウナッツ、ピーナッツ、アボカドにも含まれます。
多価不飽和脂肪には主にオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸とがあります。どちらも体には必要な成分ですが、摂取される比率が大切です。オメガ3対オメガ6の比率は1:1で保たれていることが大事です。オメガ3には抗炎症効果があります。オメガ6の比率が高すぎると炎症効果が現れ、体には有害です。オメガ3脂肪酸は鮭、サバ、ニシン、イワシ、まぐろ、アンチョビーなどの油の多い魚に含まれます。オメガ6源はおもに植物性油です。調理にはなるべくオリーブ油、バター、ラードなどを使うことが薦められます。
トランス脂肪は植物性油などの不飽和脂肪に水素付加したもので、自然にある飽和脂肪の安価な代用品としてレストランや食品製造業のあいだで使われてきましたがLDLコレステロール値を上げ、心臓疾患をおこしやすいということでアメリカでは使用を禁止されています。トランス脂肪は多くの加工食品、例えばチョコレートのコーテイング、ケーキのアイシング、あらゆるソースやドレッシング、ケーキなどのクリーム状の詰め物、パンなどのベークされた食べ物などによく含まれています。

*糖分
糖分の摂取が多すぎるとやはりLDLコレステロールのレベルが上がり、心臓疾患のリスクも上昇します。甘いものは避けるようにしてください。この中にはコークやファンタなどの炭酸飲料やエネルギー飲料も含まれます。

*大豆
大豆にはHDL-コレステロールを上げ、LDLコレステロールを下げる効果があります。大豆や豆乳のような自然食品のほうが大豆加工品や大豆サプリメントのようなものよりもこの効果は高そうです。

*緑茶
緑茶を毎日2週間続けて飲むと総合コレステロールとLDLコレステロールを下げる効果があるというデータがあります。緑茶には抗酸化物質も多くふくまれていますので心臓疾患のリスクを下げることに役立ちます。

その他の注意点として肥満体であればカロリー制限をして体重をおとすことに努力してください。週に2-3回は定期的に運動(水泳、散歩、ジョッギング)をするようにも心掛けてください。

投薬治療
もし、食事に注意をして減量をしてもコレステロール値が下がらず、心血管疾患がおこるリスクが高ければ投薬療法も考慮しなければなりません。高血圧、糖尿病も持っている人はそちらの治療もきちんと続けなければなりません。喫煙者は禁煙をすることも大切です。

Share This