情報提供:アドバンテージ・パートナーシップ法律事務所-国際商事仲裁専門
国際仲裁弁護人・国際調停人 堀江純一(国際商業会議所本部仲裁・調停委員)


国際商事調停

米国、中国、インドを含む46カ国が本年8月7日にシンガポール調停条約に調印致しました。その6ヶ月後に施行される国際商事調停について説明させていただきます。この施行によって、豪州、ニュジーランドやその他の加盟国でご活躍されている日系企業が同加盟国の企業と国際紛争に至った場合、その解決策として、裁判以外にシンガポール調停条約に基づき、新しい解決策を見出すことが可能になります。今回はその新しい解決策としての国際商事調停について説明させていただきます。

1.紛争解決手段の概要
一般的に紛争解決の手段は大きく分けて、二つの種類が考えられます。
裁判所による手続きを利用する方法と、裁判所以外による紛争解決を図る方法の二つの種類です。
後者は総じて「ADR(Alternative Dispute Resolution):裁判外紛争解決」と呼ばれており、代表的な方法としては、仲裁と調停が挙げられます。
https://www.meti.go.jp/policy/ipr/infringe/remedy/remedy02.html

1) 裁判と調停の違い
裁判と調停の大きな違いは以下の通りです。

裁判 調停
解決方法 有り  当事者の合意
公開性 公開  非公開
終局性 最終的  不成立になった場合、裁判所の判断の手続きへ移行可能
再審性 上訴可  再審不可
執行力 有り  無(但し、裁判所に執行を依頼する事は可能)

2)調停と仲裁の違い
紛争解決に助力してくれるよう、第三者に依頼する点は仲裁と共通しています。しかし調停人が調停案を提示しても、当事者が合意しなければ、その案は有効とはならず、当事者が裁判所から執行判決を得ることはできません。合意をするか否かは当事者の自由になっています。
仲裁は紛争の解決において強制可能な方法であるという点では、裁判と同じ範疇に入る点を踏まえ、現在では外国において仲裁をADRの一種と考えない傾向も見られます。
http://www.adr.gr.jp/columns/002.html

2.国際調停とは
「紛争当事国間の合意に基づき設置された中立的な国際調停委員会が、紛争を審理し、解決条件を提示して、紛争の平和的解決を図る手続き。ただし、解決策は法的拘束力を持たない」(大辞林 第三版)
1)調停の方法
・評価型調停
法律的知識を持つ調停人が争点について意見を述べ、法的評価に基づき和解案を提案する等、紛争解決に対し積極的に介入する調停
・妥協要請型調停
名士が調停人となり、両当事者の主張の中間的なところでの解決、妥協を導く調停
・自主交渉援助型調停/対話促進型調停
中立公正な第三者が調停人となり、法的判断による解決をせずに当事者間のコミュニケーションを促進し、当事者自身での紛争解決の方法を探る調停
http://www.jcaa.or.jp/training2006/a_2006kiso_text.pdf*
*(社)日本商事仲裁協会、日本仲裁人協会から引用

2)調停のメリット
調停と裁判、調停と仲裁、各々の違いを踏まえた上で間がえられる調停による紛争解決のメリットとして以下の点が挙げられます。
(1)簡易な申し立て手続き
調停手続きを引き受けている、JCAAの場合だと、申立書のサンプを三行に必要事項を記載し、協会宛に送付するだけで調停の申立が出来ます。
(2)非公開性
裁判との大きな違いとしても挙げられたが、解決までの過程は非公開で行なわれ、結論も原則として公開されません。
(3)柔軟性
調停のための時間や場所も、当時者が合意すれば自由に決めることが出来ます。
(4)専門性
紛争の内容に応じた専門家を調停人として選任することが出来る。
(5)迅速性
一般的には数週間ないし数ヶ月で終わる場合が多く、日本商事仲裁協会の国際商事調停規則10条1項には、調停人選出から調停終了までを原則として3ヶ月としています。一方仲裁では、規則31項により仲裁廷が最終的な仲裁判断を示さなければならない期限は6ヶ月、加えてICC裁判所による審査や延長が可能であること、また、準備会合で作成された進行表も基に別の期限も設けることもできるので、平均して全体で1~2年が所要期間とされています。
https://www.jcaa.or.jp/adjust/features.html
3)調停のデメリット
お金と時間をかけたのにも関わらず不成立になる場合もあります。
4)調停人の選任
当事者の合意によって行なわれます。主な方法として、調停機関に紛争の内容に適している調停人を複数推薦してもらい、その中から選ぶ方法が挙げられます。
5)調停機関
仲裁機関のICC、ICDR(the International Centre for Dispute Resolution)、LCIA(the London Court of International Arbitration)は調停機関としてのサービスも提供しています。
日本において代表的な国際紛争解決機関は、日本商事仲裁協会(JCAA)と京都国際調停センター(JIMC)です。
またシンガポールでは特に調停機関の成立が進んでおり、シンガポール国際調停センター(Singapore International Mediation Centre)、シンガポール調停センター(Singapore Mediation Centre)があります。
6)国際商業会議所 / ICC International Centre for ADR
国際仲裁裁判所がICC規則に基づいて国際仲裁を行なう唯一の機関であったのと同様に、国際仲裁ではICC International Centre for ADRが唯一ICC Mediation Ruleに基づき調停手続きを運営、管理する権限を与えられた機関となっています。
紛争解決のサービスの提供のみならず、調停者の選出の援助も行ないます。
7)調停費用の構成
ICCでの調停の場合、調停にかかる費用の構成は以下の通りとされています。
・調停の要請を送る際のFiling Fee(申し立て費用)。3000米ドル
・頭金。センターの管理費、調停者の報酬を含む。2017年度の平均は23000米ドル
:事例の事情、紛争の重要性も考慮されます。
:調停者の報酬は、調停者が調停手続きに関与した時間を基に計算されます。時給は調停者が決まり、調停者と当事者とで協議を行なった後にセンターによって決められます。一律の時給に固定された後も当事者や調停人による妥当な要求があれば、センターが報酬の固定レートを変更する場合もあります。

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