鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


かゆみは皮膚疾患のなかでも一番頻繁におこる症状ですが、皮膚の病気からおこっている場合と、皮膚病ではなく、内臓疾患からからだ全体が痒くなる場合とがあります。

皮膚疾患
痒みをおこす皮膚病のなかでも特に疥癬(scabies) と蕁麻疹は、皮膚の変化が微妙でわかりにくいこともあります。
*疥癬(scabies):
皮膚疾患のなかでも 痒みが顕著で、特に夜間にひどくなりがちです。足や手の指のあいだをよくみると疥癬孔道(このダニが皮膚に潜り込んでいく穴)があります。塗布薬(Ascabiol) を首から下全体に塗って治療します。

*蕁麻疹:
場合によっては皮膚の変化が微妙でわかりにくかったり、時間の経過とともに出たり引いたりしますので診断が困難かもしれません。皮膚描記症(dermatographism) といって皮膚を強く擦ったり掻いたりしたあとが赤く腫れれば蕁麻疹の診断に役立ちます。抗ヒスタミン剤で通常治まりますが、アレルギーをおこした原因がはっきり
していれば(例えば甲殻類を食べた時に出る)その原因を避けるべきです。

*疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis):
小さな水疱や丘疹が肘、膝、それにおしりに左右対称にでき、非常な痒みをおこします。免疫性疾患のひとつとして考えられています。

*水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid):
自己免疫性疾患の一種で、大きめの水疱ができます。副腎皮質ホルモンが必要となります。

*乾燥症(xerosis):
とくに年齢とともに皮膚が乾燥し、痒みがおこることがよくあります。保湿クリーム(Cream E45,Hydraderm, Dermatrate, 10%Glycerine in Sorboleneなど )を頻繁が使うことが大切です。

*その他:
虫さされやアトピー性皮膚炎も痒みをおこす皮膚疾患です。

内臓疾患
*尿毒症:
腎不全で尿素のレベルが高くなるとおこりますが、そのメカニズムははっきりと解明されていません。尿毒症によくおこる副甲状腺機能亢進症と関連があるかもしれません。副甲状腺を摘出すると痒みが治まることもあります。中波長紫外線(UVB,ultraviolet B) の光線療法も使われることがあります。また、皮膚の乾燥もおこっているようでしたら保湿クリームも必要です。

*胆汁うっ滞性肝疾患:
胆汁に含まれる胆汁酸塩(bile salt) が皮膚に溜まるからだろうと思われています。胆汁酸塩と結合して体外に取り除くような薬(cholestyramine) が効果的です。中波長紫外線療法も効果があるかもしれません。人によっては妊娠中に軽い胆汁のうっ滞がおこることもあり、痒みがおこります。やはり、光線療法か chlorpheniramine という抗ヒスタミンを使用します。

*血液学的疾患:
真性多血症という赤血球が多くなりすぎる病気(polycythemia vera)ではちくちくするような痒みを経験します。とくに気温の変化がおこったときにおこりやすいようです。アスピリンや消炎剤がこのような痒みには効果があります。悪性リンパ腫(Hodgkin’s disease)の場合、診断される以前から痒みが続いているケースがよくあります。

*内分泌疾患:
甲状腺機能亢進症、ならびに低下症、それに糖尿病でもまれに全身の痒みをおこすことがあります。

*水による痒み:
まれに、水との接触によってちくちくするような痒みがおこる人もいます。メカニズムはわかっていませんが、中波長紫外線療法に反応するようです。

*原因不明の痒み:
検査をしてもこれといった原因が見つからない人もあります。抗ヒスタミン剤(例えばAtaraxという、少し眠気もおこすような薬)や抗ヒスタミン作用ももっているような抗うつ剤(Doxepin)が効果を現すこともあります。痒み止めの塗り薬(Sarna lotion)や保湿クリームも役立つこともあります。しばらく観察をしたあとにはじめて原因がはっきりと現れてくることもあります。

*皮膚寄生虫妄想:
寄生虫や虫が皮膚に潜んでいるという妄想をおこす精神病です。精神科の診断、治療が必要です。

検査
まず、よく診察して発疹があるかどうかを確認します。典型的な発疹(蕁麻疹やアトピー性皮膚炎)が出ていれば特に検査をする必要はありませんが、診断がはっきりしない場合は何らかの検査が必要となることもあります。
*生検:
発疹が出ていて診断が確実でない時は皮膚の一部から組織を採って細胞診断する方法(Punch biopsy)を用います。場合によっては2-3カ所からサンプルを採取することもあります。

*血液検査:
内臓疾患が疑われるような場合や塗り薬や内服薬まで使っても難治な時には血液検査も必要となります。次のような検査をまず行います。
-血色素、白血球数
-炎症反応を診る検査(CRPーC反応性タンパク、ESRー赤血球沈降速度 )
-肝機能、腎臓機能
-甲状腺機能
-フェリチン
-血糖値
-免疫電気泳動法 (immunoelectrophoresis)
-免疫グロブリンE (IgE, immunoglobulin E)アレルギー疾患が疑われる場合
このような検査の結果によってはもう少し詳しい検査 (HIV,肝炎検査、貧血検査など)に進むこともあります。

治療
どのような要因によっておこっている痒みでも、一般的な処置でまずその症状を抑えることが大切です。
-皮膚の加熱を防ぐ - 皮膚の温度が上がると炎症反応は増幅し、痒みがひどくなります。特にセントラルヒ-テイングやガスストーブなどは室温を高めると同時に空気を乾燥させてしまいます。電気毛布なども体温を高めるので使用を控えることが賢明です。長時間の暑いお風呂やシャワーは避けるべきです。
-皮膚を刺激するような服(毛や荒い繊維のもの)、絨毯、ソファーなども摩擦によって痒みを悪化するので避けてください。
-もし皮膚が乾燥しているようでしたら保湿クリームをよく使うことです。アルカリ性の石けんは避けなければなりません。
-炎症がひどいようでしたらステロイドの軟膏も必要となります。なるべく強めのステロイドを使い、痒みを早く治めることが大切です。

*経口薬:上記のような方法で痒みが治まらなければ経口薬を使うこともあります。
-抗ヒスタミン剤 - 特に蕁麻疹などのアレルギー要因でおこっている痒みには効果的です。
-副腎皮質ホルモン - 数日間で徐々に服用量を減らす方法で痒みをコントロールします。
-抗鬱剤 - 眠気をおこす抗鬱剤で、夜間の痒みを抑え睡眠がよくとれることもあります。
-免疫抑制薬 - どうしても痒みがなかなか治まらないような時に使用されることもあります。

*光線療法
-中波長紫外線(Ultraviolet B)の照射治療も使われることもあります。

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