鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


肝臓は多数の機能を持つ複雑な臓器ですが、大きく分類して3つの大事な役割があります。
1)代謝
肝臓は身体にとって不可欠な3大栄養素(蛋白質、脂肪、炭水化物)を取り扱う大事な臓器です。小腸から吸収されたそれぞれの栄養素は体内で利用できるものに加工されたり、一時的に肝臓に貯蔵されたりします。炭水化物はブドウ糖に、そして必要に応じてグリコーゲンとして肝臓に貯蔵されます。アミノ酸はあらゆる蛋白質に作り替えられ、脂肪分はコレステロールや中性脂肪の生産に使われます。
2)解毒
体内に摂取された有害なものを処理し、胆汁を介して小腸に分泌し、便として体外に排出したり、血液中に流して腎臓経由で尿として排泄する働きがあります。
3)胆汁
古くなった赤血球が脾臓で分解されてできる血色素を抱合して水溶性のビリルビンに変え、胆汁の元になります。胆汁は小腸に分泌され、脂肪分の吸収を助けます。

肝機能検査
一般的に言う肝機能検査とは肝臓に関連するいくつかの物質の血液中のレベルを測ったものです。下記のリストが代表的な例です。厳密に言えば肝細胞の生産機能を反映するものはアルブミンと胆汁色素(bilirubin) だけで、その他は肝臓から放出されるいくつかの酵素です。中には肝臓以外の臓器から排出される酵素もあります。

(*上記の正常範囲は検査機関によって多少の違いはあります)

アルブミン
このタンパクは肝臓で作られます。血液中のこのタンパクのレベルが低ければ肝硬変などの慢性の肝疾患を反映しますが、栄養不良、ネフローゼ症候群、水分過剰、ひどい火傷などでもアルブミンの血中レベルが下がることもあります。

グロブリン
このタンパクには主に4種類あり、肝臓で作られるものもあればリンパ球によって生産されるものもあります。免疫抗体はグロブリンから成り立っています。血中のグロブリンのレベルは肝臓の病気(胆汁性肝硬変、閉塞性黄疸)以外にも慢性の感染症、リューマチ性関節炎、潰瘍性大腸炎、多発性骨髄腫、白血病、SLE などによって上がることがあります。
アルブミン/グロブリン比 :通常のアルブミン:グロブリン比は2:1です。肝臓疾患ではこの比率が下がります。

ビリルビン(胆汁色素)
古くなった赤血球から出た血色素が肝細胞の中で抱合され、胆汁に含まれて小腸に分泌されます。ビリルビンの数値が上がるのは赤血球が過剰に破壊されたり(溶血反応)、肝細胞に損傷がおきたり(肝炎、肝硬変など) 、肝内で胆汁がうっ滞したり(妊娠、原発性胆汁性肝硬変など)、胆管閉塞(胆石、癌など)がおこったりしたときです。ギルバート症候群(Gilbert syndrome) は肝臓で胆汁色素をプロセスする酵素が欠けているために血中のビリルビンが僅かに上昇する疾患です。肝機能や普段の生活には何の影響もありません。

ALP (Alkaline phosphatase)
この酵素は肝臓だけではなく、骨と胎盤にも存在します。この数値が上昇しているからといって必ずしも肝臓の病気がおこっているというわけではありません。もし肝疾患が原因である場合、胆石、原発性胆汁性肝硬変(Primary biliary cirrhosis) アルコール性肝炎,癌などが考えられます。

GGT(Gamma glutamyl transferase)
この酵素は胆管で製造されます。薬品やアルコールによって数値が上がることがよくあります。また、膵臓の病気で数値が多少上がることもあります。

ALT(Alanine aminotransferase) (GPT)
ALT は肝細胞で作られます。肝細胞死がおこるとこの酵素は細胞外に流出し、血中レベルが上がります。急性肝炎では数値が数千というレベルに達することもあります。HMG-CoA還元酵素阻害薬(俗にstatin と呼ばれる高脂血症治療薬)の服用で aminotransferase の数値が上がることもあります。
AST とともに慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌、閉塞性黄疸などででは100~500IU程度の数値に上がります。アルコールの飲み過ぎ、糖尿病、脂肪肝などでは100IU程度までの上昇が通常です。

AST(Aspartate aminotransferase) (GOT)
この酵素も肝細胞で作られますが、心臓など、その他の臓器にも見られます。例えば心筋梗塞がおこった場合にこの数値が高まりますが、ALT は上昇しません。ALT と AST の比を見てどのような疾患かを推定することもできます。

LDH(Lactate dehydrogenase)
この酵素は全身の細胞に存在します。肝臓以外に心筋、骨格筋、腎臓などに多く含まれます。急性肝炎、心筋梗塞でLDH は上昇しますが、激しい運動をしたあとでも数値は上がります。その他の全身のあらゆる病気でも多少数値があがることがあります。どの臓器から発生したものか確かでない場合はアイソエンザイム(isoenzyme, 同位酵素)検査をして確認することもできます。

その他の検査
*Prothrombin time
-血液の凝固反応がおこるときに必要なタンパクも肝臓で作られます。このプロセスにはビタミンKも必要です。Prothrombin time (プロトロンビン時間)は血液の凝固反応機能を測る検査で、この機能が低下していると肝細胞の生産機能が低下していることもあります。肝疾患以外の病気でもこの凝固機能は低下することもあります。たとえば栄養不良でビタミンKが不足しているときなど。
*血小板数
-肝硬変など慢性の肝疾患がおこっていると脾臓が肥大し、血小板が脾臓の中にとらえられ、血液中の血小板数が低下します。もちろん、肝臓の病気以外の病気で血小板が少なくなることもあります。

上記のように肝機能検査にはいくつかの項目があり、それぞれの数値とその他の臨床所見とを総合的に評価して診断しなければなりません。

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