鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


更年期とは閉経(最後の生理から1年たったら閉経です)前後の数年間の時期で、卵巣の働きが低下して女性ホルモンの分泌が低下することによってあらゆる身体の変調がおこってきます。閉経は通常50~51歳でおこりますが、少し
早かったり遅かったりする人もいます。この時期には女性の約50%は睡眠に関する問題を経験します。ホルモンの変化以外に社会的な状況、家族の問題、病気などからの影響もおこりやすい年齢期ですので、この時期の女性の不眠症を考慮する場合、あらゆる原因を探って見る必要があります。

不眠症の症状
最もわかりやすい症状はなかなか眠りにつけないということと一度眠ってもすぐに目覚めてしまうということですが、その他にも起床時にすっきりしていなっかたり疲れがとれていなかったり、日中眠くなったりという症状もあります。
また、不眠が続くと次のような症状も現れてきます。
*不安感    *イライラ    *ストレス
*注意力の低下 *記憶力の低下  *仕事のエラーや事故
*頭痛     *消化不良 等

その他の要因
*ストレス ー 仕事、家族の問題、対人関係の悪化、経済的なストレスなどで不安を抱えていると睡眠にも影響が及びます。
*精神衛生 ー 鬱病や不安症などから睡眠障害をおこすこともあります。また、逆に不眠が続くことによって鬱状態になったり気分が落ち込むこともあります。
*食事や生活習慣 ー 夜遅くに食事をとったら消化不良により睡眠が妨げられることもあります。また、コーヒー、紅茶、アルコールなどの刺激物を睡眠間近に飲んだら睡眠のサイクルが狂うこともあります。仕事で頻繁に飛行機で長距離出張などを繰り返しているとやはり睡眠サイクルに支障が出てきます。
*睡眠無呼吸症 ー 運動不足で体重が増えたりすると睡眠無呼吸症にもなりやすくなります。いびきがひどかったり、パートナーが無呼吸を目撃したことのある場合は睡眠検査(Sleep study)をしてみる必要があります。

治療の選択肢
*生活習慣 ー 週に3-4回は適度に運動をし、食事も規則正しくとるようにすることも大切です。もし、体重が増え気味でしたら食事内容を見直し、体重を減らすことも試みてください。
*食事   ー トリプトファン(Triptophan)というアミノ酸はセロトニンという脳内伝達物質の製造に欠かせない成分です。セロトニンは心を落ち着かせ、安らかにする効果があります。また、メラトニンという概日リズムを制御するホルモンの製造にも必要なアミノ酸です。メラトニンの分泌が年齢とともに低下していく傾向があり、高齢者には睡眠障害がよくおこるひとつの要因でもあります。トリプトファンは魚介類、鶏肉、赤身の肉、卵、豆類、乳製品(ヨーグルトやチーズ)などに多く含まれています。

*認知行動療法 ー (Cognitive behavioural therapy, CBT)とは認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種です。考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていきます。誤った認識・陥りがちな思考パターンの癖を、客観的でよりよい方向へと修正していくカウンセリングの手段です。心理学者(Psychologist)によって行われる治療法です。精神衛生面で問題がある場合(鬱病や不安症)に効果的です。
*抗鬱剤  ー 鬱病が原因でおこっている不眠症でしたら認知行動療法も行いますが、この方法だけで治まらないようでしたら抗鬱剤も必要となります。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(Selective serotonin reuptake inhibitor, SSRI)や選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(Serotonin & noradrenaline reuptake inhibitor, SNRI)という抗鬱剤がよく使用されます。このような薬には多少ホットフラッシュを軽減させる効果もあります。
*ホルモン補充療法 ー ホットフラッシュによって夜間の発汗がひどくて眠りを妨げるような場合はこの方法が効果があります。経口薬、あるいはパッチ薬もあります。子宮がない場合は女性ホルモンだけの服用ですが、子宮がある場合は女性ホルモンと黄体ホルモンも服用しなければなりません。
*メラトニン ー 年齢とともにメラトニンの分泌が減っていくので55歳以上でしたらこの薬も効果があるかもしれません。
*睡眠無呼吸症 ー もし睡眠検査(Sleep study)で診断が確実でしたらデンタルスプリントや持続気道陽圧方(Continuous positive airway pressure)で睡眠が改善されます。
*睡眠薬、精神安定剤 ー ベンゾジアゼピンという系統の薬は短期間だけの服用(1-2週間)に制限しなければなりません。薬物耐性がおこったり、依存症になる危険性が高いのでなるべく使わないように医師は用心しています。

睡眠に関する衛生 (Sleep hygiene)
睡眠を妨げるような病気、あるいは精神状態、もしくは薬品の影響でないとすれば、その人の睡眠に関する衛生観念のおさらいをする必要があるかもしれません。次に挙げる点について考慮し、改善できる点があればそのように努力をしてみて下さい。

◎睡眠時間にこだわりすぎない~2-3日眠りにくい日が続いたとしても焦らずに気にかけないようにする。

◎眠いときにだけ床につく~眠くないのにベッドにはいっても眠ろうとして焦るだけです。眠る目的以外にはベッドによこたわらないようにする。ベッドに入ってから20分以上たって眠れないようならベッドから離れて他のことをしてみる。(ただし刺激になるような行動は避ける)

◎生活のリズムを保つ~特に起床時間は定めておき、毎朝同じ時間におきるようにする。前夜の睡眠時間が短かったからといって寝過ごさないようにする。昼寝は避ける。夕食は就寝時間の数時間前、決まった時間にとり、夜食は避ける。

◎鎮静薬は避ける~アルコール、睡眠薬、精神安定剤などはとらないようにする。

◎刺激薬も避ける~カフェイン、ニコチン(たばこ)、アンフェタミーンなど。

◎就寝場所の環境を整える~強い光、音、極端な気温の高低、高湿度などを避け、安らかな環境にすることに努める。マットレスや枕もなるべく心地良いものにする。

◎規則正しく運動をする~なるべく週に最低3度は運動をするよう心掛ける。就寝前に刺激のある激しい運動は避ける。なるべくなら午前中のあいだにしておく。

◎空腹は避ける~床についても空腹が続けば眠りにくくなります。なるべく高蛋白のものをとってみる。(暖かいミルクもよくききます)

◎リラックスが大事~暖かいお風呂に入ってみるのも一手段。ヨガやメデイテーションなどを習ってみることも役に立つはずです。

◎床についての考え事は避ける~心配事があれば一度起きて解決策をリストし、どのようにその方法を実施するかを考えてからまた床に着く。

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