鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


鼻炎とは、鼻の中の粘膜に炎症がおこることで、鼻水、くしゃみ、鼻のかゆみ、それに鼻づまりなどの症状をおこします。アレルギー性鼻炎とは、その鼻炎がアレルギーをおこす何らかの抗原の刺激によっておこる鼻炎のタイプです。その他の大きな鼻炎の原因は風邪の菌などによる細菌性のものがあります。重病としては見られませんが、毎日の生活に影響し、集中力の減退、不眠症、慢性の疲労感などがおこることもあります。

原因
空気中に飛んでいるアレルギー抗原に対して感作反応がおこり、鼻炎の症状をおこします。アレルギーをおこす抗原によって症状が季節性のものと年中おこっているものとがあります。
オーストラリアではハウスダストマイト(House dust mite)が多年生のアレルギー性鼻炎の最も大きな原因です。ダニは海岸沿いの都市、特にシドニーやメルボルンに多く見られます。内地の乾燥している地域にはあまり見られません。
季節性のアレルギー性鼻炎では草花粉が一番大きな原因となります。オーストラリアでは地域によりますが、10~12月頃が一番発生しやすい時期です。Ryegrass, Bermuda grass, Bahia grass などが主な種類です。その他に動物のアレルギーでもおこることがあります。特に室内で飼うものでは猫がよくアレルギーをおこします。一般には猫の毛がアレルギーをおこすと思われていますが、この場合の抗原は猫の唾液に含まれている成分です。猫は自分の毛をよく舐めますので、当然毛にも唾液がついています。

アレルギー性鼻炎がおこるメカニズム
遺伝的に敏感な人はあらゆる抗原に感作し、IgE という抗体ができます。個人個人がどの抗原に対して敏感かということは、これも遺伝的に定められているようです。この感作という段階は生後1年の間に抗原との接触があればおこっているようです。もちろん、後になってからの抗原との接触でも感作はおこります。 アレルギーをよくおこす抗原には dust mite (ダニ)やあらゆる花粉があります。
抗体は鼻の粘膜にある mast cell という細胞にくっついています。そして、抗原が鼻の粘膜と接触すると mast cell から histamine (ヒスタミン)などというアレルギー反応を引き起こす媒介物質を放出させるわけです。この場合、抗原を鍵とすれば、抗体は鍵穴となります。鍵と鍵穴がうまく一致しなければアレルギー反応はおこりません。
アレルギー反応により放出された媒介物質は血管を拡張させ、粘膜の神経を刺激し、かゆみやくしゃみをおこします。この急性のアレルギー反応から、 cytokine という別の媒介物質が放出され、eosinophil (好酸球という白血球の種類)を活動させます。 この好酸球は、鼻の粘膜の上皮細胞にダメージをおこすような蛋白を放ち、鼻の粘液の分泌を増やし、粘膜を肥厚させ、鼻詰まりをおこしたり鼻の粘膜を特定の抗原だけにではなく、煙、汚染、冷たい空気などの不特定な刺激に対しても敏感にさせます。
急性の反応はくしゃみ、鼻のかゆみですが、これを繰り返していると慢性化して鼻詰まりもおこってきます。

アレルギー性鼻炎の症状
鼻や目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりが主な症状です。目が赤くなったり、涙が出たりすることもあります。長く続いていれば不眠、集中力減退、疲労感、それに不安症までおこることもあります。
また、アレルギー性鼻炎の人約40%は喘息も持っています。
鼻のかゆみやくしゃみがおこっていない場合は非アレルギー性の鼻炎かもしれません。香水、花、煙、アルコールなど反応して鼻炎がおこることもあります。
多年生のアレルギー鼻炎でも季節的に症状が悪化することもあります。

診断
症状は上記した通りですが、風邪や上気道炎と判別する必要があります。アレルギーの場合、ひどい喉の痛み、咳や発熱はおこりません。また、はじめて症状が発生するのはほとんどが20歳以下でおこります。
抗原が何であるかをつきとめるには症状が一年中あるのか、あるいは特定の季節だけにおこるのか、あるいは引き金となる要因があるのかなどを留意しておくと役にたちます。例えば掃除機をかけた時やベッドをなおした時(ダニ)、動物(猫、犬、馬など)と接触があった時、暖かい風が吹いたり(花粉)雷雨がおこった時(カビ)に症状がおこればおおよその見当がつくわけです。

検査
*皮膚のアレルギー検査
これは、抗原のついている針で皮膚を軽く刺し、その反応によって体内にその抗原に対する特定のIgE抗体があるかを見る検査です。この結果の解釈は臨床症状と照らし合わせてしなければなりません。この皮膚テストの結果だけを単独で判断して治療を進めてもいい結果は得られません。
*血液のアレルギー検査
もし、皮膚のアレルギー検査ができなかった場合、 RAST という、血液でするアレルギー検査があります。空気中にある鼻炎をおこす抗原と、血液で反応が出ている抗原との関連は皮膚テストの反応との関連ほどに強くはありません。
*食べ物アレルギー
食べ物からのアレルギーで鼻炎がおこることはほとんどありません。科学的に証明された鼻炎に関する食べ物アレルギーの検査はありません。もし、アレルギー鼻炎が食べ物からおこっている疑いが強ければ、その特定の食べ物を避けることによって症状が改善し、しかもその後にまた食べた時に症状が再発するかどうかによって確認するしかありません。
*レントゲン
鼻づまりの症状が顕著だったり、無臭覚症がなかなか治まらない場合は、顔のCTスキャンをとって見ることもあります。鼻たけ(Nasal polyp)や副鼻腔炎がおこっているかを確認するためです。

治療
*抗原を避ける

House dust mite (家ダニ)
*熱湯(55℃以上で)シーツや枕カバーを洗う
*マットレス、羽布団、枕カバーはダニの通らないカバーを着ける
*羽毛の入っているクッションを家の中に置かない
*ほこりはダスターではたくのではなく、湿った布で拭き取る
*掃除機のフイルターはダストマイトを取り除けるものにする
*掃除中にはマスクをする
*ベッドには毛のふさふさしたおもちゃなどを置かない
*絨毯を寝室から、できれば家全体から取り除く
*動物は絨毯のあるところには来させない
*できればducted heating は避け、床下ヒーテイングにする
(少なくとも寝室へのducted heating は止める)
*厚めのカーテンはブラインドか薄めのカーテンと取り替える
*布貼りの家具はあ避け、ケインや皮、あるいはビニール貼りのものにする
花粉
*花粉の多い北風の強い日は外での活動を避ける
*芝刈りをするときはマスクをする
*家の中からドライフラワーや白花香を取り除く
*花粉が運ばれてくる風向きの窓はなるべく閉じる
*寝室の窓のすぐ外にある茂ったブッシュは取り除く
動物
*動物は屋内で飼わない
*人や服に付いた動物の毛は屋外ではらっておく
カビ
*部屋からカビを取り去る。カビのある絨毯やラグも取り除く
*部屋の空気の通りをよくする
*庭から枯れ葉や堆肥を取り除く
*エアコンにカビが溜まることがあるのでよく掃除しておく

*薬
1)飲み薬-
抗ヒスタミン剤:代表的なものには Teldane, Claratyne, Zyrtec, Aerius などという薬があります。このような薬は鼻水やくしゃみには効果がありますが、鼻づまりにはほとんど効きません。また、しばらく使っていると効果が薄れることもあるので、この場合、同じ抗ヒスタミンでも他の薬に変えてみると効果的です。
2)スプレー式の薬-
副腎皮質ホルモン:アレルギーからおこる鼻の症状、特に鼻づまりにも効果的です。長期間の使用は安全なようです。Beconase, Nasonex, Avamys, Omnaris などという薬があります。
Levocabastine:最近できたスプレー式の抗ヒスタミンです。効き目が比較的速いので便利です。
Rynacrom:これは、喘息で使われる Intal と同じ薬です。副腎皮質ホルモンよりも効果は弱めですが、副作用は全くありません。定期的に、頻繁に使用しないと効果がありません。
Atrovent:鼻水が主な症状の場合有効です。くしゃみ、かゆみ、鼻づまりにはあまり効きません。
その他にスプレーの薬では、風邪のときの鼻水や鼻づまりに使われる市販の充血緩和剤(decongestant)がありますが、数日以上続けるとかえって鼻づまりがひどくなるので、短期間だけにしてください。

*アレルゲン免疫療法
アレルギー抗原を投与して身体を徐々にその抗原に慣れさせ、アレルギーの症状を緩和させる治療で、花粉、カビ、ダストマイト、動物などのアレルギー抗原に対する免疫応答を減弱させる。
抗原を避けたり、投薬療法では充分に症状を和らげることができなかった場合に適応します。
治療には2-3年かかります。方法は皮下注射と舌下投与があります。舌下投与は家でもできますが、治療費は皮下注射の約2倍します。治療効果は人にもよりますが、3年ほど持続します。

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