鳥居泰宏/ Northbridge Medical Practice


避妊経口ピルは避妊効果以外の理由、あるいは避妊効果も兼ねて婦人科系の疾患などの治療用途で処方されることも多くあります。調査によると避妊効果以外、あるいは避妊効果も兼ねて服用している人は50%を越えるというデータもあります。
オーストラリアで45000人の避妊経口ピル服用者を39年間にわたって追跡調査した結果、避妊ピルを服用していた人達の全体の死亡率はピルを飲んでいなかった人と比べ、12%低かったという結果も出ています。
ただし、避妊経口ピルに全く副作用がないわけではありませんのでリスク便益分析をし、使用においての危険要素がないことを確認してから服用することが大切です。

効果のある合併症
*不正出血、月経過多
*子宮内膜症
*多嚢胞卵巣症候群、にきび、男性型多毛症
*月経前緊張症
*閉経周辺期の顔面潮紅

予防要素
次のような疾患に対する予防効果もあります。
*骨粗鬆症
*骨盤内炎症性疾患
*子宮内膜増殖症
*卵巣癌、子宮内膜癌

多嚢胞卵巣症候群、にきび、男性型多毛症について
上記の疾患は男性ホルモンの上昇との関連もあります。
*多嚢胞卵巣では生理不順や無月経の人に対して生理を規則正しくおこす効果があります。
*経口避妊ピルに含まれている女性ホルモンは全体に男性ホルモンのレベルを低下させることによってにきびを改善させる効果があるようです。また、黄体ホルモンにも抗男性ホルモン効果があるかもしれまん。
*男性型多毛症に関してのピルの効果はにきびに対する効果ほど高くはないようですが、多少の効果は認められるようです。
ピル以外にはSpironolactone という抗男性ホルモン薬(利尿剤でもある)やEflornithine(Vaniqua)という塗り薬もあります。

過多月経
子宮筋腫、子宮内膜症が原因であることが多く、その他には腺筋症(Adenomyosis)、子宮ポリープ(Endometrial polyps)、子宮内膜増殖症(Endometrial hyperplasia)、骨盤内感染症(Pelvic inflammatory disease)などがあります。それでも約40%の場合は原因がはっきりとわからないことがあります。経口避妊ピルは子宮内膜の過形成を防ぐことによって出血量を軽減させる効果があります。また、黄体ホルモンが含まれるIUD(子宮内避妊器具)(Mirena)や黄体ホルモンの皮下インプラント(Implanon)などでも月経量を低めることもありますが、経口ピルほどのエビデンスはありません。

子宮内膜症、腺筋症
子宮内膜症は腹部超音波検査では容易に診断できる疾患ではなく、腹腔鏡によって腹腔内をカメラで見ないとはっきりと診断できません。よって、症状が発覚してから確定診断がおりるまでにかなりの年月がかかってしまうこともよくあります。症状は過多月経、生理痛が主なものです。
確定診断ができなくても疑いが高ければ避妊ピルを処方されることはよくあります。黄体ホルモン含有量が高めのピルのほうが効果は高そうです。また、このような症状がおこる頻度を少なくするために周期延長型ピル(3ヶ月毎に1回の生理)も適切かもしれません。MIrena やImplanonのような非経口型避妊薬でも効果はあるようです。生理でないときの腹痛や性交痛に対しては効果はありません。

生理痛
生理痛の原因は過多月経の原因と似ていますが、やはり原因不明の場合も多くあります。経口避妊薬に関しては生理痛への効果があるというエビデンスはそれほどありません。周期延長型避妊ピルは多少の効果がありそうです。Nuvaring という腟内挿入型避妊薬のほうが経口ピルよりも生理痛に関しての効果は高そうです。Mirena も生理痛を軽減する効果があるようです。Implanon に関しては、子宮内膜症による生理痛を和らげる効果はあるようです。

月経前緊張症
女性の10-15%はこの症状によって日常生活に影響が出ています。症状は涙もろくなる、イライラする、不安感、憂鬱、集中力の減退、不眠症、体のむくみ、体重増加、腹部の張り、乳房の張りや痛みなどです。避妊薬によって排卵を抑制すれば症状は軽減するようですが、避妊薬の副作用もこのような症状に似ているところが多く、かえって症状が悪化する人もいます。
Drospirenone という黄体ホルモンが含まれている避妊ピル、あるいは腟内挿入型避妊薬(Nuvaring)、それに周期延長型避妊ピルが比較的効果があるようです。Mirena IUD は無月経をおこす効果がありますが、排卵は続くので月経前緊張症には効果はありません。

骨盤内炎症性疾患(性病)
コンドームなどの完璧なバリアーがなければ性病を防ぐことはできませんが、経口避妊ピルを服用していれば性病感染のリスクはいくらか低くなるようです。また、性病に感染したとしてもあまり重症にならずにすむようです。どのようなメカニズムでこのような効果が現れるのかははっきりとしていませんが、頚管粘膜に変化をおこし、性病菌が子宮内に侵入しにくくなるのではないかと考えられています。Mirena に関してはこのような効果があるというエビデンスは限られています。

子宮筋腫
経口ピルもMirena も子宮筋腫による過多月経を軽減する効果があります。特にMirena はこの効果が高いようです。粘膜下筋腫や子宮頸部に筋腫がある場合はMirena の挿入が困難となることもあります。また、筋腫のある人はMirena が圧出されて子宮外に出てしまうリスクが高まります。

閉経周辺期の症状
閉経後に顔面紅潮や発汗などの更年期症状がおこった場合、ホルモン補充療法をしますが、閉経前でしたら避妊ピルを使うこともあります。ホルモン補充療法で使われる薬は避妊経口ピルと同じ、女性ホルモンと黄体ホルモンが含まれていますが、避妊ピルと比較してごく少量の成分です。閉経周辺期の年齢になってくると高血圧、糖尿病、心疾患なども併発していることもよくあるので、避妊ピルを使うことに関してのこのような危険因子がないことを確認してから処方されます。51歳までの服用は安全です。

骨密度
早期閉経などで卵巣機能がなくなり、女性ホルモンの分泌が低下している人には経口避妊ピルが骨密度を保つために必要です。
しかし、30歳未満の女性で低用量ピルを長期間服用していると骨密度がピルを飲んでいない人と比べて低下しているという調査結果があります。女性ホルモンが30-35mg以上含まれているピルの方がこの年齢層にはより適切なようです。

子宮内膜癌、卵巣癌
経口避妊ピルを12ヶ月以上服用している人は子宮内膜癌になるリスクが50%軽減します。そして使用年数が長いほどその保護作用は増します。使用をやめてからもその保護作用は15-30年続くようです。卵巣癌に関しても同じような保護作用があります。

乳癌のリスク
避妊ピルを服用した場合、乳癌のリスクはわずかに上がるようです。例:2万人の女性が16歳から19歳までの期間、ピルを服用した場合、ピルが原因で乳癌に罹る人は1人です。もし同じ人数の女性が25歳から29歳までピルを服用した場合はピルが原因で乳癌になう人の人数は9人です。服用期間が長いほどリスクは高まるようです。逆にピルを止めれば10年以内に乳癌のリスクは通常にもどります。

経口避妊ピルの禁忌事項
*典型片頭痛(前兆を伴う片頭痛)
*BMIが35kg/m2 以上の人
*乳癌、静脈血栓塞栓症、虚血性心疾患、脳血管障害などの既往症
*重度の肝疾患
*45歳以下の第1度近親者に静脈血栓塞栓症がある場合
*出産後6週間までの授乳
なお、喫煙者や糖尿病疾患高血圧の人なども要注意が必要です。

Share This