鳥居泰宏/ Northbridge Family Clinic


 

先進国のあいだでは一番の失明の原因です。高齢者に多く、50才以上の人口の7人に1人、80才以上なら3人に1人におこります。 黄斑とは眼球の奥の網膜の限られた部分をいいます。直径5mm ほどの部分で、光受容体が一番密集し、色を感受する細胞も含まれています。最も重要な情報が多い視野の中央部の光を受けて分析できるように黄斑は眼球の最後部に位置します。目の感染症、白内障、緑内障、糖尿病などその他の失明の原因は治療できるようになってきていますが、黄斑変性の治療はまだ困難とされています。

黄斑変性の原因

原因ははっきりとわかっていませんが、遺伝的要素と環境の影響の相互作用であると考えられています。黄斑変性には2種類の型があります。萎縮型(Dry macular degeneration) は比較的良性で進行も遅いタイプで、網膜が老齢化とともに薄くなり、ドルーゼ(Drusen) という硝子様の沈着物が蓄積していきます。滲出型(Wet macular degeneration) は網膜の裏にある血管膜から新生血管という新しい血管が発生し、浮腫や出血をおこします。このタイプのほうが進行が早かったりもっと深刻な視力低下をおこす可能性があります。発生率は萎縮型が90%に対し滲出型が10%です。

危険因子

*喫煙: 喫煙者は黄斑変性がおこるリスクが4倍になります。 *高齢: 高齢者ほど発生率が高まります。 *遺伝: 家族で黄斑変性の人がいればなる可能性が高まります。 *肥満: 肥満の人はリスクが2倍以上高まります。運動不足もよくないようです。 その他 *人種: 白色人種の方が発生率は高いようです。 *高血圧: *高脂血症: *紫外線:

症状

早期にはあまりはっきりとした症状はありません。ほとんどの場合は症状も徐々に進んでいきますのではっきりとおかしいと気が付いたときには病気はかなりすすんでいるかもしれません。滲出型の場合は症状が急に悪化することもあります。片目だけがはじめにかかった場合、健康な目が症状をカバーするので気が付きにくいかもしれません。中心視に陰のようなものが見えたり、視野がぼけたり視像が歪んだり、暗いところでものが見えにくくなったりします。
いずれ視野の中心部が見えなくなったり、色覚が低下したりもします。アムスラーグリッド(右図)という格子状の試験表で比較的初期の診断ができます。

検査

眼科で眼底検査や光干渉断増像(Ocular coherence Tomography, OCT)という検査などが必要です。 このOCT という検査は超音波の一種で、前の図のような黄斑の断面を診て網膜と網膜色素上皮、それに脈絡膜の隙間にどのような変化がおこっているかを確認するのに役立ちます。治療の経過観察にも利用されます。滲出型の場合は蛍光眼底造影法(Fluorescein angiography) という検査も必要です。この蛍光眼底造影法では網膜の血管の様子を見て新生血管があるかどうか、あるいはその位置、それ出血しやすい状態かどうかなどをチェックします。

治療

萎縮型の場合、喫煙などの危険因子を避ける以外には治療法はありません。亜鉛、ビタミンCとE、ベータカロチンなどは予防と病気の進行を遅めることに役立つかもしれません。Macu-Vision という市販の薬はビタミンCとE、それに亜鉛と銅が調合されていて黄斑変性に薦められています。食べ物でいいとされているのが緑の野菜、ナッツ類、魚、オリーブオイルなどです。アルコールやチーズは控えた方がいいようです。滲出型の場合はレーザー治療で異常な血管を封鎖し、出血や液の滲出を防止することができますが、すでにおこった損傷を戻すことはできません。滲出型でおこる新生血管は血管内皮増殖因子という物質の影響で発生します。最近ではこの血管内皮増殖因子の働きを阻止する薬もできています。 Avastin, Lucentis, Eyleaという薬がオーストラリアでは使われています。このような薬は眼球の中に直接注射されます。眼球の角膜に近い強膜に局部麻酔をし、そこから眼球の硝子体にこの薬を注入します。 眼科医の診療所でできる治療です。1-2日間は目がざらつくような感触があるかもしれません。 飛蚊症(眼前で点が動き回るように見える状態. 硝子体中の発生上の硝子体血管系の遺残から生じる)がある人は注射後、硝子体の中の物体が動くので、点が視野の中で違う位置にうつることもあります。この治療は黄斑変性の進行を抑えることが目的で、その状態を保つためには定期的に、数週間後ごとに繰り返して行わなければなりません。経過が良ければ注射の頻度を伸ばしていくことはできます。

Share This